ボクを置いて行かないでね?
乃亜視点です。
「お願いします。俺と付き合ってください」
「ごめんなさい。興味ありません」
ボクは知らない男子生徒の告白を断った。
男子生徒は目に涙を流しながらその場を去ってしまった。
はあ、キリがない。ボクにはレンという彼氏がいるのになんで告白してくるんだろう?
ボクはそう思いながら食堂に繋がっているテラスに向かった。
「ごめん。お待たせ」
「ううん。いいよ。どうせいつもの事だし」
テラスでは真衣が紅茶を飲みながら席に座っていた。
「はい。アッちゃんはココアでよかったんでしょ?」
「ありがとう」
ボクは真衣にお礼を言い、真衣の正面にある席に座りココアを受け取った。
あ~、あまい。
ボク達は今日の午後は授業が入っていなかったので久々にテラスでお茶をすることにした。
テラスでは、グランドの風景が見えて、今、護衛科が準備運動をしているのがよくわかる。
レンもあんなかに混ざっているんだろうな。
「しかし、相変わらず。アッちゃんはもてるね。これで何人目だっけ?」
真衣は面白がりながら話を振ってきた。
「う~んと、数えてないからわかんないけど、七〇人にはされたと思うよ。まあ、ボクにはレン一筋だからどうでもいいんだけどね」
「一途だね。アッちゃんも」
「そういう真衣ちゃんは大地君と何か進展はあったの?」
前から気になっていたけど、大地君いつになったら告白するんだろう?
「全然。大地君とは話したり遊びにいったりはするけど、告白はまだしてくれない」
「真衣ちゃんからはしないの?」
「したいけど。こういうのってさ男子からしてもらいたいじゃん」
「確かに」
ボクは自分から告白して、半ば強制的に了承してもらったんだけどね。
「大地君、いつになったら私に告白してくれんだろう?」
真衣がいじけていた。
後で、レンに相談してあげよう。
「透咲さん。ここにいましたか」
ボクと真衣ちゃんが話をしていると黒髪の女子生徒が現れた。そして、その後ろには何人かの女子生徒がいる。
「ん?誰?」
「初めまして、私は来栖真利谷と言います」
「あ、これはどうもご丁寧に。それで真利谷さんがボクに何か用?」
「ええ、単刀直入で言わせてもらいます。紅沙花蓮斗を私に譲ってください」
「嫌だ」
ボクはすぐに断った。
レンを譲れってふざけるなよ?
「あ、アッちゃんとりあえずなんで蓮斗を譲ってほしいのか訳を聞こうよ」
真衣は必死にボクをなだめようとしている。
たぶん、ボクの殺気に気が付いたんだろう。
「真衣ちゃんが言うなら仕方がない、なんで蓮斗を譲ってほしいの?」
まあ、譲る気はないけどね。
「一年の護衛科の中で一番実力を持っているからですわ。それに紅沙花蓮斗は人脈が多く、色々な人に信頼されているそうではないですか。そんな素晴らしい方こそ私は自分の護衛にしたいんですわ。だから、私に譲ってください」
「お断りします」
「も、もちろん。タダとはいいません」
真利谷は指を鳴らした。
そしたら、後ろにいた女子生徒がビジネスバックを持ってきて中を開いた。
その中には大金が入っていた。
「ここに約一千万円があります。これをさしあげる代わりに紅沙花蓮斗を譲ってくれませんか」
ボクはそれを聞いてキレそうになった。
「キレちゃあ駄目だよ。アッちゃん」
しかし、ギリギリの所で真衣に止められた。
ありがとう。真衣ちゃん。
「何度も言いますが、お断りします」
「そう、交渉決裂ね。なら、力づけで譲ってもらうまでよ」
真利谷はまたもや指を鳴らした。そしたら、後ろに控えていた女子生徒全員が武器を構えた。
「この子達は私達と同じ学年ですけど。私の護衛になるように英才教育を受けている方たちですわ。さて、それではもう一度聞きますけど、紅沙花蓮斗を譲ってください」
「うるさい。おばさん。力ずくなら早くかかってこい」
ボクはとうとうキレてしまった。
「はあ~、私もう知らない」
真衣はどこか諦めていた様子だった。
「い、いいでしょ。あなた達やってしまいなさい」
「「「「「はっ。仰せのままに」」」」」
真利谷の指示の元、ボクに向かって襲いかかった。
「おいで、ミコト」
『は~い』
ボクはそういうと今まで犬のストラップになっていたミコトが動物化してボクの前に現れた。
「真利谷っていう子以外気絶程度に一斉射撃」
『わかりました』
ミコトはボクの指示を受け、魔力の塊を女子生徒の人数分作り一斉に発射した。
女子生徒はいきなりだった為か全員防ぐことはできずに命中してしまい気絶してしまった。
「なっ」
真利谷は驚いていた。
なんせ、自分の護衛が一瞬の内にいきなり現れた犬?に倒されてしまったんだから。
「それで、どうすんの?ボクとまだ交渉すんの?もし、そうだったなら容赦しないよ」
「くっ、覚えていなさい」
真利谷はそう言ってテラスから出て行ってしまった。
「ミコト、お疲れ様」
ボクはミコトの頭を撫でてあげた。
「ところでアッちゃん。さっきの真利谷って人、もし蓮斗の所に行って、自分の護衛になれって交渉して、蓮斗が了承しアッちゃんから離れたらどうすんの?」
真衣は心配そうにボクに話しかけてきた。
「どうもしないよ」
「どうもしないよって、蓮斗がアッちゃんの護衛じゃなくなるんだよ」
「う~ん、真衣ちゃんはなんだか勘違いをしているみたいだね」
ボクはミコトを抱き上げて自分の太股の上に置いた。
「勘違い?」
「うん。真衣ちゃんは蓮斗がボクから離れていくって言ったけどさ絶対にそれはあり得ないよ」
「なんでそんなに自信満々に言えるの?」
「だって、蓮斗はボクから離れようとも離れないんだもん」
いや、言い方が違うな。
「ごめん。言いなおすね。蓮斗がボクからどんなに頑張って離れようともボクが絶対に離さないし、どこかにいってしまってもボクがどんな手を使っても必ず見つけだす。そして、ボクの側に置く」
「そんな」
真衣は驚きを隠せないでいた。
「真衣ちゃんにこんな話をするのもどうかと思うけどさ。ボクはもうレンに依存しちゃっているの。蓮斗と別れてからの六年間、ボクにとって色が抜け落ちた感じがしたよ。そして、また出会った時は色が戻ってきた。だからボクはもうレンを離さないと心に誓ったね。レンが何を言おうともボクの側にいさせるとね」
ボクは一息ついてココアを飲んだ。
「そ、それじゃあさ、もし、それでもアッちゃんを拒絶して、別の女性の所にいった場合はどうするの?」
「そんなの決まっているでしょ?」
真衣ちゃんは何を聞いているんだろう?
「蓮斗を殺し、ボクも死ぬ」
ボクはそう言って微笑んだ。真衣はボクの頬笑みを見て恐怖しか感じなかった。
「さて、この話はここでおしまい。さて、お茶の続きをしよう」
ボクは雰囲気を変え、提案した
「そ、そうだね」
真衣もそれに賛同する。
よほど、ボクの話に異常を感じたんだろう。
『ねえ、乃亜ちゃん。自分にも何か飲ませて』
ミコトがそう言ってきたので。
「わかったわ。すみません。犬用の皿にミルクを持ってきてください」
ボクは近くにいた店員に注文をした。
「あっ、レンだ」
ボクはその後、グランドの方に目を向けるとレンがスバルちゃんと楓太君と一緒に話し合っていた。
レン。ボクを置いてどこにも行かないでね。もし、行っちゃたらボクはレンのことを。
殺しちゃうかもしれないから。
ボクはココアを飲みながらそんなことを思っていた。