さて、家に帰るか
「な、馬鹿な。ありえない」
田村は驚いていた。さっきまで戦っていた、一人と一匹が何かの間違いで契約してしまった。
しかも、人間の方には契約の反動がないようだ。
「まさか、あの化け物に適合者がいたんなんて」
あの化け物は実験段階から力が強く誰とも契約することが出来ずにいた。だから、わざわざ生物兵器に改良したのにこれでは意味がない。
「くそおおおおお!」
田村は思いっきりキーボードに拳を叩きつけた。
「とっ、こんなことをしている場合ではない。はやくここから脱出しないと」
この研究所に収納している全魔力生命体達を倒されてしまったんだから、ここに長いは無用。
田村は急いでこの研究場にあるデーターを集めようとした。
しかし
「あれ?」
何回もデーターをコピーしようとしても、エラーが出てしまう。
「これはどういうことだ?」
田村は不思議に思いながら何度もやった。でも、結果は同じで、エラーが出て作業ができない。
『あ、やっと気が付いた』
その時、部屋の中から声が聞こえてきた。
「だ、誰だ」
田村は部屋を見まわしたが、そこには誰もいない。
『いっとくけど、僕はそこにいないよ』
田村は声の出ている所を探した。そしたら、ある一台のパソコンからその声が出ていることに気が付いた。
「君はあいつらの仲間か?」
田村はそのパソコンに問いただしい。
『うん。そうだよ』
「私のパソコンに何をした?」
『ちょっと悪戯させて貰いました』
「ふざけるな。私はここから早く逃げないといけないんだぞ」
『だったら、データーを捨てて逃げれば?』
「駄目だ。ここには化け物のデーターが入っているんだぞ!」
『これのこと?』
ディスプレイが変わり、文章が書いてある書類が出てきた。
「ああ、それだ」
『そっか。それじゃあ、これでおしまいか』
「おしまいだと?」
どういうことだと思いながら田村は不思議に思った。
そしたら、ディスプレイの中にプレゼントによく使われる箱が現れた。
「なんだこれは?」
田村がその箱に注目した瞬間、箱が勝手に開き黒い靄みたいのが出て来て、すぐにその書類を破壊し始めた。
「ウィルスか!」
田村はすぐに対策ソフトを起動しようとしたが、パソコンは動かなかった。
「くそっ、しかたがない。他のデーターだけでも」
とすぐに行動に出ようとした田村は別のパソコンの画面を見て驚いた。
「なんだよこれ?」
すべてのパソコンの画面には黒い靄が写りどんどんデーターを破壊していっている。
「ふざけるな。私がどれくらいの年月をかけて作ってきたと思っている」
『知らないよそんなの。おじさんが悪いんだよ。僕らに喧嘩を売ってくるんだから。だから、こっちもとことんやらせてもらうよ』
また、ディスプレイに外の風景が写った。その風景の建物には田村には見覚えが合った。
「こ、これは私の研究所じゃないか」
『ポチっとな』
その瞬間、建物とかが爆発した。
「な、何をしている」
『言ったでしょ。とことんやらせてもらうって。あ、でも、職員は全員避難させているから死ぬ人はいないよ』
建物がどんどん破壊されていく。
「止めろ。私の今までの苦労が、全財産が!」
「大地やり過ぎだろ」
そしたら、田村の後ろから声が聞こえてきた。
「大地やり過ぎだろ」
俺は画面を見ながら言った。
「あ、こ、紅沙花蓮斗」
「よお、田村」
俺は軽めに挨拶する。
「それじゃあな!」
そして、一気に距離を詰め、田村の顔面を殴りつけた。
「ふう、すっきりした」
やっと、こいつの顔面を殴れたよ。
『お疲れ』
パソコンから大地の声が聞こえてきた。
「おう、お前もよくここまでやったな」
『大丈夫。お礼は後でたんまり蓮斗に報酬するから』
「ちゃっかりしている」
俺は呆れた。
『それで、ミコトは助けたの?』
「ああ、ここにいるよ」
俺はナックルを見せた。
『あ、契約したんだ』
大地は一人で納得した。
「そゆこと」
『そう、それじゃあ、ミコトも助けたことだし、早く逃げた方がいいよ』
「え、なんで?」
『時限爆弾作動させたから』
「ふざけんなあああああ!」
俺はさっさと駈け出した。
『蓮斗。近道しよう』
そういえば、まだミコトの性能を試してなかったな。
「おし、やるぞ!」
『うん』
「蓮斗っ!」
「ん?」
俺は名前を呼ばれた方を見ると龍次達が走ってきた。何故か、スバルは楓太におんぶをしてもらって、安心しながら眠っている。
「ミコトは助けたの?」
楓太はのんびり気味に聞いてきた。
「ああ、ここにいる」
俺は龍次達にナックルを見せた。
「こうなった説明は後でする。大地の馬鹿が時限爆弾を作動させたから早く逃げないと俺達も被害にあうぞ」
「「ふざけんなあああああ!!!」」
やはり、俺と一緒の反応だな。
「だから、一気に近道する」
「OK」
「わかった」
2人はそれぞれ武器を構えた。
「タイミング合わせろよ」
俺は拳に魔力を集中させた。2人もそれぞれ武器に炎や風を集中させる
「いくぞ!」
俺達は一斉に壁に向けてはなった。
「二の型 朱雀!」
「真空刃!」
「魔天狼!」
その瞬間、壁が爆発し一気に外にまで続く道を作りだした。
「・・・・・すげー、威力だな」
俺はまさかミコトの魔力がここまであるとは思っていなかった。
『すげーだろ』
ミコトも自慢げに言ってくる。
なんか、この態度ムカつくな。
「ほら、さっさと行くぞ」
龍次に促され俺も急いで走り出した。
そして、外に出て三十秒後、研究所は爆発した。
結構ギリギリだったな。
「さて、帰るか」
俺はその爆発を見ながらみんなに言った。
その場にはちゃっかり夢もいたという。
「もう、朝か」
ボクは窓から入ってくる朝日を感じながら目を覚ました。
「・・・なんで、真衣がボクの隣に寝ているんだろう?それに大地も?」
ボクは隣で寝息を立てている真衣や、机で伏せている大地を見ながら不思議に思った。
そういえば、ボクはいつの間に眠ったんだっけ?
寝惚けている意識がだんだんと覚醒してくる。
「そういえば、ミコト!」
ボクは昨日の出来事を思い出し、籠の中を見た。しかし、そこにはミコトがいなかった。
「そ、そっか、連れていかれたんだっけ?」
今までのことが夢だと思いたいと願う自分がいる。でも、ミコトがいない籠を見るとそれは真実だと自分に訴えかけてくる。
「レンどこにいるの?」
こうゆう時は、自分の愛しき人に慰めてほしい自分がいた。
一人は嫌だよ。
ボクは子供の頃の記憶がフラッシュバックしてくる。
広い屋敷でいつも一人寂しく過ごすボク。両親はいつも忙しく屋敷にはいなかった。友達はボクの髪を馬鹿にして誰もいない。そんな時に出会ったのが蓮斗だった。蓮斗はボクの髪を好きだと言ってくれた。ボクのすべてを受け入れてくれた。わがままを言った時も嫌な顔を一つもしないでしてくれたし。苛められた時も守ってくれた。ボクはその頃から蓮斗のことが好きだったんだと思う。だから、また会えた時はかなり嬉しかった。もう、蓮斗の側から離れないとも自分自身に誓ったし、蓮斗も側にいてくれると言ってくれた。
まあ、多少は強引な部分があったけどそれは良しとしよう。
蓮斗はボクにとって掛け替えのない存在になっている。
ボクは蓮斗を探して、リビングの扉を開けた。
「きゃあ」
そしたら、ある物体が自分に飛んできたので思わずキャッチしてしまった。
「ミコト!」
それはミコトだった。ミコトはいつもどおりに元気に尻尾を振りながら自分の顔を摺り寄せてくる。
「ミコト、くすぐったいよ」
ボクの目から涙が流れてくる。
よかった。本当によかった。
「あ、そうだ。ミコト、レンは?」
これでレンが居れば元通りなんだけど。
ボクはミコトに聞くと、蓮斗がいる方向に顔を向けた。ボクも釣られてその方向を見ると、ソファーに寝息を立てて眠っている蓮斗がいた。
ボクは起こさないようにゆっくりと蓮斗に近づき、寝顔を覗いた。
「んふふ、可愛い」
ボクはミコトを床に下ろし、蓮斗を見ながら床に座った。
いつもは、ぎらついていて誰も近づけさせないのに、こうゆう時は無防備なんだから。
「ありがとう」
蓮斗にお礼を言いながら、ボクは蓮斗の頬にキスをした。
ミコトがその様子を見ている。
「ミコト。このことは秘密だからね」
ボクがミコトに言うと、ミコトは頷いた。
「ありがとう」
ボクはミコトの頭を撫でてあげた。
「さて、朝ご飯でも作るかな?」
ボクはそう言って、キッチンに向かった。
今日からまたいつも通りの生活がやってくる。
ボクはそれが一番嬉しかった。