表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/76

休日の訪問者

 休日に俺はなんとなくミコトとボールで遊んでいた。

「レ~ン。ボクもかまって」

 乃亜はそう言って背中越しにくっついて来た。

 この頃、乃亜の甘えっぷりが酷くなってきた。どこにいようとも、俺にくっついてこようとする。教室。屋上。住宅街。家。人の目を気にしないで甘えてくる。

 原因はわかっている。先日の夜の言葉と行動に原因がある。

 やはり、やらなければよかったかな?

「うざい。離れろ」

「嫌だよ~」

 俺は必死に乃亜から逃れようとしたが無理だった。

 乃亜は俺の前に回り込み、膝と膝の間に座って来た。

「レン、抱きしめて」

 乃亜は俺の両手を持って、自分の前で交差させた。

「へいへい」

 俺は乃亜の言われたとおりに抱きしめた。

「ミコトもおいで」

 乃亜がミコトを手招きすると、ミコトは素直に俺たちの所にやってきた。

「いい子だね」

 乃亜はそう言って、ミコトを自分の膝の上に乗せた。ミコトは乃亜に体を委ねるように丸くなった。

「えへへ、この様子遠くから見れば家族に見えるかな?」

「若い父親と娘に見られるんじゃないか?」

「そこは、夫婦って言おうよ。ねえ、ミコト?」

 乃亜はミコトに同意を求めたが、ミコトは頭を捻るだけだった。

「ミコトもわからないだとさ」

「もう、そこは頷いてよ」

 乃亜はいじけた。

 俺はいじけた顔を見て可愛いと思う自分がいた。

 くそ、だんだんかけがえのない存在になって来ているな。

 俺はそう思いながら、乃亜の方に自分の顔を乗せた。

「何?レンもボクに甘えたいの?」

 乃亜はそう言って、俺の頭を撫でてくる。

「・・・・・別にそんなんじゃねえよ」

 でも、乃亜に触られるなんて悪くないな。

 俺はずっと、この時間が続けばいいと思った。

 キーンコーンカーンコーン

 でも、それはある来客によって終わりを迎えった。

 つか、家のチャイムって学校の鐘の音だったけ?



「突然、すみません。私こう言う者です」

「魔法開発局 田村康則?」

 玄関で白衣を着た青年。田村康則は俺に名刺を渡し、俺はそれを読み上げた。

「はい」

「で、その魔法開発局の人が家に何の用ですか?」

「はい。実はこちらで預かっている実験体G―00を引き取りに来ました」

「G―00?」

 一体、何のことだ?

「はい。見た目は子犬なんですけど。額に水晶が付いており、羽が生えている魔力生命体です」

 ミコトのことか。

「一体、何のことですか?家にはそういった生き物なんていませんよ」

 俺はとりあえず、この田村が怪しかったので知らないふりをした。

「またまた、確かにここにいる筈ですよ。近所の人たちから最近、お宅で変な犬を飼い始めたって聞いていますから」

 近所のおばちゃんたちだな。

「もし、いたとしてもあなたみたいな怪しい人には渡しません」

「ほう、こうして名刺も渡しているのに私が怪しいんですか?魔法開発局の私が。理由を教えてくれませんか?」

「いいですよ。まず、一つ目、俺の親戚が魔法開発局に勤めているからです。もし、その魔法生命体を引き取りに来るならその人が来るはずです。二つ目、どうもあなたからは血生臭い匂いがする。そして、三つ目」

 俺は田村を睨みつけた。

「俺は大抵、あんたみたいな奴は信じないようにしている」

「あはは、これは恐れ入った。なら仕方がない」

『ここから逃げて!』

 田村が笑いだした瞬間、またあの空耳が聞こえた。

 また、あの声かよ。なんなんだよ逃げてって。

「やれ!」

 田村が何かを指示した瞬間、リビングの方からガラスが割れる音がした。

「きゃああああ!!!」

 そしたら、リビングから乃亜の声が聞こえた。

「乃亜!」

 俺はすぐにリビングに向かった。

 リビングは窓ガラスが飛び散らかっていて、乃亜とミコトの他に。

「ドラゴン!?」

 ゲームとかに出てくるドラゴンがいた。

「ゴオオオオオ!!」

 ドラゴンは遠吠えを上げる。

「うるせええええええ!!!」

 俺が叫んだ瞬間、ドラゴンは遠吠えを止めた。そして何かを驚いているようだ。

「レンの方がうるさいよ!」

 そして、乃亜に頭突きされてしまった。

「乃亜。お願いだから頭突きは止めて」

 これって結構、ダメージがあるんだよね。

『蓮斗、そんなことをしてないで助けて!』

 そしたら、また声が聞こえてきた。

 だから、さっきからなんなんだよ。

「あ、ミコトが!」

 乃亜の声と共に俺もドラゴンの方を見た。

「あはは、たしかにG―00を引き取らせてもらったよ」

 いつの間にかドラゴンの背中に乗っていた田村の手にはミコトがいた。

「ミコト!」

 俺は田村を睨みつけた。

「ミコト?まさか、こいつの名前か?あはは、こりゃあ驚きだな。この化け物に名前を付けるなんて」

「ミコトは化け物じゃない!」

 乃亜も田村を睨みつけた。

「いいや、こいつは化け物だ。なんせ、私の研究所を一つ破壊したんだからね。もう一度、言ってあげるよ。こいつは化け物だ!」

 田村は笑った。俺はその瞬間、怒りが爆発した。

「くそったれ!」

 そして、田村がいる所まで跳躍し殴りかかろうとした。

「残念。時間切れだ」

 田村がそう言った瞬間、俺の拳が空を切った。

「テレポート?」

 俺は地面に着陸した。

 いや、これは瞬間移動。・・・・・どちらも一緒か。

「くそおおおおおおお!!!!!!」

「ミコトおおおおおお!!!!!!」

 俺と乃亜は破壊されたリビングの中で叫ぶしかなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ