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再開と誓約書と婚約と

「お嬢様。言われたとおりに蓮斗様をお連れしました」

「ありがとう。夢。ただね、あれはどういうこと?」

 辺り一面暗闇の中、遠くから誰かの声が聞こえてくる。

「どういうことと申しますと?」

「僕は君に連斗に会いたいから連れて来て、と頼んだんだよ。なのに、なんで気絶をさせて連れてくるの?しかも、何箇所か殴った痕があるし」

「ああ、それは殴った痕じゃなくて、蹴った痕です」

「なんで蹴るの!」

「それはですね。連斗様にご側路をお願いしたところ、お断りになったので実力行使にでました」

「出さなくていい。それに、拒んだら僕の名前を出してって言ったでしょ」

 声から、察するに人数は2人で、どちらも女性のようだ。

 たぶん、その内の一人はさっき俺を倒したメイドだろう。

「あ~、そういえばそうでしたね」

「はあ、もういいよ。あとは僕がやっておくから仕事に戻って」

「わかりました。ところでお嬢様」

「何?」

「気絶しているからって襲わないでくださいよ?」

「お、襲わないよ!」

 どうやら、声の雰囲気からして図星だったらしい。

「たく、なんでいつも夢は僕の考えがわかるんだろう」

 ガチャという、ドアが開く音がして、誰かが入ってくる感じがする。

「ん~、見た感じまだ気絶しているよね」

 声の感じからして、まだ少女だろう。

「・・・・・少しくらいいいよね」

 ギシギシという、ベッドの音が聞こえたと思った唇に柔らかい感触を感じた。

 俺はそこでようやく、眼を覚ました。

「あっ、起きたんだ」

 そうしたら、俺の目の前には、顔を少々赤くした赤髪のツインテールで女の子がいた。

 しかも、その子は俺に覆いかぶさっていて。顔は後、数センチでくっつきそうなくらい近づいている。

「おかげさまで」

「そう、それは良かった」

 女の子は微笑みながら俺の顔を覗きこんできた。

「・・・・・」

「・・・・・」

 二人の間に沈黙が訪れる。

「・・・・・」

「・・・・・」

 まだ沈黙が続く。

「・・・・・」

「・・・・・」

 まだまだ続く。

「・・・・・・・・・・・何してんの?」

 まだまだじゃなくて、俺は沈黙に耐えられず質問してみた。

「レンを眺めている」

 そりゃあ、見ればわかるよ。つか、この子、普通に俺のこと呼んでこなかったか?なんでだ?・・・・・・あ、そっか、俺に会いたい奴がいるって言ってたもんな。

「・・・・・」

「・・・・・」

 またもや、二人の間に沈黙が訪れる。

 飽きたから沈黙はもういいよ。

「・・・・・ボクのこと覚えてる?」

 そしたら、突如女の子が一旦、顔を離し質問してきた。

 ん?覚えているって聞いてくることは俺この子と会ったことがあるのか?

「・・・・・いや、覚えていない」

 俺は今まで会った女の子の記憶を引き出そうとしたが、全然、この子に該当するこが出てこなかった。

「やっぱり、そうか」

 女の子は残念そうな顔をしていた。

「悪いな。あんたみたいな可愛い子は見れば覚えている筈なんだが」

「可愛いなんて、そんな褒めすぎだよ」

 いや、褒めていないし。つか、人の上で照れんなよ。

「まあ、六年ぶりだから仕方がないか。ボクもいろいろと成長しちゃったし、覚えているわけないもんね」

 女の子は少し寂しそうに言ってくる。

「でもね、ボクはレンの事をよく覚えているし、よく知っている」

「俺のことをよく知っている?」

「うん。そうだよ。本名、紅沙花こうさか蓮斗れんと。五月二三日生まれ。一五才。紅沙花家の長男として生まれる。身長一八〇センチ、体重七五キログラム。天川あまがわ学園の一年生。好きなものはチョコレートで、嫌いなものは特になし。現在は親共々、海外に行っている為、家では中学生の妹の面倒を見ながら一緒に暮らしている。他には」

「ストップ。ストップ」

 俺は女の子がまだいろいろと喋りそうだったので素早く止めた。

「なんで、そこまで俺のことを知っている?」

 俺は女の子を見上げながら睨みつけた。大抵の奴はこれでビビったりする。

 でも、女の子は優しく頬笑むだけだった。

「そんな怖い顔をしないでよ。それに言ったでしょ。ボクはレンのことをよく知っているんだよ」

「でも、俺は知らない」

「レンは知らないんじゃなくて忘れているだけ」

 俺が忘れているだけ?

「ねえ、レン。この髪をよく見て。レンは見覚えがあるはずだよ」

 女の子は俺に自分の髪を見せてきた。そして、さらに言葉を続けてくる。

「レンは僕と初めて会った時に、この髪を見てこう言ってくれた。『俺は好きだぞ。お前のその髪。見ていて暖かくなってくる』って言ってくれたんだよ」

 俺はその言葉を覚えている。だって、その言葉は俺があいつと最初に出会た頃に、あいつの髪を弄りながら言った言葉なんだから。それを知っているこいつはまさか。

透咲とおざき乃亜のあなのか?」

 俺がそう答えると、少女は嬉しそうに微笑み。

「やっと思いだしてくれた」

 思いっきり抱きついてきた。

「間違いねぇ!乃亜なんだな!なんで、お前がここにいるんだ!」

 その前に人の頬に自分の頬を摺り寄せてくるんじゃない。

「このゆくもり。この匂い。どれもこれも懐かしい。もう離さない。絶対に離さない。レンはずっとボクの物だ。ずっと、ボクの側にいてもらうんだ!」

 何やらスイッチが入ったようですけど。大丈夫なのかな?

「さあ、レン!早速、この書類に自分の名前を記入して!」

 乃亜は顔をあげて、どこからともなく書類とペンを出し、俺に記入をしろと要求してきた。

「いや、それはいいんだけど。両手がこの状態だからそれは無理だ」

 俺の状態は今、片方ずつに手錠をはめられ、ベッドの端に取り付けられていた。

 疑問に思うんだがこれって一種の監禁じゃないか?

「あ、ごめん。忘れてた」

乃亜は冷静さを取り戻したのか手錠の鍵を取りだし、解除してくれた。

「はい。これで書けるでしょ」

「ああ、なんとかな」

 俺は乃亜をどかせ起き上がり、乃亜からペンと書類を受け取った。

「ねえ、早く書いてよ」

 乃亜は催促してくる。

「ああ、わかったから。そんなに急かすな」

 え~と、何々。『私、紅沙花蓮斗は今日から、いかなる場合においても透咲乃亜の事を愛し、一生側にいることを誓います』

「って、なんじゃこりゃああああああ!」

「何って、誓約書」

「誓約書って、なんで俺がこんなもんに自分の名前を記入しないといけないんだ?」

「そりゃあ、レンをボクの側に置く為だよ」

 なんちゅう、無茶苦茶な奴だ。

「いや、こんなの書かなくても俺は勝手にいなくならないから」

「本当?」

「ああ、本当だ」

 つか、たぶんいなくなろうとしても、必ずこいつはどんな手段を使ってでも俺を見つけるだろう。そこが、ある意味怖い。

「そう、ならこれはいらないね。その代わり、こっちの方に名前を書いて」

 乃亜は誓約書を回収すると、別の書類を渡してきた。

「これは?」

「婚約届け」

「はい?」

 なんで、今こんな物を渡されなきゃならないんだ。

「一応、聞くが。何故だ?」

「そりゃあ、もちろん。ボクとレンが結婚するからだよ」

 俺はその言葉を聞いた瞬間、固まってしまった。

「あれ?おじさんから聞いてない?ボクとレンって許嫁同士なんだよ」

「それって、いつ決まったの?」

「え~と、確か、ボクがこっちに来る前だったかな?おじさんが『入学祝に何が欲しい?』って聞いてきたから、ボクが『レンが欲しい』って答えたの、そしたら、『じゃあ、許嫁にしていいよ』って答えが返ってきたから。その日から、レンはボクの許嫁に決まったんだけど」

 俺は乃亜の説明を聞いて、もう呆れるしかなかった。

 あのクソ親父。今度会ったら覚えていろ。

「まあ、そうゆうことだからこれからよろしくね。ア・ナ・タ」

 乃亜は照れながら俺に言ってくる。

「・・・・・・・・」

 俺のこれからの生活ってどうなっちゃうんだろう?

 俺はその笑顔を見て、これからの生活に不安しか感じられなかった。


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