俺、頭殴られたんですけど
暴力表現などがありますけど、絶対にマネをしないでください。危険すぎます。
「本当にすみません」
これで何度目か桃が謝ってきた。
「謝るのはもういいですから、早く歩きましょうよ」
俺と桃は大地の作戦の通りに2人一緒に歩いて桃の家に向かっていた。
「そうですね。私、男の人とあまり一緒に歩かないので緊張しちゃって」
「そうなんですか?桃さんみたいな綺麗な人なら、彼氏が居てもおかしくないのに」
「そんな綺麗なんて」
桃は顔を赤くして照れていた。
そしたら、いきなり寒気を感じた。
そう言えば乃亜も隠れて付いてきているんだっけ?すっかり忘れていた。あとで、きちんと機嫌を取らないとな。
「そ、それで桃さんが好きな人って誰ですか?」
俺は後ろから殺意を感じながら、なんとなく聞いてみた。
「え、えっと言わなくては駄目ですか?」
「言いたくないならいいですよ。でも、もし、俺の知り合いなら協力できると思ったからです」
「えっと、それなら教えます。私の好きな人は蒼江冬馬って言います。私の幼馴染なんです」
ん?冬馬?どっかで聞いたことがあるな。
「へ~、そうなんですか。叶うといいですね。その恋が」
「はい。そうですね」
「もし、告白したいなら協力しますから」
「はい、その時はよろしくお願いします」
「はい、まかされ」
「おりゃあああああ!」
俺が喋っている途中に後頭部に衝撃が走り、そのままコンクリートに倒れてしまった。
「きゃああああああ」
隣から桃の叫び声が聞こえてくる。
「おりゃあ、おりゃあ、おりゃあ、おりゃあああああ」
そして、掛け声と共に何回も俺の体を何かによって殴られた。
「はあ、はあ、お、お前が悪いんだぞ。ぼ、僕のも、桃ちゃんを、ど、毒牙にか、かけたから」
いきなりの出来事で何が起こったかわからなかったけど、そこには太って頬にソバカスがあり、メガネの青年が紅沙花君を鉄バットで殴っていた。
要するにオタクみたいな奴だ。
「こ、紅沙花君。だ、大丈夫ですか?」
私は紅沙花君の体を揺すったが返事が帰ってこない。
やばい、気絶している。早く病院に連れて行かないと。
「き、君もだよ。桃ちゃん。僕というか、彼氏がいるのに、こ、こんな不良と一緒に帰るなんて」
オタクは息を荒くしながらそう言って私を見下ろしてきた。
「いつから、あなたは私の彼女になったのですか?」
私はオタクを見上げながら睨みつけた。
「いつから?そんなの決まっているじゃない僕が君を見つけたときからだよ」
「それは一方的じゃないですか!私はあなたのことなんてこれっぽっちも好きだと思ったことはないんですよ」
「桃ちゃん。そんなことを言わないでよ。僕と君は運命の赤い糸で結ばれているんだから」
「ふざけないで!」
私は立ち上がりオタクの頬を思いっきり叩いた。
「打ったね」
オタクはそう言って頬を押さえる。
「あ~、そう言うことなんだ。君も僕の愛を受け止めてくれないんだ。そうなんだ」
そして、ぶつぶつと呟き始めた。
駄目だ。この人危ない。
「前の娘も。その前の前の娘もそうだった。みんなして、僕を拒絶しやがった。だから、僕は」
オタクは鉄バットを振りかざし。
「僕の愛を受け止めるように調教するんだっ!」
そして、私に思いっきり振り下ろした。
「きゃあっ!」
私はそれをギリギリの所で避け、尻もちをついた。
「駄目だよ避けちゃ、調教できないじゃない」
オタクはもう一度、バットを振り上げて。
「今度は避けちゃだめだよ」
そして、また私に向けて振り下ろした。
「嫌あああ!」
私は避ける術がなく目をつぶり叫ぶ事しかできなかった。
しかし、いくら待ってもバットは振り下ろされずにいた。
私は不思議に思い、ゆっくりと目を開けた。
そこには驚きの光景があった。
「お前、いい度胸しているな」
そこには頭から血を流している紅沙花君が振り下ろされるはずのバットを押さえて、オタクを睨みつけていた。
「な、なんで?」
オタクは驚いていた。
なんせあんだけ鉄バットで殴ったのだ。普通、骨折していてもおかくないのに。
でも、ここで俺の能力を忘れないでほしい。俺の能力、シャープネスは自分の体と自分が触った物を強化できる。だから、俺は自分の皮膚、筋肉、骨を強化し痛みを和らげた。でも、後頭部はいきなりだったので強化が遅れてしまい、まだ頭痛がする。
あー、クソ。頭がイテえなあ。
俺の怒りは後頭部の痛みも加わり、限界に近かった。
「お前、死刑」
俺はオタクを睨みつけ一言言った。
「う、うわあああああ」
オタクは恐怖のあまりにバットを振りほどき、俺に殴りかかってきた。
「お前は一つ間違えたな。やるなら一撃でやりやがれ!」
俺はそのバットを蹴りでへし折った。もちろん、足も強化ずみ。
「ひいいいい」
オタクはそれを見て逃げ出した。
「逃げさせると思っているのか」
俺はすぐにオタクの前に回り込み、始めに顔面を殴った。
「ひいいいい」
オタクは顔面を押さえ、アスファルトを転がりまわった。
「まだまだ、こんなもんじゃ終わんないぞ!」
俺は次にこっちに転がってくるタイミングを合わせ、腹を蹴り飛ばした。
「ご、ごめんなさい」
オタクは顔面血だらけになりながら謝ってきた。
「もうしません。だから許してください」
「てっ、言ってますけどどうします?」
俺は桃の方を見ながら言った。
「隙ありっ!」
その一瞬の隙をついてオタクは隠し持っていたナイフで俺を刺した。
「ははは、やった。今度こそやった」
「やったって何をだ?」
「え?」
オタクは驚く、確かに相手の懐に入って、ナイフを刺したのに、何故、目の前の相手はピンピンしているんだと。
「お前、ナイフを見てみたらどうだ」
オタクは俺が言った途端にナイフを見た。そしたら、ナイフの刃部分が無く。探してみたら、俺の足元に落ちていた。
「な、なんなんだよ。お前は?」
オタクはもはや何が起こっているのかわからなかった。
「お前に選択権を与えてやるよ」
俺はオタクの質問に答えず、話を続ける。
「一つ目、先輩を諦める。二つ目、警察で罪を償う。三つ目、俺に虐待される」
三つ目だけ、一番酷くないか?
「わかった。諦める。だ、だから、ころ。ごほ」
俺はオタクが言おうとした瞬間、俺はオタクの喉ぼとけを殴った。
「ごめん。聞こえないわ。数字で答えてくれないかな?」
「げほ、げほ」
しかし、オタクは俺に喉ぼとけを殴られた為か呼吸困難に陥っていた。
「え、三つ目?三つ目選ぶんだ。いいよ。お前を思う存分、虐待してやるよ」
周りから見れば、ただの苛めにしか見えない状況だ。
「いい加減にしなさい!」
俺がオタクに止めを刺そうとしようとした瞬間、遠くから見ていた乃亜が俺の元に駆けつけ、俺の頭を掴み、そのまま勢いで俺の頭に頭突きをした。
「いっ」
俺はそのまま倒れてしまい気絶してしまった。
・・・・・なんで、俺が倒されなきゃいけないんだ?
この後、聞いた話では桃に付き纏っていたストーカーは、涙目になりながら警察に駆け込んだそうだ。
そして、桃が盗られたという物は無事に桃の場所に戻ってきたそうだ。