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誕生日の夜に 前編

なんとなく、誕生日編突入


胸に激痛が走り、背中からガラスの割れる音が鳴り響き、遠くから俺の名を呼ぶノアの声が聞こえてくる。

 そして、その瞬間体が地面に向けて落下していくのがわかった。

 くそ、早く助けに行かないとな。


 三十分前

 今日は五月五日、乃亜の誕生日。そして、俺の実技試験の最終日。今日までのGWは乃亜と共にのんびりと過ごし、今日は日中には、大地や真衣、玲と共に乃亜の誕生日会を行った。そして、今、透崎家が所有する別荘のホールで乃亜の誕生日を祝うパーティが執り行われていた。

「ふぅー、疲れた」

 乃亜はピンクのドレスを纏いながら、窓際で一息ついていた。

「お疲れ様」

 俺は乃亜の頭を撫でてあげる。

「んー、癒される」

 乃亜は嬉しそうに身を委ねてくる。

 今まで乃亜は今日来た来訪者たちに挨拶をして回っており、俺はその後ろで乃亜に危害が及ばないか見張っていた。

「もう、お父様もお父様だよ。いきなりパーティやるんなんて聞いていないよ。本当なら、今頃、レンと一緒にベッドの中で愛し合ってたのに」

「ははは」

 俺はとりあえず笑っておいた。

 それだったら、俺はおじさんに感謝しとかないとな。

「ごきげんよう。乃亜さん」

 そうしていると爽やかな雰囲気を持った青年が話しかけてきた。

「この度は私をこのような行事に参加させていただき誠にありがとうございます」

「レン。お腹が空いたからご飯でも食べに行こう」

 しかし、乃亜はその青年のことを無視、俺の制服の袖を掴み引っ張り歩いて行く。

「つれないですね。許嫁がわざわざ挨拶もしているのに無視ですか?」

「あなたをボクの許嫁にした覚えはありません」

 乃亜は立ち止まり、振り返って言った。

「またまた、恥ずかしがってそんなことをいう。みんながいるからって恥ずかしがらなくてもいいのに」

 青年は笑って俺たちに近づいてきた。

「恥ずかしがっていませんし、ボクにはきちんとボク自身が決めた許嫁がいます」

「ははは、御冗談を」

「冗談ではありません」

 乃亜とその青年の間で険悪の雰囲気になっていた。

「あー、あー、マイクテスト。マイクテスト。OKいいね」

 そしたら、仁が舞台に上がりマイクを使ってホール全体に話しかけていた。

「えー、みなさん。楽しんでいる所悪いけど、少しばかり私の話を聞いてください」

 その声で会場にいる人達は仁に注目した。

「とりあえず、今日はわざわざ乃亜の為に集まってくれてありがとうございます。乃亜もきっと嬉しい筈です。それで、今日はみなさまに重大な発表をさせていただきます」

「きっと、許嫁の事だな」

 青年は嬉しそうに乃亜の事を見ながら言ってきた。

「重大発表とは乃亜の許嫁の事です。乃亜は知っての通り、今日で十六歳になりまして、法律的にも、もう嫁に出せる年齢になります。そこで、皆様には少し早いですけどその許嫁を発表させていただきます」

 会場がそれを聞いてざわつき始めた。そして、電気などが消え、スポットライトが回り始めた。

 どんだけ金がかかっているんだろう?て、早くこの場から逃げないとヤバイ事になる。

「逃がさないよ」

 しかし、乃亜に捕まってしまい逃げることができなかった。

 く、やっぱり、俺の行動をわかりきっているな。

「乃亜の許嫁は、紅沙花蓮斗君です!!」

 発表の瞬間、スポットライトが俺を照らした。そのおかげでみんなに注目されてしまった。

「うふふ、これでレンはもうどこにも逃げられないね」

「うるさい。お前は黙ってろ」

 俺は今とても悲しいんだよ。

「な、何故、私じゃなくてこいつなんだ?」

 隣ではライトが当たらずショックを受けていた青年がいた。

 つか、こいつの名前ってなんだろう?

「ほら、蓮斗君。そんな所に立ってないでこっちに乃亜と共に舞台に上がりなさい」

「お断りします」

 俺はあまり目立ちたくないもん。

「そうゆうわけにはいかないよ」

 乃亜が俺を引きずりながら段々と舞台に近づいていく。

 だから、こいつの体の中のどこにこんな力が隠れているんだ?

「ふ、ふざけるなっ!」

 そうしていると、さっきの青年が叫びながら俺の事を睨んできた。

「私は認めないぞ。たかが護衛が乃亜さんの許嫁なんて」

「じゃあ、どうするんだい?蓮斗君の許嫁は決定事項だよ」

 仁はその青年を挑発するかのように言った。

「もちろん、奪い取る」

 青年はそう言って指パッチンをした。その瞬間、扉から銃を持った兵隊達が入り込んで来た。そして、全員に銃口を突き付ける。

「こりゃあ、驚いたね。この建物を警備していた使用人はどうしたのかな?」

 仁は手を上げながら聞いてくる。

「私も手荒いマネはしたくないので、眠ってもらっているよ。でもね、紅沙花君だっけ?君だけはいなくなって貰うよ」

「どういうことだい」

 仁は青年を睨みつけた。

「そのままの意味だよ。紅沙花君がいるかぎり乃亜さん許嫁にはなれそうにないから、この世から消えて貰うよ」

「そんな」

 乃亜はかなりショックを受けていた。

「なら、こうしよう。紅沙花君の命一つでここにいる全員の命を助けてあげよう」

 青年は微笑んでいた。

「それでいい」

 俺はすぐに決断した。

「いい決断だね」

「駄目だよ。レン。それだけは絶対に駄目」

 やはり乃亜が反対してきた。

「いいか、乃亜。たぶん、俺とお前の婚約に反対する奴はこいつの他にもいる。そいつらにとって俺が消えた方がありがたいと思うんだ」

「でも、ボクにとってはそんな人たちよりもレンの方が大事なんだよ」

 乃亜は今に泣きそうだった。

「頼むから泣くなよ」

「誰のせいだと思っているの?」

 はーい。俺のせいです。

「いいか、乃亜。俺がいなくなってもいつでも笑顔を絶やすなよ。俺はそんなお前が」

「それ以上は言わせないよ」

 俺が言おうとした瞬間、青年に撃たれてしまった。

 そして、俺はそのまま後ろに吹っ飛び、窓ガラスが割れ、そのまま落ちていた。

「レエエエエエエエエエエエエエエン!」

 遠くから乃亜の叫び声が聞こえてきた。

 つか、最後まで言わせろよ。

 俺は少々、ムカついた。

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