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1.暗殺者(アサシン)

目の前に、人間だったものが折り重なっている。


今回の仕事の標的に得物を投げると、庇うように飛び出してきた女の胸に刺さった。

庇われた男は、信じられないような表情を浮かべ、倒れた女を抱えて大声で呼びかけている。


ここは山奥で、いくら叫び声をあげても人など来ない場所。

とは言え、余分な痕跡も不安要素も残したくない。

仕事は迅速に、無駄なく簡潔に。


次の一投は、男の額に深く突き刺さり、男は絶命した。


女も暗殺対象なので、問題ない。

案件は別件だったが、二つの仕事を一度に処理できたのは良いことだ。


そう。暗殺者として。


特に女の方は、所属する暗殺ギルド『月闇(つきやみ)』とは別勢力『狼牙(ろうが)』の暗殺者。

実力は大したことがないと聞いていたが、俺の初投を防いだのだから、普通の仕事は問題なくこなすレベルだったのだろう。

そんなヤツが、暗殺ギルドを抜けて一人の男と逃亡した。


暗殺ギルドを生きて抜けられると本気で思っていたのだろうか。

この程度の実力で。

暗殺者の思考で行動を先読みすれば、探すことは造作もなかった。

きっといつでも処理できると思われ、放置されていたのだろう。


しかし、今回の標的は男の方だった。

大金で依頼された「確実な死」。

触れてはならない何かに関わっていたのだろう。


念のため、動かない身体を確認する。

得物には猛毒を塗っていて、掠っただけでも数秒で絶命する。

それでも、完璧に仕事をするためには、確認を忘れてはいけない。


両方とも問題なく絶命している。

ただ、女の方を確認すると、隠し武器を見つけた。

そして服装は平民の女が着る裾の長いスカートで、動きづらいことに違和感を感じた。

男の護衛や夫婦を偽装するにしても、この人里離れた森で過ごすのならば、服装は動きやすいものを身に着けるべきだ。

部屋も何か問題となるような仕掛けや情報がないか調べたが、粗末な生活品以外はなかった。




「何のために?」


疑問が口からもれた。

同じ暗殺者でありながら、不可解な行動をして最後を迎えた女。


物言わぬ者となった女は答えない。



森の闇に溶けるように男は姿を消した。


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