マグロ女子
「—おまえってほんと”マグロ”女だな—」
半年付き合っている彼氏のデリカシーに欠けた言葉が、私の顕をすり抜ける。
ハンガーにかけられた上着が薄暗い部屋を包み込み、テーブルの上には、使われることのないマイクが2本と、私たちの下着が置かれていた。終わりの見えない彼の欲望に嫌気がさす——。
私はいつだって冷静そのもので、感情は表には出さない方だ。友達と遊ぶ時も、家族と過ごす時も、基本無表情で、涙の一滴ですら流したことはない、それから……。
「夏(なつ)ー?」
美波が私の名前を呼んでいる。私の名前は、五十嵐 夏 (いがらし なつ)、そしてばったり出会ったこの女は、小さい頃からの仲である涼風 美波 (すずかぜ みなみ) だ。
「美波なんでここに?」
「夏はお腹空いた時と、嫌なことがあったときは決まってここでしょ?」
「べ、別にお腹は減ってないんだけど」
「じゃあなんかやなことあったんだー」
「やなことっていうか、彼氏に"マグロ"女って言われた」
「え?…」
「ん?どしたの?」
「あーいや、彼氏ひっどぉー!」
「だよね——。」
友達の少ない私に美波は優しくしてくれる。帰り際に私の大好物スルメイカをくれた。
彼氏とはあれ以来会っていなかった。実家に帰ると嘘をつき、美波の家に泊まっていた。このままここに居続ける訳にもいかず、家に帰ることにした。アパートの3階、私の部屋のまえで、彼とその知り合いらしき人物が話をしている。盗み聞きになるが、そこは私の家なんだぞと思いながら話を聞いてみる。
「おまえの彼女まだ帰ってこねぇの?w」
「部屋ん中にいると思ったんだけどなぁー」
「てかこの前言ってた俺の彼女ひとじゃねぇってどゆこと?」
「え?その通りだけどww」
「なんだよひとじゃねぇってww」
「だから"マグロ"女なんだってww」
彼がその言葉を吐いた途端、私のなかでなにかが吹っ切れた。憎しみと怒りに身を任せ、彼らの前に姿を現し、そしてすぐさま奴らを丸呑みにした。一瞬の出来事だった。
言うのを忘れていたが、彼氏の名前は、ジ・アーマ もちろん日本人ではない。そして彼の知人の名前は、志和一 久高 (しわいち くたか)というらしい。
今日も私は美波にスルメイカをもらった。好物はスルメイカだけじゃない。真鯵とカタクチイワシも、大好きだ。
どうも〜最後まで読んで下さりありがとうございます〜!
初めての作品で、なにを書こうか迷ってたんですけど、なんか面白そうなの思いついたので、思いついたままを書いてみました!いかがだったでしょうか?笑
たくさん批評してもらえると嬉しいです!