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34話目 王宮見学

 ――ガヤガヤ、ガヤガヤ。


 今日も今日とて執務室で元気に仕事をしているが、やけに今日は王宮内が騒がしい。


 仕事に集中できないと言うほどの物でもなく……、嫌嘘撤回。


 先ほどまでは集中できていたのだが、一度気になってしまうともう気になって気になって仕方がない。


「何かリラックス効果のあるものでも淹れましょうか?」


「ああ。ありがとう。お願いするよ」


 様子を見かねてか、出来るメイド兼執事兼護衛などなどすのフィレノアがお茶を入れてくれている。


 最近一目惚れをして思わず衝動買いしてしまった、美しい模様の描かれたガラスペンを紙の上で走らせるが、どうも集中できない。


 止まったペンの辺りには、黒くインクの水たまりが出来てしまった。


「……フィレノア、外がやけに騒がしいな」


「そうですね。なんて言ったって今日は学校の王宮見学の日なので」


「……なるほど。そういうことだったのか」


 そういえばすっかり忘れていた。


 夏の長期休暇が明けたちょうどこの時期に、王宮見学が行われるのだ。


 僕は毎日が王宮見学なので、在学中に見学に参加することはなかったのだが、普段はなかなか立ち入ることの出来ない王宮に立ち入れる機会ということで、相当盛り上がっていたのを覚えている。


 王宮見学は最高学年になったときに行われるのだが、王宮見学の日は自習室で一人寂しく自習に勤しんでいたのを覚えている。


 あれはなんとも寂しかった。


 ただ、王宮見学に参加していないのに、翌日から王宮見学の時の話で盛り上がる友人たちの中に入っていけたのは良かった。


 ふぅ、王宮に住んでいて良かった。と馬鹿なことで安堵をしたものだ。


「王宮見学って、僕は顔を出さなくてもいいんだっけ」


「はい。顔を出す必要はありません」


 そう言った後、何やら少し考えるような素振りをしてからフィレノアは口を開いた。


「……以前までは、基本国王陛下は忙しいということで顔を出すようなことはなかったのですが、行ってみますか?」


「はい! 行きたい!」


 即答である。


 王宮見学見学とか、楽しそう過ぎるでしょ。


 もしかしたらこの王宮で働く人もいるはずだ。


 そんな子たちが目をキラキラに輝かせながら王宮を回っている姿。


 見てみたい!


「じゃあ行きましょうか」






 引率の先生に連れられ、さっそく王宮見学見学にやってきた。


 なんとこの引率の先生ことフィレノアは、今回の王宮見学を取り仕切っている者の直属の上司らしい。


 さすがは王国裏の最高権力者だ。


「どうやら今は中庭を見学しているらしいです」


 王宮はとにかく広い。


 狭い建物であれば気にならないだろうが、この王宮ほどに広くなると、どこから光を取り入れれば良いかがわからなくなる。


 中庭を作らなければ、王宮が真っ暗になってしまって要塞みたいで居心地が悪い。


 そのため、採光のためにつくられた中庭には、専属の庭師が着いていて、四季折々の花たちを楽しめる。


 ただ、僕は基本中庭ではなくて王宮の外の庭園に行ってしまうので、なかなか行く機会はないのだ。


 基本は王宮内で働いている人が短い休憩時間に利用するような場所になっている。


 王宮内の憩いの場だ。


「見えてきましたよ」


「おお、久しぶりだなぁ」


 角を曲がると、廊下の先に明るく広い中庭が見える。


 その中庭の中心には大きめの噴水が設置されていて、そこに学生カップルらしき者が溜まって何かをしているのが見える。


「懐かしいわね」


「うぉわッ!? びっくりした……」


「私たちも小さい頃、あの噴水に宝石を投げたわよね」


「??? 架空の記憶を呼び起こさないでくれ」


 この王国で密かに噂されていること。


 王宮の中庭にある噴水に、おそろいの宝石を投げ入れると、生涯にわたって結ばれるというものだ。


「……レイ、覚えてないの?」


「え? ほ、本当に言ってる? そんなことあった?」


 確かに小さい頃から仲良かったけど、そんなことは本当に記憶にない。


 逆立ちしたって絶対出てこない。


 そう困惑した表情でククレアを見ていると、まるでこらえていた笑いを解放するかのように笑い出した。


「レイ、マジになっちゃって、もう、おもしろすぎる」


「は?」


「嘘よ嘘。そんなのしたことがないわ」


「お前まじか……」


 本当に焦った。


 フィレノアも僕がからかわれたと言うことに気がついたらしく、なんとか笑いを隠そうとしているが無駄だ。


 漏れている。


 呆れたようにため息をついた僕の耳に、ククレアがぼそっと吐いた言葉が届いた。


「……本当なんだけどな」


「おい。そんな恋愛小説に出てきそうな台詞を言ったって過去は改変できないぞ」


「てへ」


「てへじゃねぇッ!」


 そう、よくわからない会話でギャーギャー騒いでいたら、どうやら学生たちがこちらの存在に気がついたらしく、こちらを見ながらざわざわとしている。


「さあ両陛下、こんな廊下の隅でコントをしてないで、さっさと中庭に行きますよ」


「「はーい」」


 1つは不満そうな声。


 また1つは楽しそうな声が重なった。

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