表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/1

通り過ぎた満月の先で

 それは世界で一番満月が大きな夜だった。


―スーパームーン―


 吸い込まれそうなほどの深い"(あか)"に染まった真円。神話や寓話では女神ともされる壮大な夜空の主が見下ろす中、僕は固いアスファルトの上を意味も無く彷徨っていた。

 夜の散歩は昔からの習慣だった。

 切っ掛けは思い出せない。肌を撫でる乾いた冷気とツンと脳の奥に直接響く暗闇の香りに流されるまま、当ても無く進める歩みが妙に性に合っていたからだろうか?

 大学入学に伴ってこのM市に越してきて二年。講義には良くも悪くも慣れきって、受験生の頃に僅かにあった勤勉さを失い、課題でも無い限りノートを開かなくなった今も、夜風に誘われてスニーカーに足を通す習慣だけは不思議と途切れることなく続いていた。

 と、時折吹く秋風のままに行く先を定めていると、不意に胸のポケットからヴーンというバイブ音が響いた。夜風に煽られるがままだった両足を止めて、白い携帯端末に指紋を読み込ませると、ぼうっと浮かび上がった安い液晶の画面の中心でコロンによって断たれた四つのゼロが、蝶の標本の様に小さな羽を広げていた。


(もうこんな時間か……)


既に卒業のための教養課程の単位は取り終えている事もあり、今期の午前中に講義は入れてない。ただ、この夜旅に特別な信念や情熱をもっている訳でもない。


(……帰ろっか)


ある意味唐突で、ある意味予定調和。僕は止め処ない放浪を打ち切り、M市駅南の住宅街の方へと足を向けたのだった。

 夜の町では当然ながら車の行き来は疎らだ。時折、縁石を挟んで右手を走り去る自動車は概ね夜間の移動を行う運搬車両くらいだ。それでも駅前あたりはまだ人の行き来も旺盛だが、少し郊外に向かえば霞の様にその気配は立ち消えてしまう。

 そんな、人の姿も車の行き来も疎らな住宅街に入る交差点で、僕は赤く灯る信号機を見上げて足を止める。


「……?」


と、不意に違和感を覚えたのはその時だった。

 初めは何も感じなかった。けれど、一つ二つと瞬きを繰り返す内に、ぼんやりと見上げていた夜空が遠退き、間に挟まった僅かな叢雲が急速に光を反射して、その像を紡ぎあげたのだった。

 一瞬、すれ違うものの居ないアスファルトの上を、ハイビームにした自動車が近付いて来たのかとも思った。けれど耳朶と肌にその気配は感じられなかった。

 そして、とうとう煌々と固い大地を照り付け始めた光に、僕は咄嗟に限界まで目を細める。既に照り返したそれは夜に慣れた目には痛い程に、瞼の隙間から瞳孔を貫いてくる。


「……」


同時に、その異常なはずのその光に、僕は何故か妙な既視感を覚えていた。

 僅かに黄色、いや、それを通り越して"(あか)"く見える光。それは、今宵の大地をどんな天体よりも近くで見下ろしてきた女神の色をしていた。

 それに気が付いて顔を上げると、そこには視界一杯に満ちた真円。十八年に一度の大接近ですら有り得ない程の巨大な満月。


(ぶつかる……)


直観的に、そう感じた。

 押し迫る天を満たす巨大な"(満月)"から放たれた無限大の光が、矮小な生物()の小さな眼球に突き刺さり、満ち溢れ、そして一瞬のうちに溢れ出す。

 僕は自分の眼球が"(あか)"い光に犯されたのを感じながら、不意に訪れた浮遊感に身を投げ出したのだった。





     ◆





 どう考えても科学的に有り得ない光景。天文の専門家でもなければ、何かしらの叡智を持った天稟でもない僕でも、その程度は理解出来た。理解出来たからこそ不可解と言わざるを得ない状況に陥った僕に、次に訪れたのはドンッと全身を打ち付ける固く冷たい衝撃だった。


(あ、コンクリートだ)


強制的に覚醒を促すにも荒すぎる一撃と、一拍置いて全身を駆け巡った痛み。その二つを通り過ぎてみれば、掌と頬にはひんやりとした硬質な感触が伝わった。と、


「よし、16番成功だな」


固いコンクリに寝そべっていると、不意に頭の上からやけに冷たい印象の男性の声が降ってきた。


「……」


小波の様に寄せては返す全身の痛みを感じながら顔を上げると、僕を睥睨する妙に野趣のある二つの眼球。明らかにその筋の人と分かる風貌と装いの男の人の姿があった。


(こんな人居たっけ?)


 妙に印象に残る男の人の出で立ちに、僕は僅かに首を傾げる。人の往来も疎らな夜道で、近くにこんな人が歩いていたら気付かないはずがないんだけど……。


「おい、ガキッ!」


僕が記憶の糸を手繰っていると、不意に視線を外した男の人が怒声を上げる。四方八方に放たれた声はガンッと周囲に、反響したそれと合わせてビリビリと僕の鼓膜を震わせてくる。


「はい」


そんな、まだ怒声の残響に揺れる中、今度は男の人とは対照的な鈴を鳴らす様な女の子の声が聞こえてきた。

 見ると、そこにはいつの間にやら現れた深緑色の和服姿の小さな女の子の姿があった。癖一つ無い長い黒髪と、雪の様に白い肌が色鮮やかで、設えの良い日本人形の様な印象を抱かせる子だった。

 やや俯きがちな姿勢と、華奢で撫肩の小柄な体形が妙に調和している。刺繡鮮やかな帯の下でピタリと組んだ手で折り目を抑えながら、女の子は伏し目がちに、カラコロと朱に塗られた下駄を鳴らして、男の人の三歩後ろに進み出た。


「お前の相手はこいつだ。絶対に粗相をすんじゃねえぞ」


そんな女の子に目を向ける事も無く、大柄な男の人は威圧するように言い捨てると、もう用事は済んだとばかりに踵を返す。


「ああ、そうだ」


けれど、女の子とすれ違う瞬間、ふと思い出した様に足を止めて、肩越しに女の子の方を見おろした。


「忘れてねぇと思うが、仕込んでやった通りにな……たっぷりとサービスしてやれ」


乱暴な手つきで、癖一つ無い女の子の頭をガシガシと撫でると、形の良い女の子の耳元でそう告げる。本人は耳打ちのつもりだったのかもしれないけれど、元の声の大きさのせいか秘密どころか一種の恫喝にすら聞こえた。


「……」


けれど、そんな男の人の言葉に、女の子は反応らしい反応を見せなかった。代わりに無言で男の人を見上げる女の子。その起き上がった(かんばせ)は細面で、長い睫毛と丸く整えられた眉に彩られた両目は、一目で将来美人になりそうな雰囲気があった。けれど、本来なら可憐と映るはずの横顔は男の人に向ける視線の持つ妙に荒んだ色によって、酷く空虚なものに見えた。


(……?)


 その荒んだ横顔に、僕は奇妙な違和感を覚える。けれど、その荒んだ視線を向けられた男の人は、女の子の視線に気付いているのかいないのか、ニヤニヤとした嘲笑の視線を投げ返すだけだった。


「承知致しました……」


やがて響いた無機質な声。抑揚の無いそれが却って透き通るような印象すら抱かせる。その声に満足そうに頷いて今度こそ姿を消す男の人。女の子がその姿を見送る頃には、既に先の違和感の輪郭は影も形も見当たらなかった。


「ダリアと申します。本日より勇者様のお相手をさせていただきます」


 内心、一体どういうことだろうと考えていると、いつの間にか僕の目の前にまでやって来ていた女の子が僕を見おろしながらそう言って、ペコリと綺麗な一礼をした。


「どうも?」


女の子、ダリアちゃんの奇妙な言い回しに、一先ず僕も挨拶を返す。そんな僕の前で、彼女は無言のまま、妙に色っぽい仕草で、自分の帯に手を掛けたのだった。


(? 何する気?)


内心首を捻っていると、ダリアちゃんはそのまま刺繍鮮やかな帯を、そのまま完全に解いてしまったのだった。


「……」


本気で状況が掴めない。夜の散歩から帰ろうとしたら、巨大な満月とその光に押し潰されそうになり、コンクリートの床に叩き付けられて、何故か目の前の小さな、それこそ少女と言って良い様な年恰好の女の子が目の前で帯を解こうとしている。

 ただ一つ分かる事があるとしたら、それは、これが現実という事だけ。なぜか根拠も理屈も無いくせに、妙に確信をもって僕は目の前の光景をそう受け止めていた。

 と、僕が首を捻っていると、パサリ……という微かなはずの音が妙に大きく反響した。見れば繊細な刺繍糸をきらきらと瞬かせた長い帯が、大きな蛇の様にのたくって白い足袋の前に横たわっている。殆ど反射的にその足袋の先を追うと、足首から太腿まですらりと細い二本の白い両脚に続き、その根元には仄かに血色を帯びた無毛の割れ目。女の子らしく、少し丸みを帯びた腰つきに、スッと縦筋の通った細いお腹、うっすらと浮いた肋に、あまり肉付きを感じさせない薄い胸元。薄めの肌にくっきりと浮いた鎖骨から、手折れそうなほどに細い首筋と続き、最後には形の良い頤と桜色の唇、そして深い隈の浮いた虚ろな両目が宿っていた。

 風貌にそぐった華奢な女の子、けれど、風貌に似合わない荒んだ雰囲気の女の子。

 雪原の様な白い裸体を晒す彼女を見上げ、僕は突き動かされる様に口を開く。





「お爺さん?」





果たして、僕の口から出てきた言葉は何故か目の前の光景とは一切関係が無い、むしろダリアちゃんとは正反対のそれを現わすものだった。


「……」


「……」


ダリアちゃんがピシリと硬直し、沈黙が広がった。

 当然だろう。まだ少女と言って良い年頃の女の子が、いきなりお爺さん扱いされたんだから。僕だっていきなり幼女扱いされたら怒る……かは別にして、間違いなく言葉の意図を聞き返すと思う。実際、ダリアちゃんの表情では先の荒んだ色が薄まり、代わりに困惑に似た雰囲気が漏れ出ていた。大きく見開かれたアーモンド形の両目は黒い真珠のようで、あどけないそれは先の荒んだ表情よりも遥かに年相応に思えた。

 そして、僕が見上げる中、着物の合わせ目を(はだ)けたダリアちゃんの、桜色の唇が(かす)かに開かれる。


「……何故」


ダリアちゃんの口から出たのは当然ながら疑問の声。


「ん?」


……だったけど、その音色が明らかに最初の鈴の鳴るようなものと違っていた。

 彼女の口から出たのは喉笛こそ同じ、けれど、その雰囲気のせいだろうか、出てきた声音は酷く老成した、しわがれたものに聞こえた。


「何故……気が付いた?」


「は?」


 正直、言い間違えにしても大概なそれに、僕が謝罪を口にしようとすると、それより先に開かれた彼女の口から出てきたのは、怒りでも訝るものでもなく、明らかな動揺による言葉だった。

 やっぱりしわがれたそれが困惑を帯びながらも述べた、僕の失言の肯定。

 それに僕が思わずまじまじと彼女を見詰めると、ダリアちゃんは何かに驚いた様に僅かに両目を見開いた。


「まさか……浅理眼……か?」


「は? 千里?」


「千里ではなく、いや……或いはこれは好都合やもしれぬ……」


 首を傾げる僕に、彼女は妙に堂に入った仕草で自分の口元を押さえてブツブツと何事かを呟く。その所作は鋭くて、明らかに小さな女の子のそれではなかった。


「おぬしよ」


「?」


そして、パッと顔を上げた彼女が、隈の浮いた鋭い視線を向けてくる。


「今は夢か現か?」


妙に時代がかった口調。けれど、先の鈴の鳴る様な透き通った声と違い、今のしわがれた声には妙にマッチしている様に思えた。


「現実じゃないの?」


彼女の問いに、僕は正直な感想を返した。根拠はない、それ以前に支離滅裂な光景に、僕はなんとなくだけど確信をもって、そう答えた。この感覚は何故かさっきから変わらなかった。


「……」


「……」


「……はっ」


「?」


再び両目を見開いたダリアちゃんが不意に吐き出した。


「は、ははっ! はははははっ!!」


始めは刹那的だったはずのそれは、次第に紡ぎ合い、最後は大きな哄笑となって辺りに鳴り響いた。


「まさか、まさかまさか! 事ここに及んで、蜘蛛の糸を手繰り寄せようとは! まして、それが全ての因となった相手とはっ!!」


「えっと……」


暗い虚空を仰ぎ、抱擁するように両手を羽搏いて叫ぶダリアちゃんに、僕はどう声を掛けたものかと首を捻る。


「ぬしよ」


 その哄笑を断ったダリアちゃんが不意に膝を降ろし、鼻と鼻がくっつきそうな距離まで近付いて声を潜めた。先の生気を感じさせない両目が、爛々と輝いているのが印象的だった。

 桜色の唇がやけに蠱惑的に蠢いて、顕わになったやけに鋭い犬歯がぬらぬらと輝く。


「逃げるぞ。今すぐに」


 そんな野生動物めいた表情のダリアちゃんの口から出てきたのは、獰猛な雰囲気とは正反対の遁走の誘いだった。

 自ら(はだ)けた合わせ目を、太い帯で華奢な身体に縛りつける。胸元で乱雑に作られた大きな蝶結びが、荒んだ両目と合わさってさながら苦界に落ちた花魁の様に映った。


「後で全てを話すゆえ、今は何も言わずわしに着いて来てくれ。もし、このままここで目合(まぐわ)えば、一時の極楽と引き換えに永劫の牢獄が待っておるからのう」


先の楚々とした仕草とは対照的な、妙な色気を感じさせるやさぐれた雰囲気で、ダリアちゃんが呟く。


「おぬしの"眼"ならばわしの言葉が偽りでない事は分かろう?」


「"眼"っていうのは分からないけど、ダリアちゃんが嘘を言っていない事は分かるよ」


根拠も何もないけど、何となく。

 服に着いた砂埃を払いながら、僕が立ち上がると、ダリアちゃんがふるふると首を横に振った。


「わしの名はダリアではない」


「偽名?」


その言葉に僕が問い返すと、ダリアちゃんは「みたいなものじゃ」と肩を竦めた。


「じゃあ、なんて呼べばいい?」


「む、そうじゃな……」


僕の質問に、ダリアじゃないちゃんが口を尖らせる。


「まあ、よいか」


「?」


「いや、こっちの話じゃ。わしのことはヨモギと呼べ。それが、本当の名じゃからな」


「ヨモギちゃんね」


「ちゃんは要らぬ。先も言うたがこんな爺じゃからな」


「それ、冗談じゃなかったんだ」


正直、信じられない気もするんだけど、


(でも、嘘じゃないっぽいんだよなあ……)


「それで、おぬしは何と呼べばよい?」


そんな事を考えていると、スンスンと何故か臭いを嗅ぐように鼻を鳴らしていたヨモギが、ちらりと振り返って尋ねてくる。


「そうだね、僕は紅夜。(ひつじ)紅夜(こうや)


「ひつじ?」


「やっぱり、そこ引っ掛かるよね」


自分でも珍しい苗字だと思うけど。


「動物の方じゃなくて(つじ)ね。(つじ)という字を一つだけ書くから(ひつじ)紅夜(こうや)(あか)(よる)紅夜(こうや)


「ふむ、ならば紅夜で良いか?」


「好きな方で」


「では、紅夜じゃな」


頷いたヨモギが「それではゆくぞ」と僕の手を取る。白くて小さく、そして温かい手だった。


「そんなに簡単に出て行けるの?」


僕が問うと、ヨモギが「問題ない」と頷く。


「奴らはわしを既に心を折った童と思うておる。今更逃げるなぞ、毛頭考えておらんじゃろ」


そう言って、今更ながらに僕達の居た部屋の入り口を顎でしゃくる。入口には鍵どころか簡単な扉すら付いていなかった。


「だからこそ、今が最初で最後の機会なのじゃ」


辺りを警戒しながらも歩き出すヨモギについて、僕も歩き出す。

 僕の歩を促す小さな手は、さながら先の夜風の様だった。





     ◆





 ヨモギに手を引かれての脱走?は思いの外あっさりと終了した。彼女?の言葉通り、廊下に出てもさっきの男の人の姿は既に無く、他の人の気配も殆ど感じられなかった。


「……」


ただ、長い廊下を抜けて、黴臭い階段を降り、建付けの悪い鉄扉を開けた先にあった光景は、僕が今の今まで歩いていたM市とは似ても似つかない、大量の光源に満ち溢れた夜景色だった。

 一瞬立ち止まり、ちらりと上空を見上げるヨモギ。その視線を追い掛けると、今出てきたばかりのビルの、明かりの灯った最上階から、時折ドッと誰かの笑い声が響いていた。


「……このまま、歓楽街まで向かうぞ。あそこで宿を取れば、あやつらもそう簡単には見つけられぬはずじゃ」


「りょーかい」


そう言って、再び僕の手を引っ張ったヨモギに、僕は特に逆らう事無く付いて行く。


「疑問は?」


「特には」


状況を鑑みるに、土地勘が無い僕が今あーだこーだ言っても、多分良いこと無さそうだしね。


「そうか」


けど、ヨモギの方は何か面白い事でもあったのか、ニヤッと笑みを漏らす。やっぱり、風貌に似合わない、声に似合った野趣を感じさせる笑顔だった。

 左で鳴るカランコロンという下駄の音を聞きながら、僕はもう一度出てきたばかりのビルを振り返ったのだった。





     ◆





 僕とヨモギが歓楽街に着いたのは、それから十五分ほどしての事だった。

 そこそこ土地勘があるらしいヨモギが選んだ、妙に人気の少ない電気の落ちた建物が立ち並ぶ一角を抜けて走っていると、いつの間にか辺りの景色が最初に見た大量の光源以上の光量に満ちたものに移り変わっていた。

 人の往来も活気も旺盛で、道行く人の格好も言葉通りの歓楽街そのものだった。


「こっちじゃ」


 と、何となく辺りを見回していると、ヨモギが繋いだままの手をクイックイッと引っ張る。その爪先が向けられたのは、表通りから一つ角を曲がる、表通りと比べると若干人の気配が疎らな小路だった。


「一度来たきりじゃが、まだ残っててくれよ……」


僕の手を引いたヨモギがそう呟きながら、一軒の古いビルの前で足を止める。見れば壊れて通電しなくなった看板には『連れ込み宿、お亀屋』という妙に古臭い文字があった。そして、その看板の隣のくすんだ窓からは、ぼんやりとした光が漏れている。お世辞にもあまり人が寄り付くようには見えないその建物に、隣のヨモギは安堵した様子で溜息を吐いた。


「ここ?」


「うむ、どうやらまだやっていたようじゃ」


確認すると、そう言って頷いたヨモギがカランコロンと漆塗りの下駄を鳴らして、崩れそうなビルに足を踏み入れる。その隣を歩きながら、僕は念のため軽く周囲に視線を向けたのだった。





     ◆





「ふぅ……やっと人心地ついたのう……」


「そうだねえ……」


 受付の愛想の無いお婆さんから渡された安いシリンダー錠を開けると中心に薄っぺらい敷布団が一枚だけ敷かれた、畳四枚の小さな部屋があった。

 トテトテと中に入ったヨモギの後ろで入口の鍵を閉めながら、僕は物珍しさも手伝って何となく部屋の中を見回す。


「んむ? どうかしたのか?」


と、いつの間にか僕を見上げていたヨモギが、不思議そうにコテンと首を横に倒した。


「ちょっと珍しい畳の置き方だなって」


僕の感想に、彼女はああと頷くと「四畳間じゃからな」と笑った。


「……」


「知らぬか? 四畳間」


「四畳ある部屋の事じゃないよね?」


僕の確認に、彼女が「うむ」と頷く。


「四畳間というのはほれ、夜に男と寝る女郎達が使う部屋の事じゃな。極論ああいうのはここの様に布団が敷ければ問題ないからのう」


「あー……」


縦長に凝縮された部屋の構造に、意図を理解する。なるほどね……。


「流石に、そんな言葉を小さな女の子から聞くとは思わなかったんだけど?」


「爺じゃから気にするな!」


そう言って、「にゅふふっ!」と変な笑いを上げたヨモギがドカッと豪快な仕草で、布団の上に胡坐をかいた。着物の合わせ目が割れて、中が見えそうになっている。


「それよりも」


「ん?」


「おぬしもこっちに来て座らぬか」


けれど、ヨモギは気にした様子も無く、宿代代わりに白足袋を売り渡し、露になった右足をピコピコと動かしながら手招きしてくる。誘われるがままにヨモギの前に腰を降ろすと、ヨモギは満足気に「にゅふっ♪」と笑ったのだった。


「さて、さっそくじゃが紅夜よ」


「?」


そして、ヨモギは姿勢を正すと、コホンと軽く咳払いをして、スッと俄かに真剣な面持ちになる。


「まずは、突然の事でありながら、わしの言葉に従ってくれたことに礼を言わせてもらいたい。このヨモギ、誠に感謝の念に堪えぬ。……ありがとう」


「あ、どうも?」


両拳を床に突いて深々と頭を下げるヨモギに、僕も軽く会釈を返す。


「大分時間が経ってしもうたが、改めておぬしに降りかかった状況に付いて、わしが知る限りの事を話させてもらおうとするかのう」


「ん」


僕が頷くと、目の前に座ったヨモギも「うむ」と同じく頷いた。


「まずいきなりなのじゃが、紅夜は"異世界"というものを信じるか?」


「それは、ホントにいきなりだね」


ヨモギの口から出た言葉に、僕は少し頭を捻る。といっても、信じる信じない以前に、僕にとってそういうの(異世界)は小説とかゲームとか、空想の中の話だという認識だ。


「じゃろうな」


僕が正直にそれを告げると、ヨモギはこくりと頷く。


「では、もしも、わしがそれ(異世界)は存在すると言ったら、おぬしは信じるか?」


「ん? んー……」


ヨモギの言葉にもう一度考える。突拍子もない状況と突拍子もない会話なんだけど……


「信じる……かな。うん、信じると思う。何となくだけど」


特に根拠もない中で、ヨモギの顔を見ていると、それでも直観的にヨモギの言葉を信じる気がした。


「……僕ってこんなにちょろかったっけ?」


あまりにもあっさりとYESを出した自分の脳に、僕は自分で首を捻った。流石にもう少し疑り深いかなと思ってたんだけど。それ以前に、普通の人でも異世界とか意味不明な言葉をあっさりと信じるかな?

 自分自身の思考に、首を傾げていると、目の前でチョコンと胡坐をかいていたヨモギが「にゅふっ♪」とまた変な笑い声をあげた。


「なに、気にする必要はないぞ。確かに、初対面の童の空想じみた言葉なぞ聞き流すのが普通じゃが、今のおぬしの状態ならば、むしろ、信じるのが普通じゃ」


そう言って、ヨモギはトントンと自分の右目の目尻を指で指し示す。


「おぬしの根拠、それはの……おぬしに宿ったその両眼よ」


「眼?」


「うむ」


聞き返した僕に、ヨモギがコクコクと頷く。そして、僕の鼻さきまで身を乗り出したヨモギは、覗き込む様にして僕と目を重ねて来る。大粒の黒曜の瞳が満月よりも奇麗だった。


「おぬしに宿った両目、それは浅理眼という」


「センリガン……」


囁く様に告げられた言葉を反芻すると、ヨモギは「うむ」と頷いて再び身体を離した。


「浅い(ことわり)と書いて浅理眼。その力は目に見えた事実を確実に捉える点にある。僅かにでも欺瞞の兆候があれば一瞬で看破し、真実であれば誠を受け入れる事が出来る」


「えっと、嘘発見器みたいなものってこと?」


「とも言い切れぬのじゃ」


僕が確認すると、ヨモギはフルフルと首を横に振る。


「浅理眼の素晴らしい所は、眼前の現実にのみ依るため、所謂幻術の類が一切効かぬ点にある。しかし、物理的な隠匿が完璧であった場合、決して看破することが出来ぬ」


「つまり?」


「その笑みに僅かでも違和感があれば決して逃さぬが、完全な造り笑顔をされた場合は決して見抜けぬ」


「はあ……」


なんていうか、ややこしいというか、複雑というか……。


「多少奇妙な眼じゃが、あの場では最高であったのも事実でのう。もし、紅夜がその眼を持っておらなんだら、こんな頓狂な話を信じさせるのに、相当な時を要したであろう?」


「まあ、そう……だね」


ヨモギの言葉に、僕も頷く。

 確かに、今までの状況は僕にとっての普通で考える限り、どれもこれも信じる事が出来るか怪しい内容だった。けれど、現実として僕はヨモギの話を真実として受け入れていて、実際ストンと腑に落ちるものを感じている。ただ、


「その理由が仮に両目だとして、何でそんな事に?」


異世界や特殊な力を全て信じたとして、少なくとも僕にそんな力は無かったはずだ。僕がそう問うと、ヨモギは「そこに関しても説明しよう」と頷いて、再び真剣な表情になる。


(……ん?)


けれど、その表情の中に一片、何となく剣呑な色が見えた気がした。けれど、僕が首を傾げるより先に、ヨモギの薄い桜色の唇が開き、言葉の続きを紡ぎ始めていた。


「全ては先の襤褸ビルに端を発する。あれはのう、このパインズゲートの地に根を張る組織の一つ、職業斡旋組合の拠点の一つなのじゃ」


「……」


パインズゲートに職業斡旋組合。どっちも耳慣れない言葉だった。


「職業斡旋組合は表向きは文字通り人材の紹介をやっておる組織じゃ」


「手配師みたいな?」


「お、よう知っておるのう。正にそれじゃ」


ヤクザ映画の聞きかじりの言葉を投げてみると、ヨモギがコクコクと首を縦に振る。


「では、それがヤクザまがいのものであることは?」


「何となくは……っていうか、ヤクザって言葉あるんだね」


何時の世でも、人の群れがある限り、そういった組織が出来るのは必然だけど、言葉が一致するのは何となく珍しく感じられた。

 僕の素朴な疑問に、軽く肩を竦めて、ヨモギが「続けるぞ」と前置きする。


「実際、職業斡旋組合の活動には合法非合法の別がなくての。人身売買も当然の様に行うのじゃが、その人間を集める際に、相当にあくどい手を使う事もざららしいのじゃ」


「うん」


「でじゃ、その職業斡旋組合の目玉商品の一つが"異世界"から呼び出した"勇者"らしいのじゃ」


「"勇者"……」


ヨモギの口から出たその言葉を、僕は何となく反芻する。"異世界"、"力"、"勇者"。ここだけ聞けば、完全にファンタジーだ。口にしたヨモギ自身もそう思っているのか、シニカルにその口元を歪めている。


「ネーミングセンスには多分に疑問符が尽きぬが、この"勇者"が目玉商品となる理由にはわしも得心がいくところがあってのう」


「そうなんだ?」


「うむ」


まあ、売れ筋ってことは何かしらのセールスポイントがある訳だからね。


「まず、この"勇者"が"勇者"と名付けられた理由にもなるのじゃがな? "勇者"は"異世界"に居る間は普通の人間らしいのじゃ。じゃが、職業斡旋組合による召喚を経ることで皆一様になにがしかの特別な力を持つようになるらしくてのう」


「ふーん?」


召喚に力ねえ……。


「この力が、かなり優秀有用であるらしく、相当に価値があるらしいのじゃ」


「なるほどね」


人身売買を生業にする組織なら、商品の付加価値が高いって訳か。……あー、


「じゃあ、僕の眼も?」


「恐らくそうじゃろうな」


僕の確認に、ヨモギが首肯する。実際、状況だけを鑑みれば、まず間違いないよね。


「って事はこの眼(浅理眼)って、付加価値が高いの?」


「そこが少々言いにくいのじゃが……」


ヨモギが言い淀んで、頭を掻いた。


「もしかしなくてもあまり付加価値が高くない?」


「珍しい能力であることに間違いは無いのじゃがな」


僕の確認には答えず、ヨモギがそう言って小さな肩を竦める。つまり……


「いわゆる珍味の類か」


「にべもないのう……」


珍しいけど、珍しいだけで美味しい訳ではない、高級品のなりそこない。故に珍味。

 僕の言葉に、正面のヨモギが困った様に苦笑する。


「じゃが、実際にあの場では一筋の光明であったのは事実じゃ。何せ、"勇者"は"異世界"生まれ故、こちらの状況に付いては無知と言ってよい。そんな"勇者"を職業斡旋組合に気付かれずに、童と言って良い年嵩の女子が口説き落とすのは本来なら不可能じゃ」


「そういう意味では、わしらが今こうしていられるのは、直ぐに話が通じる浅理眼があったからこそじゃな」とヨモギは皮肉気に笑って肩を竦めた。んー……、


「怪我の功名って奴かな?」


「あるいは瓢箪から駒かもしれぬのう」


僕とヨモギは顔を見合わせてどちらともなしに笑った。


「話を続けるぞ。特別な力を持つが、無知であるというのは、一点制御しやすいという事に他ならぬ。加えて、"異世界"からの召喚は攫ったり型に嵌める必要も無ければ足が付く無い訳じゃから……」


「低労力で調達できて高値で売れると」


そりゃ、目玉商品になるに決まってる。


(……ん?)


と、そこで、僕は妙な事に気が付いた。


「ねえ、ヨモギ」


「なんじゃ?」


コテンと首を横に倒す姿はあどけなくて、言葉遣い以外違和感はない。けれど、


「なんか、随分と事情に詳しいよね」


さっき、自分の事を爺と言ってた事は覚えてるけど、正直冗談かなと聞き流していた。けど、こんな小さな見た目の子供の受け答えかというと、それも少し違う気がする。

 その事を伝えてみると、ヨモギがニヤッと皮肉気に口角を持ち上げる。なんというか、野趣を持った、妙に粗野な笑い方だった。


「まず、わしが事情をある程度把握しておる理由は、概ね聞き出したからじゃ」


「職業斡旋組合の人に?」


「うむ」


ヨモギは皮肉気な顔のまま、こくりと頷いた。


「先の話に戻るが、"勇者"を自在に御するにあたり、斡旋組合も何の縄も用意せぬほどに慢心はしておらぬからのう。多少ではあるが鼻薬は用意しておった……」


「つまり?」


「分かるじゃろう? 酒、薬、金、そして女子(おなご)じゃ」


そう言って、ヨモギはずいっと身を乗り出してくる。その黒い両目に浮かんだのは皮肉気な色と、そして、何処か嘲笑する様な、そんな感情だった。


「わしは、おぬしに宛がわれたハニートラップじゃ」


そう言って、ヨモギは「にゅふっ」と嗤ったのだった。


「"無知"な勇者篭絡する手札の内、酒、薬、金は斡旋組合ならば容易く用意出来るが、女子は多少事情があってのう」


「事情?」


「うむ」


頷いたヨモギが軽く肩を竦める。


「用立てれば直ぐに揃う物品と違い、ハニートラップとなる女子は端から勇者を篭絡するような会話、仕草、立ち振る舞い、そして床の術(・・・)を心得ている訳ではない」


「それって……」


つまり、……え?

 思わず見返す僕に、ヨモギは「あたりじゃ」と頷いた。


「勇者に宛がわれる女子は、何かしらの事情で型に嵌めた家の見目好い娘でのう。そういった女子を近隣の村々から掻き集めて、組合の男達は仕込みと称した"宴"を開くのよ」


「……」


その言葉で、僕は漸く事情を理解した。つまり、ヨモギもまた、斡旋組合に買われて……


「まさに酒池肉林といった具合でな。ある程度分別がつく年の頃ならばまだマシじゃ。まだ女にもなっておらぬ、年端も行かぬ幼子のここ(・・)すら無理矢理に抉じ開けて仕込みを行う。中には相当に身形の良い者達も居ったから、一種の接待としての機能も持ち合わせているのかもしれぬのう……」


その時の事を思い出しながらか、ヨモギはぽつりぽつりとそう語り出した。

 何となく、ヨモギが事情に精通している理由がよく分かった気がする。そういう状況で、代わる代わるに自分の上に乗りながら、ペラペラと舌を回す男の達の言葉を一語一句漏らさずに記憶に刻んでいたんだろう。

 同時に、初めて会った時のヨモギの表情を思い出す。所詮、想像でしかないけれど、もし自分が同じ立場なら、あんな顔にもなるだろうし、それ以上に僕に対しても……


「……」


「ああ、勘違いするでないぞ」


僕が考え込んでいると、目の前のヨモギがひらひらと手を振った。


「確かに、わしが宛がわれたのは紅夜じゃったが、別に紅夜が召喚()ばれんでも、他の男に宛がわれていただけじゃろう。むしろ、浅理眼を持ってきてくれたおぬしのお陰で、こうして逃げ出すことも出来た。わしとしては感謝する事ことあれ、怨む筋などないぞ」


「それは……」


あっけらかんと言われると、正直毒気は抜かれる、けど、


「存外優しいのう?」


「いや、そんなんじゃ」


「ま、そういうのは好いた女子にでも取っておくとよい。わしみたいな爺に売っても損しかせぬからのう」


そう言って、ヨモギはようやく「にゅふふっ♪」と楽しそうな笑みを漏らしたのだった。……、


「そういえばさ」


「んむ?」


「さっきから気になってたんだけど、その()ってのはどういうこと?」


気分を切り替えるつもりも込めて、僕はヨモギの問い掛ける。雰囲気が老成しているとは思うし、見た目の年恰好の割に凄い抜け目ない感じではあるけど……綽名か何かかな?


「お? 気になるか? 気になるのじゃな?」


けれど、そんな僕の予想とは裏腹に、ヨモギが明らかに機嫌良さそうな、さっきのにゅふにゅふという変な笑顔とは正反対の、ニヤーッとした悪笑顔を作る。……あれ? 何かまずい事聞いた?


「まずくはないぞ。割と核心じゃが」


「つまり、やばいって事じゃん」


此処まで色々と入り組んでるのに、それってどう考えても厄ネタだし。


「ま、聞け」


「聞くから離して?」


主に右手に食い込ませた左手を。


「おっと済まぬ済まぬ」


「にゅふっ」と漏らして、手を離したヨモギがコホンと軽く咳払いをする。


「先も話した様に、色々と荒稼ぎをして好き勝手やっておった斡旋組合じゃが、一点見落としてた事があってのう」


「見落としていた事?」


っていうと?


「自身が食い物にした人間の狡猾さよ」


そう言って、ヨモギはニッと白い歯を見せる。


「先も言うた通り、斡旋組合は何かしら型に嵌める、或いは金を出すといった手で見目好い女子を調達する訳じゃが、売った村にしても美しい女に価値があるのは変わらぬ」


「うん」


まあ、だよね。


「故に、どうにかして、値を釣り上げる、或いは商品を誤魔化すという事を考える訳じゃ」


「前半は兎も角、後半」


値段交渉は真っ当な取引だけど、誤魔化しはシンプルに詐欺だよね?


「普通は成功はせぬようじゃがな。ガチガチに白粉で固めた女子など差し出されたら、その場で頭から水をぶっかけることもあるようじゃし」


「まあ、それくらいはするよね」


それだけで詐欺が暴けるなら安いものだし。


「じゃが、稀にではあるが成功する例もあってのう」


「ヨモギがそれだと?」


「うむ」


ヨモギが頷き、長い御髪がさらりと揺れた。


「この()は事実としてこの場に確かに存在しておる。それは紅夜ならば浅理眼で分かるじゃろ?」


「多分?」


むにっと自分の両頬を引っ張るヨモギに首肯を返す。実際、僕の眼にも、ヨモギの顔に変な所は見当たらなかった。


「じゃが、この目の前に確かに存在しておる顔は、わしの本来の顔ではないのじゃ」


「んー?」


えーと、つまり……、


「何らかの手段で顔を変えた?」


「ご名答じゃ」


頷いたヨモギが「にゅふっ♪」と笑う。


「あるはずのない姿を(うつつ)に顕す術の妙! それこそがわし、桐壺村の豆狸、ヨモギ様の変化の技よ!」


そして、何処か誇らしげに「にゅふんっ!」と薄い胸を張るのだった。






ご感想、ご指摘など頂けましたらとても励みになります。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ