8、回想と、レベルアップと、再び①
こんばんはー
ついに8話!!回想もそろそろ終わりますね!!
ぜひお読みください!
8、回想と、レベルアップと、再び①
『前方に敵発見。約5メートル級の木のユニコーン。直ちに駆除せよ!!』
「えっいませんよ!? というかユニコーンって神獣ですよね!?」
『…だからイメージが大事なんだって!!』
コスチュームに着替えたこまちとわたしは、やっと落ち着いて今日の「訓練」に入った。
目標───
『わたしがある程度、応戦できるようになる』
(結局戦ってるじゃないですか……まあ、楽しいからいいですが)
どうやら今日は、シュミレーション練習らしい。
それでも神獣を召喚してくるとは……。
(まあ、ノってみますか。)
「大変です、師匠!!! ユニコーンが増殖して五十匹くらいに増えました!」
そうスピーカーに向かっていいながら、わたしは森の中を駆けまわった。
ユニコーンの巨大な足をイメージして、うねりながら走ってみたり、くぐってみたり。
すると返ってきた回答。
『えっ!? どこにもいないよ!?』
「今自分でイメージが大事だって言いましたよね!?!?」
なんやかんやで、約二時間が経過した。
シュミレーション練習を一度中断し、休憩に入る。
「はぁ…はぁ……ちょっと休憩……」
「もぉーあやちゃん体力ないなぁ」
「ユニコーンが強いんですよ…特に最後の一匹」
呼吸を整えながら、木陰にへたりと座り込むわたし。渡されたスポーツドリンクのボトルキャップをねじりながら、こまちを見て睨んだ。
最後の一匹。
こまちが帰り道、いきなり
『いやあああっ! あたしユニコーンになったかも…がおー!!!』
……とか言って襲いかかってきたのだ。
あれは、なかなか駆除が大変だった。
「あーあれかぁ。……まぁ取り憑いたものはしょうがないもんね! ……あぁどうしよう〜『もう一回』ユニコーンになってみたいなぁ」
「……そろそろ現実に戻りましょ?」
結局、一応今日のノルマは達成したということで、こまちの家に戻ることにした。
ちなみに全くもって余談だが、その夜飲んだハーブティーの茶葉は、こまちのガーデンから採ったフレッシュなものらしい。
あぁ、トラウマのガーデン……。
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《多元の蝶々(マルチ・アゲハ)》
異能で習得できる『効果』を、多数組みあわせて使うことが出来る。同時に効果は発動し、個々が弱くなることは無い。
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「これが………こまちちゃんの」
「うん、あたしの『異能』。マルチっていつも呼んでる」
「そもそも初めて聞いたんですが…『エフェクト』って……??」
「そんままよ。異能を持ってる人なら、磨けば誰でも得られるの。個人差は大きいけどね───まあまあ、とりあえず、実践してみよ!!」
「悲劇」が起きてから、約一ヶ月弱。
毎日のように、ここ、訓練所に集まった。
相変わらず綺麗な水を吹き出す歪な石像つきの噴水と、石畳。ガサガサ音を立てる周囲の森。
石像が粉々になった回数。
57回。
森が全焼した回数。
十回。
骨折した回数。
二人合わせて5回。
────これが、わたしの一ヶ月間の成果の証だ。
「───というか、やっと教えてくれましたね。こまちちゃんの異能」
わたしは「あの助兵衛なコスチューム」を身につけ、黒の鎌を握った。
それをみて、こまちがふふっと笑った。
「……おおっあやちゃん、慣れてきたじゃないの。───そうね。やっと、あやちゃんがイイ感じの強さになってきたから───もう秘密は明そっかなって」
……秘密だったんだ。
────どうりで今まで誤魔化してきたわけだ。
というかこの服だけは慣れたくないです……。
「………ではでは、早速お手並み拝見と行きましょっか♡」
「はいっ! お願いします!!」
そんなわけで、一ヶ月間の修行の成果をみせる闘いが、始まった。
─────《あやVSこまち》
─────────あれ?
異能を無くす話は……どこに行っちゃったんでしょうね。
3。
2。
1。
──────0。
『綻び放て、《照明》!───『携帯洋灯!!』
わたしのほうから、攻撃を仕掛けた。
繰り出したのは、ロウソクが入った木製ランタン。
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《携帯洋灯》
ランタンを制作する。周囲の環境に応じて形は変わる。
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だが、それだけでは終わらない。
「『夜叉姫恋心』!!」
声が降りたとたん、手に持っていたランタンは一瞬ぶるっと震えた。
溶けるようにして、小さなガラスの足が四本生える。
「おおっ♪面白い技出すね〜!」
楽しそうに、ちょっと遠くで待機しているこまち。
まだ、奇襲などは…遠慮してくれているようだ。
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《夜叉姫恋心》
自分より弱い発光体(元々の異能に発光性質を持つので)をテイムすることが出来る
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「さあハムちゃん、行くのです!!」
わたしがそう命令すると、「ランタン 生命体」はガラスの足をちょこちょこ動かしながら、こまちの方へ向かっていった。
「かあわいいい〜〜♡」
きゃーっと叫ぶこまち。真っ白な長剣に回転をかけて、「それーっ!!」と振り下ろした。
─────バリンッッッ。
「ハムちゃん」の前脚が一本欠ける。
そして、動かなくなった。
「……ハムちゃん!?…」
ハムちゃんは、ゆっくりとこっちを向いた。それから────
なんと、わたしに向かって攻撃し始めたのだ。
「うそっ!? なにこれ───きゃっ!!!」
わたしは黒の鎌をブンブン振り回しながら、「ハムちゃん」の噛みつき攻撃を耐えた。
「『洗脳』『強化』────今回はこの二つを組み合わせて見たわ。あまり練習してないから弱いけど、これで何となく掴めた。───そう、こうやって組み合わせるの。パズルみたいな感じだから、たまに反応しないものもあるのよ」
ニコニコ笑いながら、こまちは「あ、そういえば」と続けた。
「あたし、もう一つ『効果』を入れたわ。『洗脳』と、『強化』と、あとは───」
もしかして、とわたしはハムちゃんと距離を置いた。なるべく、離れる……!!
が、もう遅かった。
「───『自爆』♡」
〜〜[@+&!(=[]?(!&?────!?!?
言葉にならない喚き声を上げ、ランタン生命体は爆発した。
轟音が鳴り響く。石畳の欠片が飛び散って、突風に巻き上げられる。
「っっっ………!?!?」
しばらくして、風が止んだ。
噴水はもうとっくにどこかに消えていて、かわりに大きな穴が訓練所の真ん中に空いていた。
立ち上る無数の黒煙。
こまちはそれを見て、ふふんっと鼻を鳴らした。
「あやちゃ〜ん。まだ生きてるでしょー?」
「………はい、生きてますよ」
穴からジャンプして出てくるわたし。
「おおっなんと無傷!!」
「はい!!…こまちちゃんの攻撃を耐え切りました!!───ですが、こまちちゃんも気をつけてくださいね」
「…気をつける?」
「わたしの《夜叉姫恋心》─────」
ハッとなって、白い剣を構えて振り返るこまち。背後にいたのは、超大型のランタンだった。
さっきの小さい「ハムちゃん」と、そっくりなもの────ガラスの四本足、まだ昼なのに陽の光に負けず元気よく燃える中身。
「─────お友達を呼ぶのが好きなんですよ」
「──────!?!?」
もしも、ただただ操作するだけなら、確実に負ける。が、爆発なら話は違う。
そう。
───わたしは「自分のランタン生命体からダメージを一切受けない」!!!
「────『自爆』!!!!」
唱えると、大きなランタンはグラングラン揺れ始め、風船のように膨らみ────
─────あれ?
「ざぁんねぇ〜ん☆」
「「!?!?」」
聞き覚えのある声。
見上げる。
爆発するはずの「巨大ハムちゃん」は、旋風に巻かれて動けなくなっていた。
その旋風の上に、優雅に立つ人影が見える。
「………あなたは……」
「うんうん。そりゃ覚えてないよねぇ」
軽々と着陸する人影。
白いスーツ。包帯で巻かれた顔と両手。
「!!!────もしかして────」
「あやちゃん、動かないで!」
前に一歩踏み出そうとするわたしを、こまちは手を繋いで止めた。
「絶対に、何も考えないで。お願いだから目を瞑って!」
「………………………………いやです」
頭の、中で。
あの時の記憶が、蘇った。
黒い鎌を握るわたしの手が、小刻みに震えていた。
いかがでしたでしょうか?
また!?
って感じですが、奴が来ましたね……笑
スカラーの異能ってなに!?って思った方、すみません泣……まだ今のところ出せない泣
ぜひ9話もお楽しみに!!