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6、回想と、師匠と、ランタン特訓②

さて6章!

ぜひお読みくださいな!


回想第5回目です!!まだ続きます!

6、回想と、師匠と、ランタン特訓②


「いいい一時間はさすがにきついですよ…体力が持ちませんし、…昨日のあの男を一瞬で倒す師匠なんかとそんな長い時間やったら…」


「別にあやちゃんは攻撃しなくてもいいよ!!──では、始めっっ!!!」


─────聞いてすらくれない!!!


しかたない。スタートしてしまったものだから、今はとりあえず。


……「どうやって生き残るか」を考えよう。


「前見てね♡」


そんな声が聞こえて、わたしはハッとなって前を向いた。


遅かった。


目にも見えない速さで、何か鋭いものが何本か飛んでくる。首を狙っているのが明らかだ。


(さすがに冗談だとは思ってませんでしたが────師匠様本気だぁあああ……!!!)


心の中で

「南無阿弥陀仏…南無阿弥陀仏…」

と唱えながら、両手を前に出してよく分からない防御体勢をとった。


(もしラノベの中だったら強い技が出せるのに……)


─────ひゅっ。ひゅっ。


………………あれ?


こまちが飛ばした、刃物のような何かは、なんと全発わたしの指の隙間そして首筋にギリギリ届かないところで─────空気を横切ったのだ。


ひえええええええ……。


「あらぁー、はずしちゃったわぁ♡」


師匠様……もしかして、わざと当たらないように……!?


もうその時点で天と地のレベル差を感じて、わたしは一番近い背後の森の奥に向かって逃げた。


実は、そうした理由はもうひとつあった。


それは、誰もが経験する、地獄の時間。


「トイレに行きたい」………………!!!!


「こんな時に限って……なんでわたしはそうなるんですか〜っ……!!────ううぅ…せめて二分間くらいは余裕が欲しいです……」


あっ、森の中なら。


やぶの影に隠れたら逃げ切れるかと言うと、全くそう思わない。だがしかしっ、それ以外に……


「臨時でトイレとして使える場所がない」!!


馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿…わたしのばかああああ〜っ!!!


「おーい、そんなところに逃げても無駄だよー」


ひえっ……!?


つまずきそうになりながら前に向かって駆け抜けるわたし。徐々に距離を詰めていくこまち。


左側に一層深い森が見える。


よし、とりあえずそこで……!!


が、現実はそんなに甘くなかった。どこからか火の玉が飛んできて、あたりは一瞬にして火の海と化した。


ありえない程に燃え盛る炎。隠れることが出来たはずの全ての死角を、無情で焼き払い、占領する。


トイレトイレトイレ……がまんがまんがまんんんんん〜〜〜……!!!


体が燃えるかどうかはもう、全く気にしなかった。わたし炎の森に飛び込み、あとはひたすらに走った────────。







「はぁ…はぁ……ここは……」


息を切らしながら、前に進む。


タイル張りの地面。見た事のある噴水。


……どうやらわたしは、がむしゃらに走り回っている間に、元の場所に戻ってきていたらしい。


「…………。」


なんだか少し安心した。


師匠の姿も見当たらない。暫くは安全のようだ。


そのせいで、さっきまで緊張でなんとか押さえつけられていた尿意が、再び蘇った。


〜~〜~〜~〜~!!!


さすがに漏らすのはまずい。はずかしい。


(だからって一度家に戻るのも、失礼ですよね……)


と、そのときだった。


ゴロゴロゴロ……と雷の音が空に轟く。それに続き、ぽたぽたと雨が降ってきた。


そしてまもなく、土砂降りに変わっていく。


当たり前だが傘をさしていないわたしの体は、びしょ濡れだった。


寒い。


「─────ハッ、あそこは……!!」


絶望の中から、ふと見えた希望の光。


膀胱くんになんとか頑張って我慢してもらい、わたしがフラフラ赴いた場所。


────さっきのあの、噴水。


中を、覗く。


うん、綺麗な水だ。


雨の日でも、透き通っている。


『空が晴れあがった時、そこにみえるの噴水の色は……』


「無理無理無理無理無理無理です〜!!! わたしは何を考えているんですか、こんなところでトイレなんかしたらせっかくの噴水が……」


頭をブンブン振るわたし。背後に誰かの気配を感じて、口を閉じた。


もしかして……。


恐る恐る、肩越しに相手を確かめる。


師匠が、後ろに立って笑顔を浮かべていた。何メートルしか離れていない。


……あ、詰みましたね。


面白いことに、いつの間にか尿意が消えていた。


おもむろに立ち上がって、振り返る。


「あやちゃん…逃げるの上手いねっ」


「……どうしよう、全くほめられた気がしませんが……あの、師匠の異能ポテンシャルって一体なんですか」


「さあね♡自分で当ててみて」


……まぁですよね。


今度はどこからか長剣をとりだしたこまち。


せいやーっといって振り下ろす。


────バキバキバキバキッッ!!!


雷の轟音に負けない音量で、地面が二つに割れる。


「ほらほらーちゃんとガードしないと!!」


「ガードしたら死んじゃいます〜〜〜〜!!!」


次々と飛んでくる、長剣の空気圧攻撃。


なんとか転がりながら、間一髪でかわす。


────これでは…避けきれない!







なぜなのか、わたしにも分からない。


そのとき、わたしの頭の中に、昨日の「悲劇」のシーンが途切れ途切れで流れていた。


何度も何度も。


何度も何度も。


高速で。




登校時にみた、まいかちゃんのダイヤモンドの爪。


─────プツッ。


放課後、まいかちゃんが血だらけになって、わたしのそばに倒れている。


─────プツッ。


白いスーツを着た男が、にやりとわらう。


──────────────────────────許せない……。


「………………っっっ!!!」


身体の中で、何が起きていたのか。


「あ゛あ゛あ゛あああああああ゛ああ゛ああああああああああああああぁぁぁっっっっっっっっ!!!!!!!!」


突然喉がちぎれそうになるくらいの大声で、わたしは叫んだ。


さすがにびっくりしたのか、こまちが一瞬ピクっと手を止める。


───これが、怒りというものでしょうか。─────まあ、どうでもいいですが。


一か八か、わたしは考えもせずに、こまちに向かってダッシュした。途中途中転びそうになりながら。


──────目の前にイメージしたのは、あの男。スカラー、と言いましたっけ。


まいかちゃん。


ずっと一緒にいたいと思っていた。


いれると信じていた。




だから、昨日まで、ずっとなんとか笑顔でいられた。


─────本当は苦しいはずだったのに。





『あやちゃんはこれからどうしたいの?』





─────もう、わかんないですよ。





気づけば、わたしは呟いていた。


「────ほころび放て────《照明ライト》────『参日悲劇スリーデイズ』…!!!!!!」


両手が、焼けたように熱くなる。シューっと音を立てていた。


十指の先から、どっと光の槍が飛び出る。互いに絡み合いながら、反発しながら、こまちを狙う。


「────え? ええええっっ!!」


ギリギリのところで槍をかわすこまち。打ち返そうと思ったのか、長剣に大きな回転をかけて振り下ろした。


─────キィイイイイイッッ!!!!


爆発するように火花が飛び散る。


周囲の森に、鋭い乱射音が響き、豪雨を駆り立てた。


「……ちょっと何よこれっ…げほっ…」


煙霧が、広場いったいに広がる。


咳き込んで、後ずさりするこまち。


「────あやちゃん!…あやちゃん大丈夫!? 何かあったの?────きゃあっ」


視界を紛らす霧の中を、光の槍が貫通する。


SpringスプリングEphemeralエフェメラル!!!」


こまちはついに反撃技を繰り出した。長剣の刃先がうねり始め、ピンク色になった。


光を剣でスパッと切ると、大きな爆発音が鳴り響いて、再び森に点火した。


次々と、乱れ打ちで光を分散させる───が、その光はやがて一箇所───こまちの太ももに集まった。


「えええっ!?」







───────バキッ。


それを真正面に受けた長剣はピキピキッとひびが生え、ついに粉々になる。




それと同時に。




大きな光の爆発が訓練所を包んだ。






「…………」


わたしは今、どこにいるのでしょうか。


暖かい。


誰かの胸の中で眠るような、温もり。



焦げるような指先の熱さも。


悪夢のような、思い出。


『何も感じなかった』。



そして気づけば───────。




霧は晴れていた。


そしてわたしはこまちの懐の中にいた。






最初は抵抗しようとしたこまちも、なにかに勘づいたのか、そっとわたしを抱き込んだ。


「…………」


ポロリと、わたしの目尻から涙が落ちる。


「あやちゃん………」


頭の回転は、とっくに停止していた。


最初の一滴についで、涙がどっと溢れ出た。


何本もの筋が顔の輪郭を伝って、こまちのドレスにポタポタ垂れる。


「………もう嫌です………もうわ゛かんないでず…!……まいかちゃんにずーっと支えられてきたから、毎日が楽しいって思え゛だんです……!!」


「……」


静かに、こまちはわたしの心の声を聞いていた。


「なのにっ……なのに─────……!!!」


最後らへんは、声すら出なかった。


……と、そんな時。



「─────辛かったね」


わたしにつられたのか、こまちも目に涙を浮かべていた。


耳元で、聞こえた言葉。


短い言葉だった。


でも、十分だった。


もう、心は静まっていた。


いつの間にか、空も晴れていた。


「───これからは、あたしが親友になる…………あやちゃんが、いやじゃないなら…」


「嫌じゃないです……!!こまちちゃんは───親友です……!」


「やったぁ」


ニコッと笑って、こまちはわたしをもう一回ぎゅっと抱きしめた。


暖かい。


こまちのほうが歳は一個下なのに、わたしのほうが小さい。なんだか、今回に限ってはすごい嬉しかった。包まれるような、感じ。


安心した。


……………ん?


安心といえば。


わたし、なにかを忘れているような……。


「……あっ……」


ぶるっと、体が震える。


緊張のあまり、膀胱くんの存在を忘れていたが、今…………安心したせいで。


「ん?…?………あやちゃん!?───ちょっ、ちょっと!!…お、おトイレはもうちょ、ちょっとまって…───待って! 待って!!!」


「……ごめんなさい……」


「い゛やああああああああああっっ〜〜!!!!」


そのとき、わたしは何となく雨が降っていてよかったな、と思った。




いかがでしたか?


ちょっと長めでしたが……


黒歴史ですね、あやちゃん(*^^*)


7話もお楽しみに!

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