4、回想と、入学と、まいかちゃん(II)
なんともう第4話;!?!?早い……
回想は第3回目に入りました!!!ぜひお読みくださいな☆
4、回想と、入学と、まいかちゃん(II)
「ちょぉーっと待ったあああああ!!!」
わたしと同い歳くらいの少女の、声。
意識が遠くなっていく。
(助けがきたのかな……でももう───わたしは…)
……フカッ……。
「…………?」
地面に、自分の体が叩きつけられるときの、あの音ではなかった。
全く痛くない。
何とか外の世界を見ようと、目を無理やり開ける。
校庭に仰向けに倒れているわたしの周りは、薄い光の膜のようなクッションが出来上がっていた。
(……クッションに……守られた?)
「大丈夫ー? って大丈夫なわけないよね」
声が聞こえる。わたしの傍らにしゃがんで、少女はわたしの顔を覗き込んだ。
「……あ…っ…え……?」
無力のあまり、言葉すら出なかった。
「にしてもすごいね!」
「…?」
「身体にめっちゃ穴空いてるのに、全然平気で生きてられる─────アッ、もしかしてあなた『も』異能力者??」
はい、底辺ですが、異能力者です。
でもそんな《大量出血しても死なない》なんて言う異能は持った覚えがないです。
「……ごむ……えあ…(訳:ごめんなさい、お話は後でしてもいいですか)」
「あわわっ、そんな無理に喋らなくていいよ!?……じゃあちょっとまっててね!!……すぐに『片付けて来るから』」
かかかかか片付けて来る!?
部屋を?
教室を?
それとももしかして──────
あの男を?
「……うぐ……う……」
「もー安静にしてて!!─────《Heal&Dream》!!」
見知らぬその少女の一言で、わたしは意識を失った。
□□□
暗い。
もう、夜ですか。
それとも……地獄ですか?
「いや、あたしん家だから!!」
パチッと目を開ける。
綺麗に整頓された部屋。特に飾り付けもなく、シンプルだ。
白いふたり用ベッド。
わたしは声の源を探るようにして右を向くと、机に乗せたランプシェードを背景に、ブロンドヘアの美少女がみえた。
ふかふかの布団。まるでホテルみたいだ。
(二人で……寝ていたんですか)
「……」
誰なのか、わたしをあの時、助けてくれたあの子なのか。
声を出そうとしたが、出ない。
「無理しなくていいから。何かいいことがあったら、このボードに書いてね」
そう言って渡されたのは、小型のホワイトボードと、ペン。
上半身を起こして、とりあえず聞きたいことを書き下ろすことにした。
それを横になったまま読上げる彼女。
「えーっと……『あなたはだれ?』───あたしの名前は夕夕こまち。いま中学三年生なの!あなたは?」
ゆうゆちゃん?あ、でもそっちは苗字だから、「こまちちゃん」か。
わたしは高校一年生だから、一つ下。
キュッ。キュッ。
「『火丁あや』ちゃん? あやちゃん? 可愛い名前〜♪」
ありがとうございます、と笑うわたし。きゅきゅっと、次の質問を書く。
『一体何があったのですか?』
それを見て、こまちは一瞬眉をひそめた。首を傾げて、
「んー、どこから説明すればいいのかしら……まあ簡単になら伝えられるけど────」
要は、わたしが眠ったあと、こまちは「ササッと」あの白スーツの男を追い返して、待ち伏せていた少人数の軍隊のなぎ倒し、ここまで身を守ってくれたのだ。
ありがたい。
ですが……
「ササッと」って────そんな簡単に倒せる相手でしたっけ……!?
こまちちゃんの実力、恐るべし。
さっきから思ってたけど───こまちちゃんって……何者!?
でもそのとき、わたしの頭の中にある人の名前が浮かんだ。
ホワイトボードに書こうとしたが、やめた。これだけは、自分の口で聞きたい。
力を振り絞って、何とかして出した声は、怪物のようなかすれた変な声だった。
「ま……まいかちゃん……は……どこ」
「まいかちゃん? 誰のこと?」
「とも…だち。あのとき、ずっと…一緒にいたんです…」
「あーあやちゃんがいた教室に?…あの後入ったけど、誰もいなかったわよ?めっちゃグロデスクな場面だったけど」
────────嘘だ。
そんな。
「いた……はずですゲホッゲホッ……うっ…」
(まいかちゃん、もう、いないのかな。)
自分の体調管理でもう精一杯だったのが、悔しい。
「ゲホッ……ううっ…」
「ちょっと、そんな喉使わないでってば!! あたしの《ヒール》を大量に受けた後にダメージが当たりすぎると、本当に治らなくなるわよ?」
体に負担がかかりすぎた。
(……さすがに、安静にしていましょう)
参日のあの槍の貫通、もし普段の心境だったら────あのときの狂いがなかったら、余裕で死んでいた。
(というかいつの間に治っていたんですか!?────待ってください…わたし、まだ生きていたんですか……?)
胸元を軽く押してみる。
…穴はひとつも無くなっていた。痕すら残っていない。痛みは残っているけど。
ツルツルの肌に戻って良かったです。
「……ん?……ツルツル?」
そういえばさっきから、少し体がスースーするような。
「もし…かして……」
恐る恐る、布団をまくり上げて自分の体を見る。
──────裸族。
「っっっっっっっ─────!?」
叫び出しそうになって、その衝動をおさえ「これ、どういうことですか」とまいちを見た。
こまちはわたしに異能をかけた後、体まで洗ってくれたみたいだ。
「もぉ、なによいまさら〜。女の子同士なんだから、いいんじゃないの」
そう言って、わたしの身体にくっついてきた。そんなこまちも、素っ裸だ。
「スリスリ♡」
っっっっっっ〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!
叫びたいのに声が出ない。
逃げたいのに力がない。
おまけに……こまちのほうが「サイズ」が────大きいッッ!!!
歳はわたしの方がひとつ上なのに。
「…………」
そこまで来ると、暴れても仕方がない。
一生を過しても出会うことがない事件に巻き込まれて、殺されかけて、そして目を覚ましたら全裸で寝ていて、色々マウントを取られる。
「ここは地獄ですか……」
「いや、だからあたしん家なんだってば!!」
□□□□
「あたしは夕夕こまち! 『ゆーゆ』でも『こまちん』でも好きに呼んでね! あと分かると思うけど異能力者です!!」
「おはようございます。……それ、昨日も聞きましたよ……あれっ、声が治ってる!」
「おめでとっ」
奇襲に遭った、その次の日の朝。
わたしは起き上がって、焼きたてのパンのするいい香りを探りながら、とりあえず一階の部屋に向かった。
もちろん、そのアンティークなドアノブをキュッと回したその奥には、夢ではない────昨日命を救ってくれた恩人、「夕夕こまち」がいた。
エプロン姿で、大きなテーブルにサラダやパンを並べている。
わたしが来ると、待ってました、と言わんばかりに飛びついてきた。
昨日は解いてあったからわからなかったが、こまちは明るいブロンドヘアをハイツインテールで整えいた。眩しい。
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元気の良さは、まいかちゃんに似てますね
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「それにしても……この家すごい────豪華ですね」
わたしは二階の寝室から、赤絨毯の螺旋階段で降りてきた。シャンデリアもいくつか見た。金縁の油絵もあちこちにあった。
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ラノベにあった気がします……!! こういう飾りに満ち溢れたご家庭は……
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「もしかして実は、やんごとなき王家の……!」
「一般家庭ですぅ!!……ささ、朝ごはんにしましょ」
─────どうしよう。
「一般」の基準が違う!!
部屋に入ってすぐ目に入るのは、向かい側に見えるアーチ型の大きい窓。
そこから灰色の空とガーデンがみえた。
……外は曇りですか。
「あやちゃんはこれからどうしたいの?」
焦げ目が入ったソーセージを一口かじって、こまちが訊く。
「え、わたしですか?」
マカロニサラダがわたしのフォークからスルッと落ちる。
「うん。だって、一人暮らしなんでしょ? 学校もないでしょ? だからこれから何か予定あるのかなって」
「え、学校はありますよ」
「もー何も分かってないんだから!!……ほらこの新聞記事みて!」
……さっきまで寝ていたから、分からないのが普通だと思いますが。
こまちに渡されたのは、新聞の一切れだった。ご親切に、見て欲しいところを赤ペンで囲んでくれている。
『市内重点校に異能力者侵入 生徒二名が行方不明』
と、しれっと書かれた大タイトルの下に、細かい情報がいらないくらいに敷き詰められていた。
読みたくもない。
(こまちが引いた下線部だけ、とりあえず目を通しておきましょう……)
『大量出血の可能性』
悪夢。
『未だ捜索中』
あーあるあるのセリフですね。
『少女が天から降ってきた、との噂』
多分、こまちちゃんのことなんでしょうね。
『市の学校を含め、周辺小企業も一時閉鎖』
…………え。
えええええええええええええっっっ!?
「……ん、わかったの?」
「はい。……学校が一時休校、と。」
「うんうん。────それで、どうするの?」
(そんな……せっかくの高校生活が…。)
「……そうですね。────ここまで来ると、改めてわたしも、自分のことを話した方が良さそうですね」
わたしは、自分の気持ちをなるべくわかりやすく伝えた。
超弱異能、《照明》を持っていること。
いっそ異能力者の圏から抜けたいということ。
あの襲撃で、幼なじみ「参日ちゃん」が太ももとほか多箇所致命傷を受けたこと。
「はぁ……はぁ……」
それを全て話し終わったわたしは、完全に息が上がっていた。
わたしが熱弁している間、こまちは一言も喋らずに、スローモーションで紅茶を飲んでいた。
話が途切れると彼女は立ち上がって、アーチ型の窓に向かって足を運んだ。
「……こまちちゃん?」
「あやちゃん」
「は、はい、なんでしょう!!」
………………………………………………。
続きはなかった。
「ど……どうしましたか?」
返事はなかった。
こまちはただただ、曇った空か、静かに眠る草花か、あるいはどこか空白を見つめていた。
何を考えているんだろう。
しばらくしてからだった。
もう一度声をかけたわたしに被せるようにして、こまちは「あやちゃん」と呼んだ。
それから。
振り返って、わたしをまっすぐ見つめた。
「あやちゃん──────あたし、今日から『まいかちゃん』になる」
えええええええっっっ!?ここここまちちゃんが……まいかちゃんになるの!?!?!?
……すみません、驚きすぎて乱れました☆めっちです!!
お読みくださり、ありがとうございます!!いかがでしたか?
こまちちゃんの豪邸がすごい? 一人暮らしなの? 2人はどんな関係になるの……!?
気になってくれちゃいました〜♪??
ではぜひ、第5話もお楽しみに!!!