3、回想と、入学と、宝石の爪②
来ました第3話!!回想に入って、2回目ですね♪※回想がちょっと長くなります……1ヶ月も前の記憶なので……っ
早速見ていきましょう!!
ときは放課後、あやとまいかは居残ってお話をしていた───────。
3、回想と、入学と、宝石の爪②
キーンコーンカーンコーン……
最終下校のチャイムが鳴る。
教室の中は、わたしと参日二人しかいない。窓際の席に縦に並んで腰掛けて、話していた。
窓の外はまだ明るい。教室の前にある時計の短針が、六を指す。
「そのダイヤのお話は、なるべく他言しない方がいいですね」
「うん。しないしない。狙われたら大変だし。───あでも……」
参日は何かを思い出したように、元の形に戻った爪を擦りながら、
「あやちゃんがピンチになったらこれで助けられるね! 敵を一回でもバッサバッサ斬ってみたくない?」
…みたくないです。
「……ピンチにならないよう頑張ります」
それだけ言って、わたしは立ち上がった。窓とカーテンを閉める。
「ひどっ」
「なんかごめんなさい、せっかく楽しそうにお話してたのに」
「いえいえ全然大丈夫よ! あやちゃんが異能を好かないって知ってるし」
「まいかちゃん……」
と、その時だった。
───────ドカッ。
鈍い金属音がした途端、教室の前のドアがこっちに向かって飛んできた。
「きゃっ」
とっさに参日の腕を掴んで、なんとか間一髪で避ける。
(奇襲、ですか!? にしても……なんで!?)
わたしたちに当たらなかったドアは円転しながら、窓に衝突した。大きな破砕音に続き、細かいガラスの破片が飛び交う。
(……なんで!? ────普通、外に向かって弾けませんか!?)
「っっっっ……!」
首周りは何とか守れた。が、手足や背中に、破片は刺さった。
ヒリヒリする。痛い。
が、そんなのは今はどうでもいい。
「────まずは安全な場所へ!!」
「…行かせないヨ」
甲高い声が、背後から聞こえた。
……えっ!? 背後!? 後ろって窓の外なんじゃ……!?
(ここって三階ですよね!?)
振り向く。
白いスーツを着た、男。下を旋風に支えられているのか、空中にフカフカ立っていた。
奇抜な髪型が、空中に渦巻く。
「おれはスカラー、よろしくねぇ。…早速だがお嬢ちゃんたち、一つ質問をしよウ……なぁんでドアは外向きに飛んだのに────ガラスは一粒残さず、中に向かって飛ぶんだろうネ……? さぁなぁぜだア?」
ふと、頭に浮かんだ悪魔の言葉。
「……『異能』持ち、ですか」
《風の向きを変える》
《物体の運動のベクトルを操作する》
《ガラスコントロール》
どんな異能でも、わたしの《照明》よりは強そうだ。
(……また力試しですか……?)
「うんうん正解。あーでも△(さんかく)かなぁ? ちょぉっとおしいけどまぁ、いいヤ───では二つ目の質問。なぁんでお嬢ちゃんたち『二人』に向かって飛ぶはずのガラスが……キミ…そう、さっきバッチリと答えてくれた……」
わたしは背筋を凍らせた。
横を、振り向きたくない。
ギリギリ視界に入らない傍らに、地獄絵図が見えたのだ。
そして、さっきの爆風とともに耳にした────うめき声と、か弱い叫び声。
「なぁんで─────キミには少〜ししかダメージなかったと思ウ?」
恐る恐る、机の下を見た。
「……!!!!」
池を作るように流れる鮮血が、わたしの足元と────参日を囲む。
「まい……かちゃん……!?」
「……へぇ、まいかちゃんっていうんだネ。優しい子だねぇ────カス能力しか持ってないくせに相手を守るなんテ」
力なく、うつ伏せに倒れている参日。白いシャツはほぼ真っ赤に染まっていた。
しかも。
─────左足が。
………………………………ない!?
参日の太ももの断面から、鮮血が絶え間なく吹き出す。その中身を見てしまったわたしは一瞬、吐きそうになった。
胃液を何とかして、唾で押し戻す。
『あの時、もしかして─────わたしは庇われていた?』
まいかちゃんが。
─────このままでは……死んでしまう!!
が、わたしはもう何も考えることが出来なかった。
────ガタッ。
力なく跪いて、四つん這いになる。
……血だらけの参日を全身で覆った。自分が今できる、全ての防衛。
言い換えると、白スーツの男に、背中を向けたのだ。
戦闘中に、絶対にやっては行けないと言われている、行為。
守れるはずもないし、こうしたら参日が死なない訳でもない。
ひょっとすると、自分も死んでしまうかもしれなかったのに。
……頭の中が真っ白だった。
ふと声が聞こえた。
「あや…ちゃん……」
絞り出すようにして、参日がわたしを呼ぶ。その口から、血が溢れていた。
「もういいです…喋らないで…」
「お願いだから、話聞い…て…」
「……」
「もし私がこれで死んじゃったら……」
─────ビュン。
「「……!?」」
まいかの言葉を遮るようにして、何かがわたしたち二人の頭上を飛んで行った。
さっき窓外に落ちたはずの、教室のドアだった。
高速で廊下側の壁をつき割って、共に粉々になる。
「おぉっと、オレのことを忘れないでくれよぉ、まだ質問終わってないだろぉ?」
背後。
あの男だ。
わたしは人生で初めて、「誰かを殺したい」と思った。
でも、それよりももっと強い気持ちが、わたしの中で爆発していた。
「まいかちゃん」。
わたしの幼なじみであり、親友であり。
かけがえのない存在だった。
……それが、赤の他人に一瞬で潰される?? 本当にわたしは、それでいいの??
「……っ」
男のことなど気にしてはいられなかった。
何とかして気を取り戻して、わたしは参日まいか)の上半身を抱きあげようとした。
(とにかく止血をしなければ……!)
「まいかちゃん……!すぐに病院へいきま……
─────っっ!?っっぐえ゛っ……」
思考停止、再び。
鉄臭い匂いが、口の中に蔓延する。
心臓ら辺が、痺れるように冷たい────────。
視界が、ぼやけてきた。
「……!?!?」
が、そう感じたと同時に、わたしは見てしまった。
────見ては、いけなかったものだった。
いつの間にか体の向きを変えて、こっちを向いていた参日。
ぐったり垂れた頭。
染料で染めたような、鮮やかな赤。
その両手の爪から、鋭い針を伸ばして…
───《わたしの胸元を貫通していた。》
「ま、……いか……ちゃ…──ぐっ」
針が、抜かれる。
どっと、血が噴き出す。
が、すぐにまた位置を変えて、十本の槍は再び身体に刺さった。
正直もう、痛くなかった。
─────「後ろにいる男が、まいかちゃんをコントロールしている」。
彼は、朝、わたしたちの会話を聞いていたんだ。だから。
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まいかのダイヤモンドの爪を狙って、やってきたのだ。
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(…………まいかちゃん………ごめんなさい……)
(あの時、自慢は後でにして欲しいとか、一言いえばよかった─────。)
「……ぐっ……」
槍と自分の体を、無理やり引き離す。
歯を食いしばって、わたしはよろけながら起き上がった。
ほぼ見えなくなった視界の中で、夕日の中の白色を探る。
「………………」
それに向かって、一歩、二歩と近づいた。
ああ、わたしは何をしているんだろう。
男に近づいても、勝てっこないのに。まいかちゃんを助ける方が、先なのに──。
「──ほほぉ、お嬢ちゃんすごいねぇ。身体に穴が20個くらい空いてるのに、まだ立っていられるもんなんだねぇ」
男は感心のセリフを述べて、拍手した。
「……なんだか危ない子だネ」
それだけ言うと、両手を大きく広げ、黒いイナズマのようなものを自分の周りに放出した。
「死」。
その一文字が、頭に浮かんだ。
ああ、結局やりたいことも出来ずに、終わっちゃうんですね。
新しく買ったラノベも、半分までしか読めていませんでした。
……ごめんなさい、家族の皆さん。まいかちゃん。
────こんな弱い異能で。
わたしは両腕を窓のふちにかけた。
こんな男になんか、殺されたくないです。
────死ぬなら、自分で。
サヨウナラ。
わたしが窓から飛び降りると同時に、男のイナズマはわたしに向かって放出された。
─────その時だった。
血みどろの視界。
緋色の濁った空。
────「ちょっとまった〜!!」とかかった、「ダレカ」の声で。
黒いイナズマも。
わたしの落下する身体も。
─────全てが一瞬にして静止した。
いかがでしたか?お読みくださりありがとうございます!!
……ちょっとグロ要素入れました☆!!
まいかちゃん、案の定やられましたね……って、あやちゃんまだピンピンに生きてる!?!?こまちちゃん、突如に出現!?
というか……「ストーップ!」で全てがとまるって、どんな恐ろしい異能をお持ちで……!?
あとでこまちちゃんに聞いてきます☆
第4話、お待ちください!!