23、旅行前日と、ばーすと、「ショーナ」①
23、旅行前日と、ばーすと、「ショーナ」①
夜。
わたし、火丁あやの家。アパート「水車」、七階の一番右端。
「ただいまです…って、誰もいませんよね」
「さすがにいないだろ。お邪魔しまーす」
異能持ちの老人襲来に。兵隊包囲に。最近はみんな、あまりちゃんと休めていない。
だからある程度落ち着いてから、ビーチに行こうと決めたら───……双子と出会って、もう一ヶ月が経っていた。
そして今日は、その旅行の前日なのだ。
わたしを先頭に、不死鳥少女ばーす、お嬢様こまち、双子純、素が玄関の奥に入っていく。
「すみません、やっぱりこの人数で入ると狭いですね……」
地面に散らかるノートやお菓子の袋を橋に退かす。
純さんたちと出会ってから、そういえば一回も掃除していませんね……。
「一日くらいなら大丈夫だろ……ん、この音は…」
純は奥の部屋を指した。寝室だ。
確かに耳を澄ませば、かすかに火花が弾ける音がする。
───パチッ…バチバチッ……。
……これは、扉を開けるべきなのだろうか…。嫌な予感がしてきた。
「あっ、ショーナちゃんだ!!」
突然ばーすが、見えないはずの奥を指して声を上げた。
「「……しょうなちゃん?」」
またまた、初めて聞いた名前だ。
「うん、前の、お友達」
(…………………………………………今は?)
聞いてみたい気持ちを抑えて、わたしは扉をガラッと開けた。
そこにいたのは……。
ベッドの上で仰向け大の字になっている、見知らぬ少女。ばーすと同い年くらいだろうか。わたし達が近づいても、目をじっと瞑ってピクリとも動かない。
時々パチパチっと空中に火花を放つ。
ベージュのかかった、白い髪。ふわっとしたまろ眉が、目にかかる前髪にうっすら隠れる。ローツインテの毛先が鋭く二三束に分かれている。
だが何よりも気になったのは、黄ばんだ包帯に巻かれた、両手両足だった。
(ちょっと前まで、管で繋がってたんだろうな……)
と純が私の耳元で囁く。
(それは…どうしてわかったんですか?)
「勘だ」
…………。
勘、かぁ。
つまり、包帯を解いたらその中は……穴?
(うぅ……想像してしまいました…)
こまちを見る。
じっとそのまろ眉の女の子を凝視して、何かを考えているようだった。
「こまちちゃん、もしかして知り合いですか?」
「んー。知り合いではない気がするけど……でもどこかで見たことあるような…………」
どこだろう。
すると、その時。
さっきまで黙っていたばーすが、少し全身に火を纏い、ショーナと呼ばれる少女に近づいた。なぜか、ちょっと怒っている。
「ずーるーい〜〜〜!!」
ばーすは、ショーナの耳元でおもいっきり叫んだ。アパートが少し振動する。耳が痛い。
(……さすがフェニックスをまとった人間ですね)
だが、反応は返ってこなかった。
それを見て、ばーすがショーナのお腹をポカポカ叩き始める。可愛い。
「…………」
だがしかし、こちら側は相変わらずの不動。
そしてついに……
「えいっ」
ばーすはショーナの両足をガシッと掴んだ。ズズズッとベッドから無理やり引きずり落とす。
さすがに、眉をひそめたショーナ。ゆっくりと目を開けて、
「いおんはお眠なの…起こさないでちょうだい……」
(あれ、いおん……って言いました?)
「「……!?!?」」
そのセリフに双子が反応したのは、気のせいだろうか。
「もー、ショーナちゃん…ここはママのベッドなの!!」
(なんていい子……!!)
────むにっっ。
ばーすはショーナの頬っぺをつねった。
それから、自分がベッドに捩り上って───大の字になる。五秒もしないうちに、ばーすは眠りに落ちた。
…悪い子だ。




