2、回想と、入学と、宝石の爪①
はわわっ!? ついに回想話1回目がきました!!
あやちゃんの幼なじみが出てきます!さぁ、一体どんなポテンシャル持ちなんでしょうか……!?
2、回想と、入学と、宝石の爪①
《約1か月前》──────
「ねねねねねね!! 聞いて! ねえあやちゃん歩き読書を一回やめて聞いて!!」
「はいはーい。なんでしょーか」
「……って言いながら読んでるしっ」
春先の陽射しが、ポカポカと体を暖める。
わたし、火丁あやは、幼なじみの「参日」と学校に向かっていた。
今日は待ちに待った、高校の入学式だ。
一生懸命頑張って勉強して、その時期は愛しきラノベも泣き泣き手放して、最後は一人暮らしをしてまで入った学校。
────緊張と、愉しみの二重奏。
だから初日から知っている人がいると、なかなか心強い。
わたしがライトノベルを読み歩きしていると、そばにいた参日ちゃんに思いっきりほっぺを──────
ガブッと噛まれた。
「ッッッッッ!!! 痛っっっ…!!」
涙が出るほどの激痛に、わたしが本を手放すと、参日はそれをすばやくキャッチして、
「ラノベ没収!」
と頬を膨らました。
…ちぇっ、いいとこだったのに……。
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※いいとこ・・・・・・ラノベの主人公が間違えてプール後の女子更衣室に入ってしまうシーン
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「はいはいごめんなさい。どうぞ話してくださーい─────五文字以内で」
ごっ、五文字!? と呆れる彼女だが、すぐに気を取り戻して、人差し指を立ててウインクした。
低いところで結ばれたツインテールが、ひらりと舞う。
「ポテンシャル、得たりっ☆!」
……めちゃくちゃ五文字越えてますけど!
だが、そんなツッコミをする余裕もなかった。わたしはポカーンと口を開けたまま、参日を見つめた。
「異能」。
日本、否、世界中で流行している、現象。
とある日突然、あるいは生まれた時に、特異な能力が体に賦与されるのだ。
前話した通り、私の異能は、
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《照明》
『照明器具類を身体から、体力のある限り生産することが可能』
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とかいう、日常ですら使うか微妙な能力。
いくら一人暮らしといっても、家に照明がないほど貧乏では無い。
さて、参日さんは一体どんな異能を得たのやら。
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やっぱり典型的な「操作」とかでしょうか。
まあ何にしろ照明生産ではなさそうですね。
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「……ちょ、ちょっと反応薄くない!?」
「ご、ごめん…一瞬反応の仕方がわかりませんでした────まいかちゃん、改めておめでとうございます!」
パチパチパチパチ。
わたしは素直に拍手した。
すると彼女は「ありがとっ」と嬉しそうに笑った。
「……で、多分────もっと先にお話があるんですね?」
「さっすがぁ♪その通り!」
そう言って飛び跳ねながら、参日は駆け足で少し先まで行って、振り返った。
「ではではっ、ちょいっとお披露目会!」
「え、ここでやるのですか?」
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誰かに見られても大丈夫なんでしょうか……
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「だぁいっじょーぶだって。安心して、そんな暴れないからぁ。ほら、あまり人いないし」
「心配ですねー……」
参日が、両手を大きく広げる。
十指の先が、うっすら光る。
「綻び放て、《クリスタルネイル》!!」
その言葉が下りた瞬間、彼女の爪から糸のような光が四方八方へ放たれて、乱射して薄煙を立てた。
「…………!?!?」
────暴れまくり────っ!!
両手にギランと光る、長い槍のような爪。
……その爪は半透明。
テレビか高級宝物店頭で、見たような気もする「アレの結晶」。
「どう!? すごいでしょ!?」
「すごいです……! もしかしてこれって宝石ですか!?」
「うん。ダイヤモンド」
─────あ、億万長者の誕生だ。
毎日、《クリスタルネイル》でダイヤモンドを生産し、お金持ちに売る。
……なんて実用的(?)なっっっ!!
目を輝かせて驚くわたしをみて、参日は満足したように、ダイヤモンドの爪が生えた両手をブンブンと振り回した。
「いいでしょこれ!? いつでもサクッと人が切れる」
────あ、そっち!?
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その時のわたしたちは、まいかが命を狙われていることに気付かなかった……
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街裏。湿った日陰。
ガスマスクを被った男が二人、重そうな銃を掲げていた。
しばらくしてから、その片方が手に握るスピーカーに向かって低音を送った。
「#697-69*@、%@8@#38#@!!!90953293538?@#85@」
すると間が空いて、掠れた音声が帰ってくる。
『そうか……クククッ……ダイヤの少女、か。そうだな─────スカラーよ、追跡頼む。死なない程度に手加減するんだぞ』
「57=@?@35@4@%9=9!89=748?@#7=@……??」
『どこにそいつを送るか?……俺の水槽の中にポチャン、でいいよ……クククッ……あとで拾いに行くよ。……俺らの県も繁盛しそうだねぇ……!』
「?97+85948!9#697-69+@……?」
「なるほど? もうひとりいるのか……どんな異能使ってるのだ?────そうかそうか、ライト生成か。……なるほど、限りなく弱いのか。そいつは首だけ持ってきてくれ……今夜はそれで酒でも飲もう……クククッ……」
……──────ぷつっ。
スピーカー音が、切れる。
地面に現れる水色のスクリーンの地図に、標的が赤く点滅して表示される。
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予想目的地──『凌坂女学院』
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「…………………………」
二人の男はそれを確認すると、その場で姿を消した。
2話目、読んでいただきありがとうございました!!
いやぁまいかちゃん、恐ろしい異能ですね…チョットホシイ
スカラーって誰!?強いの!?どうなるの!?……そう思った方はぜひ、次のお話をお待ちくださいな!
《現時点の登場人物など》
人物ーーー異能名───説明
(※なお、未開拓地は『?』表示されています)
・あやーーー《照明》───照明生産
・こまちーーー《????》───????
・まいかーーー《???????》───爪等の結晶化
・スカラーーーー《????》───???