16、豪邸講習と、「巨人」と、フェニックス再び①
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16、豪邸講習と、「巨人」と、フェニックス再び①
黒板の横に立ち、おどおどする素。
その真正面に机を並べて座る、夕夕こまちと、わたし、火丁あや。
豪華に燭台、油絵を並べた部屋の後方で、腕を組んで壁に寄りかかる純。
手首に巻いた包帯や、左頬に貼られたガーゼは、こまちとの「賭けの闘い」で覆った傷だ。
落ち着いた顔をして、
「素ー。早く始めろー」
「むっ、無理〜〜〜っっ!! こまちちゃんは中学生であやちゃんは高校生で……同時にはきついよぉ」
「しっかたねぇな。おれが手伝う」
……最初からそうすればいいのに……
約六日後には、ビーチイベントが待っている。
その間に、放ったらかしにしていた勉強も頑張らなきゃですね。
学校に行けない代わりに、わたしとあやは双子、「絲葉素」「絲葉純」の「特別講習」を受けていた。
────ありがたいですね。
結局、素がわたしを教え、純はこまちを教えることになった。
「「こまち/あやちゃん、自分の苦手分野とかってわかる?」」
声が重なる。
「「あ、ごめん。先に話して」」
再び、重なる。
「「……じゃあ、こっちから…」」
「……」
「……」
さすが双子だ。
……にらめっこするだけで、授業がなかなか進まない。
「うちら、上の階に行くね」
素はそう言って、わたしと一緒に上の階───図書室で授業を始めることにした。
正式的な図書室ではなく、こまちの父親のコレクションなどが詰まった場所なので、あまり広いところではない。
隣り合わせで、高そうな木造の椅子に座る。
「では改めて……あやちゃん、どの教科が苦手?」
「は、へ?……えーっと……」
「?」
わたしにほほ笑みかける素。
紫ふちの眼鏡に、OL風のロングスカート。安らぎの母性を全身から醸し出す。
なかなか返事を返さない、わたしの様子が心配になったのか。
膝に乗せて、プルプル震えるわたしの両手に自分の手を添えて……
「どこか体調悪い……?」
〜〜〜〜〜〜〜〜っっっ!!!
きっと、わたしの顔は今真っ赤なのだろう。
「……す、数学が苦手です…」
「……んーもっと詳しく」
ここと、ここと……と教科書をめくりながら、なんとなくここら辺というのを指さした。
ほおほお、と頷きつつ、「あー、ここ難しいよねー」と納得してくれる素。
それから、可愛い筆箱から六色のラメペンを取り出し、
「ではまずは…………国語からやりましょっか☆」
「……?? えっと…さっき言ったところを教えて欲しいんですが……」
「そうだね────あやちゃん英語できる?」
「あの…─────平面図形が…」
「古典は助動詞がやっぱ大切だから、そこから…」
「もしかして数学苦手ですか!?」
□□□
「まだ授業始まらないのー?」
「……」
椅子の前足をブラブラさせて、バランスをとるこまち。
その対面で黒板に体重を預けて、腕組みをする純。
「……お前に教えることはもう、ない」
「師匠が死ぬ前に強くなった弟子に言うセリフみたい」
「おれはまだ死なないっ!!」
こまちの机を両手でバンッと叩いて、純が反対する。
「あたしも弟子じゃあっりませーん!」
挑発の目を純に返す。
「弟子とか言い出したやつは誰だよ」
「さぁ誰でしょーねー」
「ぐぬぬーっ……!!」と額をくっつけて、睨み合う二人。
ついに諦める純。
「……中学生のくせに生意気な……いいだろう、『大人の授業』をしてやろう───ただし怯んだらお前の負けな?」
「……??」
言い返そうとするこまち。そこに、純が言葉を重ねる。
「───まあこまちは『まだ一回しかおれに勝ってない』からたぶん『いやだー』とか言って断るんだ・ろ・う・け・ど……?」
と、にやりと笑った。
「はぁ───ッッッ!?!?」
その罠の言葉に、完全に引っかかってしまう、こまち。
─────ガタッ!!!
カッと熱くなって、勢いよく立ち上がる。
「ありえない!マジでありえないわっ!!……いいもんねっ、やってくれなかったら、昨日純が『真夜中にしてたコト』を素に言っちゃうもんね〜〜〜だ」
「おまっ……」
一瞬顔を赤らめてムキになる純だが、すぐに状況不利と判断して、
こまちに背中を向けて、チョークを一本握る。
「……じゃあ説明を始めるぞ」
「あっ、自分のことを棚に上げた!!」
「さぁなんのことでしょーねー」
と、その時だった。
地面が、ぐらっと揺れた。
「「─────っ!?」」
何とかバランスをとる純とこまち。
目を見合って、部屋から駆け出した。
「きゃっ!?」
階段を下りてきた素とわたし。四人はばったりあって、これで全員が集合した。
地面が再び、振動する。
「地震、じゃないな…」
「わたしには…足音に聞こえました」
「……巨人ってこと!?」
巨人……? ここってファンタジーな世界ではないはずだけど……
「異能ならー、十分ありえるねー」
素が頷く。
三回目の、揺れ。四回目。五回目。
だんだん、私が言った通り、足音みたいになってきた。
「とりあえず─────」
「「「「───屋上へ行こう……!!!」」」」
次もお楽しみに!




