14、夏と、異能の糸と、賭け
さぁ、双子はどんな作戦を考えついたのでしょうか……!?
というか、純強すぎませんか!?
ぜひお読みくださいな(*´艸`)
14、夏と、異能の糸と、賭け
わたしは───死んだの、かな。
冷たいなにかに、横たわった自分の体。
何かが重くて、動けない。
目を、開けるべきなのでしょうか。
痛みも、感覚も、ない。
─────ここは、夢?
「……お、目が覚めた〜?」
朦朧とする視界に、綺麗な女の人が映る。
「……」
彼女はわたしの背中を優しくさすりながら、問いかけてきた。
何があったのかは分からないが、言えることはひとつ────
『わたしは、まだ元気に生きている』。
よかった。
「まだ、背中痛いー?」
痛いどころか……
わたし、心臓やられてませんでした……?
周りが少しずつ見えるようになって、やっと状況を把握する。
「─────!!?」
思わず、目を見開く。
綺麗─────というより神秘的だった。
電車の中。それは間違いないはず。
だが、わたしが倒れている辺りから────無数の光る糸が出ていた。
白。紅。虹色。そして黒もあった。
どれも、明るさに偏りはあるが、確実に光っていた。
そのイルミネーションのような光にほのかに抱かれ、わたしの乗っている車両は少なくとも、意味ありげに明るかった。
完全に、意識が戻ってきた。
「……これは……」
目の前にいたのは、素。
「ごめんねー、びっくりさせちゃったぁ? ……これはね、純の異能だよぉ」
わたし様子をを心配した顔で伺いながら、素は説明した。
「なんの……ポテンシャルですか」
まだ脳は起きていないのか───流れに乗って、わたしは咄嗟に訊いた。
「ん、それも一緒に───お話するね」
ニコッと笑う素。
さっきのような怖さは、感じなかった。
「『ツ・ム・グ・セ・カ・イ』───これが、純の異能。『ホ・ド・ク・セ・カ・イ』が、うちの異能」
「……へぇ…」
純は、ゆっくりと、そして丁寧に説明してくれた。
透き通った様な女の人の声だったから、聞きやすかったのかもしれない。
────男だけど!!
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純の異能
『ツ・ム・グ・セ・カ・イ』
人と人、物との関係を糸として、見える化させる。
糸を新しく生産する──人と人、物の新しい関係を作ることが出来る。
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糸の色はその関係によって変わり、例として、
深い愛情ーーー濃い赤色系統
友情ーーーオレンジ系
知り合いーーー薄い白色
恨み恨まれーーー濁色
などがある。そして、
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素の異能
『ホ・ド・ク・セ・カ・イ』
見える化した糸を自由に調節したり、切ったりすることができる。
糸の色を変えることも可能だが、大変体力を消耗する。
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「……不思議な異能ですね、お二人とも」
横たわったまま、呟く。
「ありがと〜っ」
「でも、その異能を使ったら───わたしの異能が消えるのですか」
「うーん、わからない。とりあえず、試してみよーって思ったの」
気になったことを、まずは言ってみる。
「あの……こまちちゃんは」
「外で元気にしてるよー。たぶん楽しく戦ってるはず」
「えっ、誰とですか。───まさか……」
「うん、純と。────たぶん、手加減して、死なない程度にはしてくれていると────思うけど」
「それ一方的にやられてません!?」
純と素の作戦。
名付けて、「異能遊離作戦」。
①わたしとこまちを、ともに瀕死状態に追い込み、大量に血を流させる。
すると、二人の間に新しい関係の「糸」が生まれる。
②素の操作によって、私側の「異能の糸」を切る。
すると、「異能の欲」が強いこまち側に、「友情の糸」を中継ぎにして、異能が移る。
「────かもしれないなぁ、って思ったのー」
最後まで説明しておきながら、曖昧にしめる素。
(……楽観的ですね……)
「成功する確率は……?」
ステップ①は無事にクリアし、『ヒール』を受けて次の段階、ステップ②に移っている。
素は器用に糸をかき分けながら、
「成功『する』か『しない』かの二択だから、50パーセント」
「運試しと変わらないじゃないですか…!」
「あやちゃん、────100パーセント成功する話って〜、成功しないと同じだからね?」
「…………?」
理解が、追いつかなかった。
わたしは「なるほど……」とごまかして、目を瞑った。
□□□
「おはよう〜。あやちゃんとこまちちゃんはゆっくり休んでてね」
「実験」の次の日の朝。目を醒ますと、わたしは布団の中にいた。
そばで、こまちがこっちに背中を向けて、まだ眠っている。
整頓された部屋。ここは確か昨日、四人で集まって、素のブラウニーをいただいたところだ。
窓の外から、少し強めの日差しが差し込む。
もうそろそろ、夏ですか。
「……おはようございます。───昨日はありがとうございました」
上半身だけ起こして、軽く会釈した。
「いえいえ全然。お役に立てたらよかったですー。───はい、ゼリーどうぞ」
エプロン姿の、素。
わたしに星型のゼリーを一個渡した。
それから、こまちちゃんの方に近づき、
「はい、こまちちゃんも、ゼリーどうぞ。気持ちが和らぐよぉ〜」
─────バッ。
すると目にも見えない速さで、こまちは布団から手を伸ばしてゼリーを取って、無言で布団の中に潜った。
「ちょっと、こまちちゃん、失礼ですよ────」
「んーん、平気。……あやちゃん、ちょっと一回に来て欲しいな〜」
「えっでも、こまちちゃんが……」
「いいからいこ〜」
「えっ。あ、え……」
そうして、素に半ば強引に引っ張られて、わたしは部屋から出ていった。
□□□□□
三階、部屋の中。
小さく膨らんだ布団の山が、ふたり用ベッドの片方に寄ったまま、びくともしない。
───コンコン。
静かに、ボーイリッシュな女子大学生が部屋に入ってきて、ベットの端に腰を下ろした。
「こまちーおきろー」
「……」
返事はない。
純は布団の山を撫でた。
「あやが待ってるぞー」
その言葉に、ぴくっと反応するこまち。だが、動こうとはしない。
「……待ってるわけなんかないわ」
(拗ねちゃったなぁ……)
「どうしてそう思ったんだ?」
「……昨日、あんたに負けたから。────もうあやちゃんは…あたしなんかよりあんたの方が好きに決まってるわ」
涙を我慢している声だ。
「あやはそんなやつじゃないと思うがなー……」
やれやれと、ため息をつく純。
(こまちは本当に……かわいいなぁ。)
こまちが何も言わなくても、純には全てが見えていた。
異能、『ツ・ム・グ・セ・カ・イ』。
人と人、物との関係を糸として見える化させる異能。
その糸を誰が見えるのか、それは純次第なのだ。
(※素はちなみに、他の人に見せることは出来ないが、自分自身は見える)
こまちとあやの間に繋がれた、『友情の糸』。
濃いオレンジで、ほかのどの糸よりも太かった。
(出会って三ヶ月と言ってたっけ。……すげぇな。そんな短い間で、もうこんなに育っているとは)
「ほーら、朝ごはん用意したぞ」
布団を試しに、引っ張ってみる。
「いやだっ」
「ずっとそのまま寝てるつもりかー? 」
中を覗く。
「……あ……うぅ……」
必死に声を出すのを我慢するこまちの両目から、絶えず涙が溢れ出る。ポロポロと垂れて、ベッドのシーツを濡らす。
顔を真っ赤にして、目を合わせようとしない
(うげっ、ガチ泣きかよ……昨日やりすぎたかな)
「……昨日はごめんな、ちょっと……手加減すればよかった」
「それはいやなの───ッ!!!」
こまちはガバッと起き上がって、ベッドの上に立った。
拳をぎゅっと握って、頭を横に思いっきり振る。
ビシッと純を指さして、泣きながら、
「あたしは────本気で戦って勝ちたいのッ!! 負けたくない……負けるの、嫌っ!!! あやちゃんにガッカリさせたくないのっ!!!────きゃっ!? ……ちょ、ちょっと何してるのよっ!?」
純は抵抗するこまちをひょいと持ち上げて、「まあまあ」となだめた。
「こまち」
「なにっ」
抗うにも力が足りず、諦めて、こまちは純を睨んだ。
ムスッと頬っぺを膨らませる。
(やっぱ可愛ええ……)
「……おれに、勝ちたいか?」
「それは……勝ちたいけど??」
「…でもおれが本気出さないのは…嫌なんだよな?」
「嫌だけど??」
純は口角を上げた。
こまちをそっと、ベッドの横に座らせた。そして、人差し指でこまちの顎下を撫でながら……。
「では─────。一つ、賭けをしようか」
お読みくださりありがとうございます!!
いかがでしたか?
異能がふたつ増えましたね……
純とこまちは一体どんな賭けをしたんでしょうか……!?
次もお楽しみに♪




