表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
長政記~戦国に転移し、家族のために歴史に抗う  作者: スタジオぞうさん
第一章 家督の継承と織田家との同盟

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

27/93

二十六 二人の悩み

1561(永禄4)年10月上旬 近江国坂田郡 鎌刃城の近く

浅井長政

 どうにか、お市を救い出せた。

 無理をいって自分が国境まで行った甲斐もあったかな。美濃領に踏み込む決断は家臣には難しい。

 それにしても本当に嫁入り行列を襲うとは。野盗の仕業に見せかけても、斎藤家は怪しまれ、評判が落ちるだろう。そうまでして織田家と浅井家の婚姻同盟を止めたかったのか。

 あるいは代替わりで家中の掌握ができない中、西美濃三人衆が独断でお市の通行を許可したことが許せなかったのか。

 状況は読み切れないが、歴史改変の結果、いろいろな要素が絡み合ってお市は危険な目にあったと思う。無事に救えて本当に良かった。

特に橘内には感謝だ。美濃の情報を的確に集めてくれたから、危機を察知できた。関守を買収したのも見事な手腕だった。大人びている橘内は同年代のように気楽に話せるのも嬉しい。本当に、何とか家臣にしたいな。

 いろいろ考えることはあるが、気が付くと、あの織田の若武者のことを考えている。

 転移前も転移後も、男に興味はなかったのだが。

 戦国時代には男同士の恋愛は衆道と呼ばれ、広く受け入れられていた。

 そうはいっても、お市との結婚を目前にしているというのに…。


お市

 織田家の護衛に加え、浅井家の方たちにも守られて鎌刃城に向かっています。

 あれだけ苦戦したのに侍女たちの犠牲が少なく、安堵しました。

 倒れた敵の中には、手裏剣が刺さっていた者もいたと聞きました。どうやら忍びが助けてくれたようです。一体どこの忍びでしょう。

 鎌刃城についたら侍女と入れ替わり、お市に戻ります。そしてお家のために長政殿に嫁ぎます。

なのに、ついあの大柄な武将のことを考えてしまいます。圧倒的な武勇で敵を追い払い、皆の命を助けてくれました。笑った顔に、太陽のような暖かさを感じました。

 もうすぐ嫁ぐ身だというのに、私は…。


山中橘内

 いや、面白いものを見た。大将とその姉の豪勇ぶりは人外の域に達している。槍の又左もそうだが、あんな巨体で動きも俊敏だから、まるで鬼だな。

 あれほどの豪勇なら、戦場の空気を一人で変えられる。まして当主なら、偉そうになるのが普通だ。

 だが大将は、近江に戻るとすぐ俺に礼を言った。情報収集と事前工作の重要性がわかっている。関守の買収など、古臭い考えの武士なら卑怯だの男らしくないだの言いそうだが、大将は感心していた。大将の近くにいると、危険もあるが、楽しそうだ。

 ところで、大将と姫の様子が変だな。まさか互いの正体を気づいていないのか。

 浅井一族にあんなでかくて凄い武勇の男は他にいないし、織田家にあんな美貌の武将もいないんだが。

 ときどきちらっと相手のことを見ながら溜息をついてるのはなぜだ?

 これから結婚するわけだが、俺から見ても似合いの夫婦だ。何を悩んでるのかね。


実宰院

 どうにか救援が間に合い、重畳です。しかし山中橘内は本当に優秀ですね。どうにかして当家の家臣に欲しいところです。

 ところで、新九郎と市姫の様子が変ですね。

 まさか互いの正体がわかっていないのでしょうか。二人とも何やらつらそうです。私から事実を話したほうが良いでしょうか。まあ、もうじき結婚するのだから放っておきましょう。

 しかし、二人とも一目ぼれなどということがあるのですね。市姫は政略結婚に出され、道中は危ない目にも遭ったので、同じ武家の女性として良かったなと思います。

 しかし何となく面白くありません。

 どこかに私に似合う、大きくて良い男はいないでしょうかね。

 出家しているこの身では、今さら伴侶を見つける訳にもいきませんが。


1561(永禄4)年10月中旬 近江国 小谷城の近く お市

 駕籠に揺られて、小谷城の近くまで来ました。

 尾張から持ってきた駕籠は壊れたので、遠藤殿がご親切に奥方の使われているものを貸してくれました。遠藤殿は武骨ですが誠実そうな方で、お迎え役としてこの行列を先導してくださっています。

 遠藤殿は長政殿の子どもの頃の話をしてくださいました。遠藤殿がいかに長政殿を大切に思っているか伝わってきました。ただし、最近は言うことをきかず危ないことをされると嘆いておられました。野良田の戦いで怪我をされたときのことでしょうか。

 幸いにも尾張から持ってきた着物は無事でしたし、嫁入り道具も大半は無事でした。

 丹羽殿は殿の妹御の嫁入りなのに、このような貧相な行列ではと嘆いていましたが、命があったのだから良かったと私は思います。

 あの大柄な武士のことは忘れます。

 私の気持ちがふらふらしていては、美濃で死んだ供の者たちに顔向けできません。

 織田家と浅井家の同盟のために、しっかり役目を果たしてみせましょう。


近江国 小谷城 浅井長政

 今日はお市が小谷城に来る。

 あの織田の若い侍のことは忘れよう。

 転移した当初は、どこか他人事のようだった。長政の記憶は受け継いだものの、見ず知らずの者たちが家族や家臣といっても、どこかピンとこなかった。

 だが一年以上が経ち、自分の物である記憶も増えてきた。

 もう他人事ではない。

 転移前に歴史の話として、姉川の戦いで浅井が負けた際、遠藤直経が戦死した三田村左衛門の首を手柄首と偽って信長に謁見し、信長を殺そうとしたという逸話を聞いたときは、戦国武将は激しいなあと思っただけだった。

 だが今は、彼らをそんな目にあわせるわけにはいかないと強く思う。なぜか長政の体に意識が転移してしまった俺だが、今は浅井家の当主だ。個人の恋愛感情など捨てるべきだろう。

 戦国時代の結婚式は三日かかるようで、今日は新婦のご休息の日だ。小谷城にしつらえた新婦のための部屋でお市は休む。

 お市と対面する結婚の儀は明日だ。


拙作をお読み頂き、ありがとうございます。

仕事をしながら毎日更新することは難しく、ストックも少なくなりましたので、一日おきに更新させて頂きたいと思います。次回更新は19日(火)の予定です。

引き続き、宜しくお願い致します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ