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平和~愛する人との約束~  作者: 柿崎零華
3/5

第3話~僕は君を守る~

岡部が七尾を近くの誰も来ない場所に連れてきて


七尾「なんだよ。こんな場所まで連れてきて」


岡部が少し苦い顔をしながら


岡部「中嶋さんのことなんだ」


七尾「中嶋さん?。中嶋さんがどうかしたのか?」


岡部「あの人最近、元気ないと思うか?」


七尾は思いだしてみた。確かに、中嶋が一人の時を見たことあるが、実は誰にも言わなかったが、泣いているところを見てしまったのだ。それもこの一か月以内の出来事だった。

しかし、そのことは言えずにいて、思わず言ったのは


七尾「最近?普通だと思うけどな」


岡部「ここだけの話だぞ。彼女の旦那知ってるだろ」


七尾「確か、広島放送局の局長だろ?」


岡部「あぁ、最近元気ない理由分かったんだよ。彼女の旦那、かなりの暴力男らしい」


七尾はそれに唖然した。最初は戸惑いながら


七尾「そ、それってどういうことだよ」


岡部「放送局の友人とさっき会って聞いたら、前の岡山放送局をなんで辞めたか、放送局で噂になってるらしい」


七尾「噂?」


岡部「あぁ、それはな。前の奥さんへの暴力がバレたからだよ」


七尾「は?」


岡部「どうやら、岡山の放送局の局長に、例の事が耳に入って異動になったらしい。でもそうなったら、辻褄があうだろ。どうして放送局に務めないで、こんな局から遠いここを選んだか」


七尾はすぐにわかった。日々暴力を振られてるか、それに近いことをされているかどっちかで一緒にいたくない、だから、ここを選んだのだろう。それを岡部に伝えると、彼は頷き


岡部「それに、夏場なのに、いつも長袖って変じゃないか」


確かに中嶋は、この夏場暑い中も一日外さずに、長袖長ズボンを着ていた。それは七尾は気にしたことなかったが、言われて見ればおかしい話だ。


七尾「まさか、傷が?」


岡部「そういうことだ。それより心配なことが一つだけある」


七尾「なんだよ」


岡部「放送局の友人からの話だと、子供がいるらしい」


七尾は目を見開いて驚いた。子供がいるなんて聞いたことなかったからだ。てっきり子供はいないと思っていたからだ。七尾は気になり、必死になって


七尾「いくつなんだ?性別は?」


岡部「そんな必死になって聞くなって。性別は男。去年生まれたばっかりだ」


七尾「お前が心配してるってまさか。その子にまで危険が及ばないかってことか」


岡部が頷き


岡部「まぁ、俺たちが人の家に首突っ込むほど、俺たちは偉くない」


七尾は黙り込んでしまう。


岡部「俺そろそろ仕事戻るわ。これ誰にも言うなよ」


岡部は仕事場に戻っていった。七尾は愕然としてしまった。まさか中嶋に子供がいる事、それどころか夫は暴力男。一つの自信を持ち始めた。

「俺が幸せにすると」

夜・仕事が終わり、次々に帰宅していく同僚たち、しかし、七尾と中嶋は最後まで残ってしまった。

七尾は今だと思い


七尾「中嶋さん」


中嶋「はい」


中嶋がいつもの笑顔で返事をした。


七尾「これどこから聞いたとか、なしね」


中嶋「え?」


七尾「子供いるんだって」


中嶋が驚いた顔をした。それもそうだ、誰にも言ったことないからだ。


中嶋「どうして知ってるんですか」


七尾「だからそれはなしって」


明らかに動揺した口調で


中嶋「確かにいますよ。息子ですけど」


七尾は話を変えて


七尾「なんでこんなに暑いのに、長袖来てるんですか?」


中嶋「そ、それは」


七尾「ごめんなさい」


七尾は中嶋の袖を触り、捲りあげた。そこにはあざだらけだった。


中嶋「・・・」


七尾「余計なお世話だと思うけど、離婚したほうがいいと思うよ」


中嶋「何言ってるんですか?」


七尾「多分そのあざは、旦那さん受けた暴力でしょ」


中嶋は少し汗が出始めていた。七尾は優しい口調で


七尾「このままだったら、お子さんにまで危険が及ぶよ」


中嶋は立ち上がり、鞄を持ち


中嶋「余計なお世話です。離婚なんてできるわけないでしょ」


少し強めに言った。しかし、七尾は冷静に


七尾「でもさ。放送局の局長ってそんなに偉いの?」


中嶋「え?」


七尾「別に軍人さんじゃないし」


中嶋「でも、放送局は」


七尾「分かってる。確かに放送局は、軍人さんと繋がりは深い。でも伝達をちゃんとする放送局の局長が暴力男だったら、放送局どころか軍人の評判が悪くなる。だったらその前に手を打つ」


中嶋「でも、例え離婚したって、私どうしたら」


七尾「俺が守るよ」


中嶋「え?」


七尾は笑顔で


七尾「俺ってね。子供が一番好きなんだ。でも、俺生まれつき肺が弱いから、子供に遺伝してほしくない。でもやっぱり子供が恋しい」


中嶋がずっと七尾を見つめ続ける。そのまま七尾は鞄を持ち、帰っていった。

そのまま、中嶋も少し考えながら、自宅に戻っていった。

玄関を開けると、靴が一足おいていた。牧男が帰って来てるんだろう。急いで居間に向かうと、そこには酒を飲んでいる牧男の姿があった。


中嶋「ちょっと何してるの」


牧男「なんだよ」


結構の量を飲んでいた為、泥酔していた。中嶋は日本酒の瓶を手に取り


中嶋「こんなに飲んで。いつもは私より後に帰ってくるのに」


牧男「うるせぇんだよ。帰って来る来ないは俺の勝手だろ」


すると、寝ていたんだろう。幼い息子の憲治が四つ足で居間に入ってきた。


中嶋「お酒しまうよ」


牧男は酒を奪い取って


牧男「何するんだよ」


中嶋「憲治が飲んだらどうするのよ」


牧男が飲んでいた湯飲みを投げ始めた。それは中嶋の横を通り過ぎ、近くにいた憲治のすぐそばに落ちて割れた。憲治は運がよく怪我はしなかったが、牧男は怒りながら、2階の部屋に行った。

中嶋は思った。こんな人に憲治を任せられないと。ふと、七尾の姿が思い浮かべ、ある決心を付けた。

翌日朝、原爆投下まであと4日の8月2日。いつも通り、広島産業奨励館の入口から入ると、後ろから、自分を呼ぶ声がした。振り向くとそこには七尾の姿があった。七尾は笑顔で


七尾「おはよう」


中嶋も笑顔で


中嶋「おはようございます」


中嶋は今だと思い


中嶋「あ、あの」


七尾「ん?」


中嶋は泣きそうになりながら


中嶋「私を、私を助けてください」


七尾は全てを察した。つまり、あの男から離れたいということを


七尾「今日夜空いてる?」


中嶋「えぇ」


七尾「君の家に行く」


中嶋「え?。なんでですか?」


七尾「当たり前だろ。君を守るためだよ。波子ちゃん」


そのまま、七尾は仕事部屋の中へと入っていった。中嶋はなんだか嬉しい気持ちだった。下の名前で呼ばれるのは何年振りだろう、好きな人から。




第3話終わり

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