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マジカル☆ロワイヤルRED  作者: レッドリーフ
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第5話

☆ランサー


 先程までこの場所で日なたぼっこをしていたブレイカーは、『ガードナーとは関わらない方がいい』という忠告を残して去って行った。どうにもつかみ所が無い不思議な雰囲気の魔法少女であったが、既に視界から居なくなっているほど素早い動きの出来ることだけは分かった。ランサーは正直スピードにはあまり自信が無いので、もし戦うことになっていれば苦戦を強いられていただろう。


「まあ、スキルを使えば問題なかったかもしれないが⋯⋯。相手もどんなスキルを持っているか分からない現状、無策で戦うのは危険、か」


 ちらりと横を見ると、そこにはランサーの顔を不安げに見上げるアーチャーが居た。そんなアーチャーを見たランサーは、半ば反射的にアーチャーの頭へと手を伸ばす。水色の髪をわしゃわしゃと撫でると、アーチャーの顔はとろんと蕩けて元の柔らかさを取り戻していく。


「ふ、ふへへ⋯⋯。ランサー、こしょぐったいよ~」


 幸せそうに蕩けた笑みを浮かべるアーチャーを見ていると、どうしても自分の家族とその姿を重ねてしまう。両親が交通事故で死んだ日から、ランサーは幼い妹2人を親代わりに育ててきた。上の方の妹はしっかりしているので家事を手伝ってくれたりするのだが、下の方の妹はまだ甘えん坊で、よくなでなでを求めて駆け寄って来ては、さっきのアーチャーのようにこちらの顔を見上げてくるのだ。


 アーチャーと同盟を結ぼうと思ったきっかけも、幼い見た目の彼女と妹の姿を重ねたからだ。ランサーにとって家族とは何物にも代えがたい大切な存在であり、そんな家族の姿を重ねてしまったアーチャーとはどうしても戦う気にはなれなかったのだ。決して顔には出さなかったが、アーチャーが同盟の申請を受け入れてくれた時は心底安堵した。

 アーチャーはどうやら自分のことを頼りにしてくれているらしい。しかし、尊敬の念の籠ったキラキラとした目で見られると罪悪感も覚える。ランサーがアーチャーを通して見ているのは家族の姿であり、アーチャーではないからだ。ランサーは見知らぬ他人を助けようと思うほどお人好しではない。いつだって家族のことで頭がいっぱいだし、叶えたい願いも家族のためのものだ。


「そういえば、モンスターが出るとか聞かされていたけれど全然会わないよね⋯⋯。このままずっと引っ込んでいてくれると嬉しいんだけれど⋯⋯」


「安心しろ。君のことは、私が必ず守ろう」


 それでも、アーチャーにかけるこの言葉は本心からのものだ。一度同盟を結んだ以上、ランサーは決してアーチャーを裏切るつもりはない。アーチャーと一緒に生き残る決意を再び胸に刻んだランサーの耳に、遠くからかすかに歌うような声が聞こえてきた。



☆ドリーマー


 非戦闘ゾーンの出口のドアの前で顔を見合わせるのは、ドリーマーとファイターとバッター。そして⋯⋯あの名前の分からない仮面の魔法少女の4人だ。時刻はもうすぐ0時。つまり、マジカル☆ロワイヤルの1日目が終了しようとしていた。

 ここに残った4人は、殺し合いとほぼ変わらないこのゲームに参加するのを嫌い、ギリギリまでここで粘っていたメンバーである。⋯⋯仮面の魔法少女については意思疎通が出来ていないため詳しいことは分からないが。

 しかし、その粘りもここまでだった。2日目の開始時にここに残っていた場合、何か良くないことが起こるのは送られたメールで理解している。殺し合いを平然と提案してくるこのゲームの運営が行う良くないことといえば、容易に想像できるだろう。


「じゃあ、わたくしがドアを開けますわ。⋯⋯覚悟はよろしくって?」


 ここに居る間にいつの間にかリーダーのような立ち位置になっていたファイターが、ドリーマーたち3人にそう呼びかける。バッターが「お~!」とバットを突き上げてやる気を示し、仮面の魔法少女はよく分からないポーズを決める。ドリーマーはそんな2人から若干遅れつつもコクリと頷き、覚悟を決めたことを伝えた。


「最後に1つ、ここにいる全員で決めたことを確認しますわよ。わたくしたち3人⋯⋯じゃなかった、4人は決して殺し合いには荷担しない。他の魔法少女との戦闘は極力避ける方針でいく。この方針に異論がある方は、別に今からでも反論してもよろしくってよ」


 この方針は、仮面の魔法少女を除いた3人で話し合って決めたものであった。運営から送られてきたマジカル☆ロワイヤルのルールには、願いを叶えられるのは1人だけだと書かれていたが、生き残るのが1人とは書かれていなかった。そのことに最初に気付いたのはバッターだ。日課であるというスイングをしながら、バッターはさらに衝撃的なことを告げたのであった。


『これさ~、誰も願いを叶えようとしなければ、全員生きて帰ることも出来るってことじゃないの?』


『あなた⋯⋯天才ですの?』


『うん』


 特に叶えたい願いとやらに心当たりのなかったドリーマーは、バッターのこの発見に希望を見出していた。そして、ファイターもまた、誰かを殺してまで願いを叶えたいと思うほど愚かな人間ではないときっぱり告げ、バッターもそんなたいした願いではないからということで、皆が不殺の誓いを立てたのであった。

 不安要素があるとすれば仮面の魔法少女のことだが、彼女もここに残っていたということは殺し合いには参加したくないという思いはあったのであろう。ファイターが不殺の誓いについて説明していた時も、特に反対するような態度を示さなかったので大丈夫だと思いたい。


 ファイターの最終確認に対し、反対する者は現れなかった。それを確認したファイターは満足そうに頷き、そしておもむろにドリーマーたちの方へと手を伸ばす。バッターからやや遅れてドリーマーがその手を握ると、ファイターは一瞬頬を染めた後、力強くドアを開いた。

 その直後、魔法少女4人の身体を光が包む。ドリーマーは、右手にファイター、そしていつの間にかちゃっかり握ってきていた仮面の魔法少女の手の感触を左手に感じながら、ぎゅっと目を瞑った。


 まぶたの裏に感じる光の鋭さが徐々に弱くなっていき、ドリーマーはゆっくりと目を開ける。そして、目の前に映るその光景に⋯⋯絶句した。


「わーお、こりゃあ、私らへのペナルティってとこかな?」


「ふぁっきんですわね」


 同じくこの光景を目の当たりにしたであろうバッターとファイターが各々反応を示す中、しっかりと着いてきていた仮面の魔法少女が「ぱんぱかぱーん!」と叫び、両手を高々と天に突き上げる。


「さあ、この状況はいったい何だ!? 目の前にうじゃうじゃ群がる奇想天外魑魅魍魎!! あまりの数の多さに訳もなく性的な興奮を覚える!! そんな彼らの名前は、『モンスター』です。以後お見知りおきを!!」


⋯⋯つまりまあ、そういうことであった。


第5話:『覚悟はよろしくって?』

ホントはこの後の戦闘まで書きたかったんですけれど長くなりそうだったんで次回に持ち越します~。

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