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マジカル☆ロワイヤルRED  作者: レッドリーフ
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第3話

☆セイバー


 非戦闘ゾーンのドアをくぐり、外へ飛び出した魔法少女たちは、既に同盟を組んでいた者を除き、それぞれがバラバラの場所へと飛ばされていた。セイバーが飛ばされた場所は、木々の生い茂る森林地帯だ。並び立つ木々の中でもひときわ背丈の高い木の上に座りながら、セイバーはひたすら自分の剣を磨き続けていた。時折ふぅ~っと息を吹きかけながら恍惚とした表情でピカピカに磨き上げられた剣を眺めるセイバーは、うっとりとした声を漏らす。


「はぁ~、本当に綺麗で可愛いですわ⋯⋯。剣に映る俺様の顔♡」

 

 セイバーは自分のことが大好きだった。自分より可愛くてかっこよくて綺麗で素敵で美しい存在はこの世には存在しないと信じて疑わないし、付き合うなら自分以外考えられない。その価値観は魔法少女となった今でも変化せず、むしろより一層愛が強くなったくらいだ。

 腰まで伸びた煌めく黒髪。陶磁器のような白い肌。そしてその身に纏う衣装も白と黒を基調としたゴシックドレスだ。完璧な美には余計な色など必要ない。無駄をなくし洗練された美しさ、その化身こそ今のセイバーだ。


「さて⋯⋯それじゃあそろそろ本命のお楽しみといきましょうか。ふふふ⋯⋯♡」


 セイバーは、自分のスキルを知った時からずっと試したいことがあった。しかし、あのルールがあったため他の魔法少女の前ではスキルを使うことが出来なかったのだ。他の魔法少女がいない今なら、思う存分楽しむことが出来る。


〇〇〇〇〇


切って切って切りまくれ! 返り血浴びる俺様素敵♡ 君の名前は魔法少女セイバーだよ☆


セイバーのスキルは『自分の分身を作る』っていう力!! 1日に最大5体まで分身を作ることができるよ!! 分身が死んでも日付が変わればまた作れるから問題ないね☆


〇〇〇〇〇


 このメールを初めて見た時セイバーの頭に浮かんだことはたった一つ。それは、分身を使えば自分で自分を愛することが出来るのではないかということだった。そして、ついにその時は訪れる。


「おおぉっ⋯⋯!! 凄い凄い凄い!! 身体のラインから顔の造形まで、この俺様が完璧に再現されていますわ!」


 興奮した様子で歓喜の声を上げたセイバーは、一切の躊躇いもなく着ていた服を脱ぎ捨てると、同時に分身の着ている服を破り捨てた。欲望のままひたすら自らの分身を愛撫し、その身体の隅々まで堪能していくセイバー。

 そして30分後⋯⋯そこには、分身の胸に剣を突き立て、怒りで顔を真っ赤に染め上げたセイバーがいた。


「何なんだよふざけるんじゃねえよ俺様に愛されているんだからもっと喜べよ何でずっと無表情なんだよこれじゃあラブドールを抱いているのと何も変わらねえじゃねえか俺様ならもっと可愛い反応をして相手を喜ばせることが出来るんだよ舐めてるんじゃねえよお前に俺様の分身を語る資格はねえよただのゴミだよ屑だよガラクタだよぉぉぉ!!!!」


 その後しばらくの間罵詈雑言を繰り返していたセイバーであったが、ふと我に返り、血で染まった手を頬に添えてうふふと微笑んだ。


「⋯⋯あら嫌だ。俺様としたことが少々取り乱してしまいましたわ。分身は、期待外れでしたが戦闘時にはまあ使えるでしょう。俺様の願いを叶えるためにも、もっと自由に分身を動かせるようにならなくっちゃ」


 セイバーの願いはただ1つ。世界一素晴らしい自分という存在を世界中に伝えること。そして、いつかは世界中の人間をセイバーの顔に変えるのだ。どこに視線を移しても目の保養。皆素晴らしい存在なので争いが起こることもない。それこそまさに理想郷だ。


「ああ、俺様ってなんて素晴らしい子なんでしょう⋯⋯♡」


 自分自身のアイデアの素晴らしさに改めて感心したセイバーは、ご褒美とばかりに自らの身体を強く抱きしめるのであった。




☆アーチャー


「アーチャー、大丈夫か? もし疲れているようなら私が背負うぞ?」


「だ、大丈夫だよランサー。魔法少女になって体力も増えてるみたいだし⋯⋯」


「そうか、それならよかった」


 ランサーはそう言うとこちらににっこりと笑みを向ける。その眩しすぎる笑顔を直視できず、アーチャーは思わず視線を逸らしてしまった。

 アーチャーは今、ランサーと同盟を結んでいる。いきなり殺し合いをしろと言われ恐怖を感じていたアーチャーにとってランサーが声をかけてくれたことはかなり嬉しかったが、それと同時に今でもなぜこんな弱そうな自分と同盟を結ぶ気になったのかと不思議に思う気持ちもある。

 ちらっとランサーを盗み見ると、そこには情けないアーチャーとは正反対の凛々しい顔立ちの女騎士がいる。思わずぼけーっと見とれていると、不意にランサーがこちらに視線を向けた。


「そんなに見つめられると⋯⋯流石に照れる。ほどほどにしてくれ」


 よく見ると、ランサーの耳は少し赤くなっていた。自分がランサーを見ていることに気づかれていたという羞恥と、予想外のランサーの可愛い反応に、アーチャーの顔はボッ!と音を立てて真っ赤になる。もう同盟を組んでくれた理由などどうでもいい。このままずっとランサーについていこう。そう決意を新たにしたアーチャーを、ランサーが突然抱きしめた。


「らららら、らんしゃー!? いい、いきなり何を⋯⋯。結婚はさすがにまだ心の準備が⋯⋯」


「しっ! ⋯⋯誰かいる。おそらく他の魔法少女だ」


 耳元でそう囁かれ一瞬気を失いかけたアーチャーだったが、辛うじて耐えてランサーの視線の先を見た。するとそこには、ランサーの言葉通り魔法少女と思われる格好をした人物が、日の当たる場所で一人ぼけーっと突っ立っていた。

 褐色の肌に施された色鮮やかなボディペイント。インディアンを思わせる野性味あふれるコスチュームをした彼女の名前は⋯⋯確か、ブレイカーだっただろうか? アーチャーがその魔法少女の名前を思い出したところで、アーチャーを隠すように前に立ったランサーが、厳しい表情を浮かべながらブレイカーに声をかけた。


「君は魔法少女ブレイカーか? こんなところで何をしているんだ」


「ミーアは日向ぼっこをしている。お前たちもどうだ? 気持ちいいぞ」


 顔はぼーっと上を向いたまま、ブレイカーはアーチャーたちに日向ぼっこの提案をしてくる。その予想外の答えに困惑した表情を浮かべるランサー。正直アーチャーも同じような表情をしていると思う。


「ひ、日向ぼっこは遠慮しておこう。しかし、こんな目立つところにいては危ないのではないか? ガンナーなどに見つかったら大変だろう」


「だいじょうぶだ。ミーアは強い。ガンナーくらいなら倒せる。そして勝てない相手がやって来たら逃げることもできる。ミーアは賢いからな」


 相変わらず視線の合わない会話が続く。しかし、ランサーはブレイカーの返答にどこか引っかかるものがあったのか、一瞬目を細めた後ブレイカーにこう尋ねた。


「君の言う勝てない相手とはだれのことを指している? セイバーか? ハッカーか? それとも⋯⋯私か?」


 いつの間にかランサーは槍を手に出現させ、戦闘態勢に入っていた。そして、その時になってようやくこちらへ視線を向けたブレイカーは、槍を向けられているにも関わらず一切の動揺を見せずにこう答えたのであった。


「ちがう。ミーアが言っているのはガードナーのことだ。あいつだけは次元が違う。ミーアは本能でそれを感じた。お前らも気を付けろ。ガードナーとだけは関わらない方がいい」




☆ガンナー


「なーんでこんなだだっ広い砂漠なんかに飛ばされたのかな~!? 暑いし喉は乾くし、もう最悪だよ~!! あー、はやく撃ちたいバンバン撃ちたい!! 怪物でも魔法少女でもなんでもいいから、はやく私のプリチーベイビーの餌になってよ~!!!」


 何もない砂漠の中をギャーギャー喚きながら歩いていたガンナーだったが、その時ふと視界の端に砂以外の物体を捉え、その正体を確かめるべく手で傘を作って目をこらす。


「あれは~⋯⋯確かガードナーって言ってたやつじゃない? うん、あの尼さんみたいな恰好、間違いないね。よ~し、最初のターゲットは、あの子にけって~!!」


 にぃっ~! と口角を上げたガンナーは、さっそく見つけたばかりのターゲット目掛け走り出した。舞い上がる砂埃とヒャッハー!! という叫び声に、ようやくガードナーもガンナーが近づいてきたことに気づいたらしく後ろを振り向いたがもう遅い。ガンナーはガードナーをハチの巣にするべく、その両手に構えたマシンガンのトリガーに指をかけた。


 ガンナーの目の前にいるのは、頭から白い布をかぶり、袈裟をまとった尼僧を思わせる魔法少女ガードナー。そんな彼女は自らに迫る無数の弾丸を前に避けることも防ぐこともせず、ただすっと掌を向け、こう唱えた。


「――色即是空(しきそくぜくう)


 すると、ガードナーに迫っていた無数の弾丸は突如その姿を消した。予想外の事態に混乱するガンナー。そんな彼女にガードナーがすっと細めた瞳を向ける。

 その直後、ガンナーはガードナーに背を向けて逃亡を始めていた。そこには、先程までの狂気に瞳を輝かせていた魔法少女の姿は既になく、理解できないモノを見て恐怖し怯えるただの少女の姿があった。


「う、うわあああああ!?」


 叫び声をあげながら、必死に逃げるガンナー。そんなガンナーの方をじっと見つめていたガードナーであったが、おもむろに合掌をした後その手をパッと離し、こう唱える。


「――愛別離苦(あいべつりく)


 ガードナーが手を離したのとほぼ同じタイミング。ガンナーは、自分の右腕が音もなく切り離され、宙を舞うのを見たのであった。

 襲い来る激しい痛み。流れ出る血。次第に朦朧としてくる意識の中で、ガンナーはガードナーの声を聞いた気がした。


「――諸行無常」


 そう唱え手を合わせるガードナーの瞳からは、一筋の涙がこぼれていた。ドサッと音を立て地面に崩れ落ちるガンナーに深々と頭を下げた後、ガードナーはその場をゆっくりと去っていったのであった。



第3話;『諸行無常』

 


 

とりあえずこれで全員登場しましたかね?

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