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マジカル☆ロワイヤルRED  作者: レッドリーフ
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第2話

☆ハッカー


「⋯⋯とりあえずさぁ、改めてこのルールをよく確認しておきたいんだけれど、おけ?」


 自称『ケモナー』の奇妙な魔法少女のせいで混沌としてしまった場の空気を元に戻すべく、ハッカーは自分からそう呼びかけることにした。その提案に数名が頷いたのを確認し、ハッカーは内心ほっと胸をなで下ろした。

 本来、ハッカーは自分から発言するようなタイプではない。通っている中学校では地味なグループに属しているし、他人と話すのは得意ではない。しかし、今自分は冴えない中学生の一ノ瀬麗華(れいか)ではなく、力を持った魔法少女なのだ。見た目も、猫耳フードの灰色パーカーにヘッドホンと他の魔法少女と比べれば多少地味だが、先程スマホで確認した自分の顔は他の魔法少女と同じく綺麗に整っていて、その顔面偏差値はクラスの誰よりも高いと自信を持って言えるレベルであった。容姿のレベルは、そのままクラスカーストにも繋がってくる。今のハッカーがあのクラスに居たら、間違いなく最上位の位置に立つことが出来るだろう。そんな優越感から産まれた自信が、ハッカーにこの場で発言する勇気を与えていた。


「ここに書いてあるメールには、『生き残った子の願いを叶える』って書いてあるよね? じゃあ、あたしらがこのままここで大人しくしていれば、誰も死なずに願いを叶えられるってことじゃないの?」


「そ、そうだよ!! 殺し合いなんて物騒なことやる必要なんてないよ!!」


 ハッカーに便乗して声を上げたのは、大きな緑色の帽子を被った水色の髪の魔法少女、アーチャーだ。狩人を思わせるコスチュームとは対称的に、好戦的な性格とはほど遠いようで、この状況にかなり恐怖を感じているようだ。その証拠に声は震えているし、他の魔法少女より若干小さな身体もスマホのバイブレーション機能のように細かく振動している。

 そんなアーチャーの声に反応したかのようなタイミングで、全員のスマホに同時にピロリン♪とメールが届けられた。アーチャーが「ひぃっ!?」と悲鳴を上げてスマホを落とすのを横目で見ながら、ハッカーは今届いたばかりのメールの文面を確認する。


〇〇〇〇〇


【運営からのお知らせ☆】


・マジカル☆ロワイヤルの開催期間は7日間だよ☆ その期間内にだーれも死ななかった場合は問答無用でみんな処刑するから気をつけてね☆ さらに付け加えると、願いを叶えられるのはたった1人! もしくは同盟を組んだ2人組だけだから、願いを叶えたい子は積極的に他の子を脱落させちゃおー☆


〇〇〇〇〇


「なるほどね~。つまり、このメールを送ってきた誰かさんは何が何でも私たちに殺し合いをさせたいわけだ!」


 その声はハッカーの隣に居る魔法少女、ジャンパーのものであった。その名前の通り皮のジャンパーを纏った彼女の表情は、どこかこの状況を楽しんでいるように感じられるものであった。


「そ、そんなー!? 私、殺し合いなんてやだ!! はやく家に帰りたいよ⋯⋯」


 先程も弱音を吐いていたアーチャーは、追い打ちのように届いたこのメールでとうとう泣き始めてしまった。そんなアーチャーを慰めるようにして背中をさすってあげている背の高い魔法少女の名前は、確かランサーだったか。甲冑を纏った姿といい、凜々しい顔立ちといい、いかにも女騎士といった雰囲気を漂わせている。

 

「⋯⋯ねえ~、そろそろ始めていい~? 私、もう我慢できなーい!!」


 ジャキン! という嫌な音が聞こえてきた方を向くと、そこには両手にマシンガンを構えた魔法少女、ガンナーが、瞳をギラギラと輝かせて立っていた。あの瞳には見覚えがある。あれは、暴力を振るうことに少しも躊躇いを持たない人間の瞳だ。


「セーラー服に機関銃なんて、もうホント快・感⋯⋯☆ ねえ、誰が私のプリティーな子供たちの餌になってくれるの⋯⋯?」


 舐め回すように魔法少女達を見るガンナー。そんな彼女の視線を受けて戦闘態勢を取る者や怯える者、反応は様々であったが、一触即発の空気が漂い始めた。

 その時、緊張感とはほど遠い電子音が鳴り響き、またしてもメールが届いたことを皆に告げる。ガンナーは舌打ちをしてから構えていたマシンガンを下ろし、そんなガンナーの様子を見てひとまず危険を回避したことを察したハッカーは再びメールを確認する。


〇〇〇〇〇


【注意☆】


・ここは一応非戦闘ゾーンってことになっているから、暴れたい人はあそこのドアをくぐってね☆ ちなみにここは2日目開始と同時に完全閉鎖しちゃうから、それまでには外に出るよーに! 出なかった場合は⋯⋯分かるよね☆


〇〇〇〇〇


「さっきのメールといい、まるでこっちの会話が聞こえているみたいなタイミングだ⋯⋯」


「実際そーなんじゃない? 私たちをここに集めた趣味の悪い誰かさんは、きっと監視プレイが好きな変態さんなんだよ!!」


 ハッカーの呟きに反応したジャンパーが、とぼけた口調でそんなことを口にする。実際それはかなり真実に近いのかもしれないと思ったが、変に絡まれたりしても面倒なのでハッカーは無視することを決めた。それなのに、ジャンパーはニコニコと笑みを浮かべてこちらをじっと見つめてくる。

 厄介な奴に目を付けられたな⋯⋯とハッカーが心の中でチッと舌打ちをした時には、ガンナーを筆頭とした血の気の多い面々は既に指定されたドアをくぐり、外へと飛び出していた。今残っているのは、ハッカーを含めるとジャンパー、ファイター、バッター、ドリーマー、そしてあの仮面の魔法少女の6人だけだ。


「ねえねえハッカーちゃん、君は外に出ないの?」


 相変わらずニコニコ笑顔のままでジャンパーがハッカーにそう尋ねてくる。何故こいつはこんなに自分に絡んでくるのだろうか。決して懐かれるような行動をした覚えはないため、ここまで友好的に話しかけられると少々不気味さすら感じる。

 しかし、これは考えようによってはチャンスではないだろうか。ハッカーは自分のスキルを思い出し、ジャンパーに笑顔で返事をした。


「あたしは出るつもりだよ。そこで相談なんだけれどさ⋯⋯ジャンパー、あたしと同盟組まない?」


「え、いいの~!? 私もそれ言おうと思ってたんだ!!」


 ハッカーが差し出した手を、ジャンパーは秒速で握り返し、そのままぴょんぴょんと跳びはねて嬉しさを全身で表現する。ハッカーは、ジャンパーに身体を揺らされながら、計画が上手くいったことにほくそ笑んだのであった。



☆ドリーマー


 ハッカーとジャンパーが仲良く手を繋ぎながらドアをくぐり、とうとう残ったのは4人だけになってしまった。


「わたくしは殺し合いなんてごめんですわ!! 絶対にここから出たりするもんですか!!」


「そうは言ってもさ~。明日までにはここを出ないと多分死んじゃうよ? どうするよお嬢様もどき!」


「も、もどきとはいったいどういうことですの!? 自分で言うのも何ですけれど、わたくしはれっきとした高峯財閥の娘ですのよ!! オーホッホッホゲホッゲホッ!!」


「いや、無理に高笑いしようとして咳き込んでるじゃん」


 ファイターとバッターが何やら漫才を繰り広げているのを見ることで、ドリーマーは自分の背後から感じる異様な存在感を何とか忘れようとする。しかし、そろそろ向き合わなければならないだろう。ドリーマーは大きなため息を1つつき、ゆっくりと後ろを振り返った。


「ぱんぱかぱーん!」


 そこに居るのは、あの謎の仮面の魔法少女だ。ドリーマーが振り返るのを待ってましたとばかりにすかさず両手をばっと広げてポーズを決めた仮面の魔法少女は、またしても奇妙な自己紹介を始め出す。


「さあ、私は誰だ!? 野菜にお肉、何でもぶっかけご満悦!! 白くて粘りけのあるその液体を精液と混濁して性的な興奮を覚える!! マヨネーズを愛し~、マヨネーズに愛された魔法少女!!」


 シルクハットから取り出したマヨネーズをすすりながら恍惚とした表情を浮かべ、仮面の魔法少女はくるくると踊り出す。ファイターとバッターの2人もぽかんと口を開けて見守る中、仮面の魔法少女は再び名前を告げたのだった。


「そんな私の名前は、『マヨラー』です! 以後お見知りおきを!!」


 仮面の奥でバチン☆とウインクを決めた自称『マヨラー』に対し、ドリーマーは苦笑を返すことしか出来なかったのであった。


第2話:『監視プレイが好きな変態さんなんだよ!!』

たぶん次の話くらいで残りの魔法少女の描写も出来ると思います~

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