【778】叫び声ちとともに…
『おやおや、お二人さん、仲良い(ラブラブ)ですね。何話してんですかー?』
二人が振り返ると、声の主であるクロはニヤニヤしていた。
『な、何言ってんの、クロ!ほら、さっさと階段おりて先にアレ用意しといてよ、ね?』
彼は、クロの発言を否定する。
『はーい、はいはい。分かってますよ。じゃあまたねー!』
そう言うと、彼はダダダッと素早く階段を降りて逃げて行った。
『あはは……』
コウは苦笑しながらクロが足早に階段を降りていくのを眺めてた。
『ああいうの言われ慣れてないんで反応に困りますね。っと、危な!』
階段おりている最中に、つんのめり階段を転げおりそうになった私を支えたのは、コウではなく知らないおじさんだった。
『大丈夫!?ナナハちゃん…かな?さっきハルたちから聞いたよ。おれはユハ。吸血鬼…っていうのかな。心配しないで。急には(・・・)噛んだりしないし。よろしくな!ハルとは、旧知の仲っつうか…まあ、そんな感じ。おれもハルと同じく元・魔王軍の一員なんだ。コウ、どうしたんだ?』
不覚にも、目の前の男性がかっこ良いと思ってしまった。おじさんだけど。
ハルさんと同じってことは、ハルさんもこれぐらいのおじさんなんだな。……あの見た目からは全然想像できない。
『う、うるさい!ユハには関係ない!さっさと階段おりて、食事の間に行ってこい!!相変わらず時間っていうの考えてないんだから。このままだとハルにもっと怒られるか嫌われる羽目になるぞ。きをつけろよな』
『へーへー。若人は良いですね~。では、失礼しますね、可愛いレディーちゃん』
あ、だめだ。うっさんくさいおじさんに見える。
『ユハさんって個性的な人ですね…。癖が強いっていうか…』
『そうなんだよ!分かる!?他の人は、あれが吸血鬼だっていうんだけどさ!俺は、絶対ああいう人格なんだと思うな~。ナナハは?』
『私は分かんないですね…。初めて会ったので…』
つまらない回答だったろうか。内心焦るが後の祭りだ。
『そっか。まあそういうもんだよね。さ、着いた。ドア、開けるから少し下がってね』
ギシイィィッと、自分の背より3倍ほど高いドアを金色のノブでゆっくり開けた。
食事の間には幼稚園生がすでに集まっており、こちらを見た瞬間クラッカーのようなものをパンッと割ったあと
『ようこそ、コロシア幼稚園へ!
初めまして、ナナハ・コロアちゃん。
我らの館長と、ラブラブですね!いっそそのまま結婚したらどうでしょうか!』
と爆弾発言を落とした。
『お前らいい加減にしとけよおぉぉぉっ!!!!!』
最後の一言でコウは、ぶちっとキレた。
そして彼の叫びが洋館中に響き渡り、外にいる鳥が数羽、飛び去った。