【777】魔法使いの爺さんの家
『着いたぞ。この家は妻のユリカと二人で楽しく、暮らしているんじゃ。あの人、自由人だからいるかのお』
他の家より一回り大きい二階建ての煉瓦造りの家に着くと、爺さんは私に向かってそう言った。
家の玄関を開けるとからんからん~と、音を立てて入り口の鈴が家中に響き渡った。
『ユリカ!!居るか?居るなら返事して、お茶の準備をしてくれ!』
魔法使いの爺さんは、そう叫ぶと奥から『はいはい、どうしたんですか??』と言う声と同時に、頭だけ河童のおばさん(?)が出てきた。
『か、河童ああぁぁぁぁ????』
余りの衝撃に、私は叫んでしまった。すると、おばさんがこちらを見て
『おや。可愛い吸血鬼ちゃんですこと。ふふ。で、セイオトさん、この方はどなたですか?私たちと同じ、この世界のプレイヤーのようですが…』
と自分の夫に尋ねた。
『さっき、噴水広場で会ったんだ。少々、この世界について話してやろうと思って』
爺さんがそういうと丁度、玄関のドアが閉まった。
『まずは、自己紹介だな。俺のこの世界での名前は、セイオト・クルトン。見ての通り、魔法使いだ。好物は、肉だ』
『えーっと、私も自己紹介しようかしら。あ、ちなみに、私のこの格好仮の姿。本当は…』
おばさんはそういうと両手を合わせてパンと叩く。すると河童の格好が美人なエルフに変わった。
『私の名前は、ユリカ・クルトン。エルフ族…ですよ。河童ではないですよ~。好きなものは、夫と息子、この世界です。これからよろしくね』
自己紹介を言った途端、私の隣に立っていたサイオトさんがユリカさんの方に行き、ぎゅうぅーっとハグした。
それをみた私はつい『おえぇ。あなたたちは、バカップルではなく、バカ夫婦ですか?』と顔で突っ込んでしまったらしい。セイオトさんに軽くにらまれた。
『あー、私も自己紹介しますね!
私の名前は、アカリア・ナナ。種族は、見ての通り、吸血鬼です!今、この世界に同時にログインした友人を探している最中です!まだまだ、未熟者ですが、これからよろしくお願いします。
あと………あのー本当に申し訳ないのですが今日だけでも泊めていただけませんか…?お金がなくて。本当に我が儘だとは思いますが』
最後のところで、二人は肩を震わせて笑った。そして『全然良いよ。何なら、ずっと住む?』と軽い冗談を言った。