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悪役令嬢は賢妃を目指す  作者: りのみ
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(勘違い)ヒロイックサーガ

森の近くに村がある。

その村は王都から離れた所にある村だが、近くに神殿があるためか信心深い村人たちが住んでいる。

村の中で誰かが困れば周囲が助け、また助けられた人間が誰かを助ける。

子供たちも仲が良く村人全員で分け隔てなく可愛がっている。

その中で頭の良い子がいれば、村人みんなで応援し援助しその子は村長が役人に掛け合い、王都で勉強することができる。

そのような形で村を出て行った子供が戻ってくることもあれば、王都で仕事を得て村に仕送りをする子供もいる。

そして現在村で医師をしているのは、数年前に村をでて王都の学校に通い成績が良かったことから教師に推薦され、卒業後高名な医師の元で修行をし、後継者に望まれたが村のために戻ることを選択した男性だ。

惜しまれながら村に戻ったその医師は、師匠の医師や先輩後輩に義理を欠かさずに手紙を書き、また人柄も良かったために、村医者ではもったいないほどの腕と人脈を持っていた。


その村医者をたずねて山奥の神殿から少女が村にやってきた。

粗末な神官服の上にロープを羽織り、村の入り口でただ一人で病に倒れた神官長のためにここまできたとうったえた。

その少女は村人に“エリス”と名乗り、医師にすぐにでも神殿に向かって欲しいと頼んだ。

村の若い青年はそのエリスの健気な様子に胸を打たれ外見に心ときめかせ、村人もエリスを労わった。

だが、現れた村医者はエリスをちらりとみると


「すぐに神殿に向かう。」


そう言って準備をしに戻ってしまった。

残されたエリスは村人に


「大丈夫でしょうか・・・?」


儚げな様子で尋ねている。

それに対し好意的に対応する村人たち。


戻った村医者は考える。


「アレが噂に聞いたエリスか・・・。王家の毒杯を飲んでも死に至らなかったという・・・。もしそれが本当なら・・・。」


ぶつぶつと言いながら村医者は支度をする。


そう、村医者は人柄もよく知識もあり優秀な医者であった。ただひとつの欠点は現代風にいうとマッドサイエンティストであった。

とてもよく学習し患者を治すことに喜びを感じるが、実は実験が大好きである。

一応常識はあったために人体実験をすることはなかったが、いつも本を読み薬の効能を覚え新しい組み合わせを考えてきた。

ただ、人を死なせるということができないために考えただけというレポートがいくつもある。

そして、エリスのことを知っていた。

王家のお抱えの薬師をしている友人の一人が一時


「どんな人間でも死ぬことのできる薬はないものか?」


と悩んでいたのを聞いたのである。

その友人も、薬物に関しての知識が相当あり村医者と仲がよかったため村医者は事情を知っていた。


(あの少女に何とかこの薬を飲ませることはできないだろうか・・・?)


と最近作った紫色の液体の入った小瓶を手に取り見つめる。

それは最近森で採取した、疲労回復にいいとされる薬草と酷使した筋肉の痛みを和らげるキノコを煮詰め熟成させたものである。


(私が考えた通りの効能ならば、身体のダルさが消え元気いっぱいとなりいくらでも動くことができるようになるはずなのだが・・・。)


そう考えながら何かあった時のために懐にいれる。


村医者は手早く準備を整え、村にある共用の荷馬車のおいてある場所に行く。

村人が出荷物を他の町に運ぶための物なので、立派な馬ではないが一応馬もいる。


そこでは村人たちが集まりせっかく神殿に行くのだからとそれぞれ食べ物を持ち寄っていた。

信心深い村人たちは口々に神官長の様子を気にする言葉を村医者に問いかける。


「神官長様は少しお年をめしているし、最近の寒さで身体の体調を崩されたのだろう。皆が心配していると俺からも神官長様に伝えよう。」


そう言って村医者は荷馬車に乗り込み馬の手綱を引く。

エリスは近くに来ているがなかなか乗り込もうとしない。

不思議に思った村人たちが


「どうしたんだい?」


とエリスに問いかける。


「えぇと・・・。こんなに早く出発して大丈夫なのでしょうか?」


と不満そうな顔で答えるエリス。

村人はエリスが準備に不備がないか不安に思っていると思ったのだろう。


「神官長様が心配なのはわかるが、この医者は優秀だよ。準備はばっちりさ!」


と胸と張る村人に対し何か言いたそうにきょろきょろと周囲を見回している。


(おかしいわ・・・。予想と違う!イケメンもいないし、私を歓迎する宴もないなんて!それにこんなに早く神殿に戻ることになるなんて・・・!)


「あ・・・あの、私歩いてきたので少し疲れてしまって!でも神官長様が心配なので先に行っていただけますか?足手まといになってもいけないし・・・。」


エリスは何とかここに残ろうとしているが、村人は


「なーに、心配することはないよ!この荷馬車はお嬢さんが乗ったくらいじゃ遅くならないから。村医者が馬を走らせるからお嬢さんは座っていればいいさ。」


と笑い飛ばす。


(そんなこと考えてないわよ!イケメンに会ってないのに神殿に戻ったらいつまた出れるかわからないじゃない!それに私は軽いわよ!そうじゃない!そうじゃないわよー!)


何か不満そうなエリスに対し村人は好意的に考え、荷馬車に乗るように薦める村人に対し引きつった笑顔でエリスはしぶしぶと乗り込む。


荷馬車を取り囲んでいた村人たちは


「しっかり神官長様を看てくれよ!」


「村は大丈夫だからね。」


「食べ物を積んであるから神殿に着いたら渡してくれ。」


といいながら手を振る。


「では、行ってくる。」


(おかしいわよ!こんなはずじゃなかったのに!)


エリスと村医者は村人の声援を受け神殿に向かう。



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