悪役令嬢の側室観察。
ベッドに横たわっていた女性のための医師はすぐに来た。
私たちはそちらは医師に任せカロリーヌ様をソファーに座らせ、その横に腕を縛った女性を座らせる。
ソファーの横には何かあったらすぐに動けるよう騎士が控えている。
女官長が何か聞きたそうにしているが、まだ何も言えない。
そうしているうちにルシフェルトが部屋に入ってきた。
「ヴァンディミオン殿下。皇帝陛下の召還を無視してどこかに行こうとしていた大臣は屋敷を出てすぐに捕獲しました。こちらの言葉を無視して逃げようとしましたので今は宮殿の一室にて尋問しています。」
その言葉でカロリーヌ様は
「父が逃げようとしたのですか?!」
そう叫び立ち上がる。
「はい。馬車に荷物をたくさん積んでいらしたのでそれについても追求しています。まるでどこか遠くへ旅をするような荷物をお持ちだったのですが、大臣から遠方に行くと知らされてはいませんでしたので不思議に思いまして・・・。」
そう答えるルシフェルトの言葉にカロリーヌ様はもう一度椅子に崩れ落ちる。
「お父様・・・どうして・・・・?私のことをおいて行くつもりで・・・。」
とぶつぶつ一人呟いている。
立っている私たちは事情を聞きたいところなのだが、皇帝陛下にお知らせした返事が戻らないのでソファーに座る女性たちを見張っているしかない。
カロリーヌ様の独り言を聞いていると遣いに出した騎士が戻り
「皇帝陛下からのお言葉です。この場はヴァンディミオン殿下とセシリア様に任せるとのことです。全てのことを聞いてから戻り報告するようにとのことです。」
そう口上を述べる。
(ジュリウス王子の容態がよくないのかしら・・・?)
不安になったがこの場を任されたのでこちらを早く済ませて戻るほうがいいと気持ちを切り替え、ヴァンディミオン殿下を見つめる。
ヴァンディミオン殿下は少し考え
「カロリーヌ殿、ここは皇帝陛下に私が任された。私の聞くことに答えて欲しい。」
そう言い質問を始める。
正直に全てを話すとも思えないが、皇帝陛下はこの場をヴァンディミオン殿下に任せると言っているし、頼みの綱の父である大臣は捕まっている。
「カロリーヌ様、皇帝陛下はヴァンディミオン殿下のご報告を聞いてこれからのことをお決めになるおつもりでしょう。全て正直にお話してくだされば皇帝陛下に対してヴァンディミオン殿下と私でカロリーヌ様の誠意ある行動をお伝えしたいと思います。」
そう言葉を添える。
見苦しい行動をしなければ、皇帝陛下に対して情状酌量を願い出るのも考えるといった意味だ。
カロリーヌ様は大臣が自分を見捨て逃げたと理解したのか、こちらに阿った方がいいと考えているのか沈黙している。
女官長とリリアは医師の手伝いを命じてこの部屋から出しているが、騎士はそのままいるが自棄を起こして暴れることはないだろう。
ヴァンディミオン殿下とルシフェルトと私でカロリーヌ様を見つめていると
「お話します。」
と小さな声で答えた。
「そもそもの始まりは私が生まれた時に父が私を皇帝陛下の正妃にと望んだことです。家柄では正妃として問題なく父は私を厳しく教育しました。皇帝陛下が好む女性になるよう教え込まれました。ですが皇帝陛下は私ではなくナルディアナ様と婚約してしまいました。父はそれでも諦められなかったのでしょう。側室になれるようにと周囲の方々に協力していただきました。皇帝陛下も父やその周囲を蔑ろにできなかったのでしょう。私は側室となり皇帝陛下に尊重していただきました。」
そう淡々とはなしている。
「ナルディアナ様にヴァンディミオン殿下が生まれたことで父やその周囲は不貞を疑ったのはご存知の通りです。私も惑わされナルディアナ様を嘲笑った一人です。ですがジュリウス王子が生まれたことで皇后陛下としての権力を行使し私たちが今度は追い詰められました。父の援助によって私の生活や対面は保たれましたが、最近は・・・。」
と言いよどみ首を弱弱しく横に振り黙ってしまう。
「カロリーヌ殿、ではベッドに横たわっている女官については?」
ヴァンディミオン殿下の質問にびくりとしなかなか答えない。
「あの子は・・・。そう、私が皇后陛下に対する不満を言っているのを聞いて脅迫してきたのです!」
そうカロリーヌ様は言うがあの傷は拷問でもしたかのようだった。
「そうか。では皇太子宮に毒入りの菓子を贈ったのは?」
ヴァンディミオン殿下はとりあえず話を聞きだそうとしている。
「父からの指示です。私も止めようとしたのですが、この女官は実家から連れて後宮に一緒に入ってくれたのですが父の命には絶対に従い私のいうことを聞いてくれなかったのです!」
そう未だに失神している女官を指す。
「嘘はないのだろうか?」
ヴァンディミオン殿下の言葉に
「嘘はありません!全ては父の指示で私は止めようとしたのです!」
そうカロリーヌ様は言い切るが
「では、女官たちにも話を聞こう。」
という言葉に
「私を信じてくださらないのですか?!」
と叫ぶ。
「カロリーヌ殿の話はわかったが関係者全ての話を聞かないのは公平ではないからな。」
そうヴァンディミオン殿下が言うと、ぎりぎりと歯軋りをして震えながら
「側室である私とただの女官!どちらが正しいことを言っているか明白でしょう!」
と激昂する。
ヴァンディミオン殿下に対して抗議するカロリーヌ様をみていたが、気になって医師のいる部屋に向かう。
(話を聞ける状態ならばいいのだけれど・・・。」
そう思い部屋に入り医師に容態を聞くと
「さんざん殴打されたりしたようですが命に別状はありません。なんらかの薬により眠らされているのでしょう。」
ということなので、目が覚め次第話を聞くことにして女官長とリリアに世話を頼む。
部屋を出るとまだカロリーヌ様はヴァンディミオン殿下に対し抗議していた。
「全て父の指示なのです!私は止めようとしました!」
と叫び立ち上がっている。
大臣が逃げたことを知って逆上しているのか、全てを大臣のせいにしている。
(カロリーヌ様はこの部屋で騎士に見張らせて隣の部屋で女官に話しを聞いたほうがいいかしら?)
そう思えるほど自分は悪くないと主張しているカロリーヌ様をみるとヴァンディミオン殿下と目が合った。
うんざりとした顔で首を振るヴァンディミオン殿下をみて私は
「ヴァンディミオン殿下、カロリーヌ様を少しお休みさせて差し上げたらいかがでしょう?」
と声をかけた。




