悪役令嬢の切なる願い。
数日が経ったが、ルシフェルトもメルディナも新しい情報がなく、ヴァンディミオン殿下と私は皇帝からの公務に追われていた。
何も情報がないことに焦りを感じたが、嬉しい報告もあった。
皇帝陛下からだが、皇后陛下とジュリウス王子と話をしていてジュリウス王子に対する皇后陛下の態度が少し変わってきたとのことだ。
今までは皇后陛下がそれとなくジュリウス王子の話を逸らし、自分のさせたいことに誘導していたのがジュリウス王子の話を聞き、皇帝陛下とジュリウス王子の会話に口を挟まなくなったらしい。
それにより、ジュリウス王子が何を求めているかわかったとのことだった。
「ただジュリウスは、ナルディアナ以外の人間との関わりを求めていたらしい。」
そう皇帝陛下がヴァンディミオン殿下に教えてくれたそうで、皇后陛下以外とも話ができるように皇帝陛下が機会を作ることを考えているそうだ。
そして、本日のルシフェルトの情報では件の大臣は金策がなかなか上手くいかず、他の側室の実家にも批判されているようでなかなか苦労しているらしい。
想像通りだが、側室のお気に入りの女官の情報も入ってきた。
どうも、側室のヒステリーにより怪我をして部屋から出れないらしい。
皇帝陛下が皇后陛下と仲睦ましいと聞き大暴れをしたと後宮の女官の間で噂がでている。
整理すると、その側室は皇后陛下に対して不満を募らせていたが実家が裕福だったため暮らしを贅沢にすることでストレスを発散させていたが、ヴァンディミオン殿下のネックレスが流行したため大臣に賄賂がいかなくなり、周囲から人が離れたことで部屋でヒステリーを起こすことが多々あり、お気に入りの女官に愚痴をこぼすだけだったのが皇帝陛下と皇后陛下のことを聞き感情をが爆発し怪我をさせたことで、多額の退職金を払う必要ができたらしい。
少しつじつまが合わないと思ったが、緘口令が敷かれていたのか後から情報がでてきて、本人に直接聞けないためその情報を元に考えるしかない。
ただ、怪我をさせただけで多額の退職金を払う必要があるというのは気になるが・・・。
ヴァンディミオン殿下はその話を聞き
「皇后の身辺警護は私にはどうすることもできない。」
とただ一言だけだった。
私も、後宮内の揉め事に口を挟める立場ではないから傍観しつつ、大臣たちの行動を観察するしかないと思うが、ただ綺麗事だが、ヴァンディミオン殿下と皇后陛下の親子としての関わり方が少し悲しいと思った。
情報が入ってから、皇帝陛下に一応報告書は提出したが特にリアクションはなく、ただ大臣が孤立しているとのことだった。
側室に対しての情報もなく、部屋からたまに物の割れる音がするとの事だった。
女官は部屋から出てこないのでもうこの話はこれ以上進展しないだろうと思い、私たちのできることはなく、側室が皇帝陛下に行動を起こし、それか皇帝陛下が側室に対してどのようにするのかが問題だとヴァンディミオン殿下と意見が一致した。
皇帝陛下の公務を皇太子宮に移行することによって、皇后陛下が少しでも考えを改め、ジュリウス王子の成長を促してくれればと思い、ヴァンディミオン殿下と一緒に努力してきた。
たまに、膝の上に座らされて話をすることもあったがもう慣れた・・・とはいい難いが意識を失うことはなくなった。
ただ、話をしているだけならいいのだが、キスにはまだ慣れることができず、逃げ出したいくらいに恥ずかしい。
「唇にするのはセシリアがしたいときにしてくれ。」
とヴァンディミオン殿下の無理難題を私はどうこなしたらいいのか悩む日々が続いている。
額や頬や首にキスをされるだけで、動悸が激しくなり血の巡りがよくなりすぎる私はどうすればいいのか、夜寝る前に考えてしまうと、朝起きるとベッドがとてもひどいことになっている。
たまにどうしたらいいか悩みすぎ、ごろごろと転がってしまうため、ベッドから転げ落ちたことが何度もあった。
(世の結婚している女性は偉大だわ・・・。)
そう達観しつつある。
そして最近は、大臣にも側室にも動きはなく、ただ女官が部屋から出てこないとしか噂がないためそろそろ皇帝陛下が側室に女官の安否を問おうかとヴァンディミオン殿下に相談があった。
大臣と側室に自棄になられても困るために監視をした上でわざと放置していたが、後宮内で女官一人いなくなったことは気にもされないのかと噂がでてきている。
ランスロット帝国は皇帝陛下を頂点とした絶対王政だが、小さなほころびから貴族たちや国民との絆が崩れてしまっても困る。
できれば女官を秘密裏に救出してからのほうがよかったのだが、側室も外出をしないために機会がなかった。
ただ、出入りは厳重に見張っていたため、最悪なことになっていないと思えることだけが希望だ。
皇帝陛下が側室と大臣を呼び出し、その間に部屋を検めることができれば一番いいのだが、建前をどうするかヴァンディミオン殿下と執務室で二人で悩む。
もちろん私はヴァンディミオン殿下の膝の上だ。
真面目な話なので、できれば向き合って話しをしたいがなぜかこうなってしまっている。
(私ってヴァンディミオン殿下に逆らえないのね・・・。勇気が欲しい。)
切にそう思う。




