表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役令嬢は賢妃を目指す  作者: りのみ
81/94

悪役令嬢の問いかけ。

(こんな経験前にもしたわー・・・)


そう思いながら大臣のことをみると今更ながらに自分のしたことを実感したのかプルプルしている。

これなら以前よりも楽そうだと思い直して嘆願書をだしたことの意味をわかっていたのか質問する。


「側室の父が後宮での娘の立場を心配する。それは親心といったものなので問題はないでしょう。ですが、皇帝陛下に対してあなたが後宮での手当ての追加を要求するということがどんな意味を持つかお考えになって今回の嘆願書をお出しになったのかしら?」


そもそも皇帝陛下の後宮には様々な女性が存在する。

それぞれに実家があり、他国から嫁いできた方やランスロット帝国の貴族の娘がいる。

それぞれが皇后陛下は別格だが、皇帝陛下の寵愛を巡り火花を散らしていると言ってもいい。

残念ながらこのランスロット帝国に貴族にも派閥があり、側室方はそれを受け継いでいる方々もいる。

例外的に仲のいい側室というのも存在するが、それは皇后陛下という共通の恐怖の対象がいたり子供同士仲がいい場合だったりする。


そして皇后陛下が権力を持ち自分のことを蔑ろにした側室に対し嫌がらせをしたのは私も知っている。

皇后陛下の行動を皇帝陛下に対して改善して欲しいという嘆願書ならいいのだが、側室の一人だけを特別扱いして欲しいととれるこの嘆願書は問題だ。

後宮での無聊を慰めてくれた女官に対しての謝礼とするならば個人ですればいいだけの話なのに、多額の追加手当てが欲しいと嘆願するのは他の側室の実家が知ればどうなるか。

俗な言い方をすると、他の側室よりも贔屓しろと皇帝陛下に皇后陛下の行動を盾に直訴しているようなものだ。


「あなたの出したこの嘆願書は、他の貴族、特に皇帝陛下の側室方のご実家に対してどう思われるか考えて書かれたものかしら?」


再度問う。


「後宮は皇后陛下を頂点とし、側室方やお子様たちの住む場所。その場所で自分の娘を優遇されるべきとあなたが考えていると思われてもいいのかしら?」


この大臣にも政敵は存在するだろう。もしこの嘆願書が知れたらどうなるか?

貴族のネットワークを舐めてはいけない。多分もう知っている貴族は知っているだろうし、これからどんどん知る貴族は増えていくだろう。

そこまで大臣という位についていて考えなかったのだろうか?

この大臣と娘である側室を邪魔に思っている者もいるだろう。

追い落とす絶好の理由となる。


“大臣は娘をつかい皇帝陛下に取り入り多額の金銭の要求をせびろうとしている。”


といったように噂されるだろう。

私が問いかけるように事実の確認を行うことによって事の重大さが実感できただろうか?

そしてヴァンディミオン殿下がもう一度、大臣に対し質問する。


「セシリアの言ったように大臣のこの嘆願書は様々な憶測をされるだろう。それを踏まえてもう一度聞こう。ただの女官に対してこの多額の退職金をだす意味は何だろうか?」


大臣はそれでも答えられない。

黙って俯いているだけだ。


(ここまで言われても何も答えられないなんて、『何か隠し事をしています。』と言っているようなものなのに・・・。)


呆れしかない。

ここまで言ってもだんまりならば、これ以上質しても無駄だろう。

少し行動を見張った方がいいかもしれない。

ヴァンディミオン殿下に目配せすると、ヴァンシミオン殿下も私の考えがわかったのか話を切り上げようとする。


「大臣、格別な理由もなく追加の手当てを出すことができないのはわかっただろうか?」


大臣は皇帝陛下の方を縋るようにみるが、皇帝陛下は目を瞑り沈黙したままだ。


「娘可愛さに私はどうかしていました。大変申し訳ありません。」


そう何とか声をだす。

ヴァンディミオン殿下は


「理解できたようで安心した。では下がってくれ。」


そういうと、大臣は慌てたように退出する。

ヴァンディミオン殿下のことだから、行動を監視する者をつけているだろう。

ヴァンディミオン殿下と二人で玉座に座る皇帝陛下の方をみる。


「ヴァンディミオン、セシリア嬢。ご苦労だった。」


皇帝陛下が口を開く。


「あの者は、古くからこのランスロット帝国に仕える家柄ゆえにそれなりに取り巻く者もいるのだがこれからどうなるのであろうな・・・。」


そう疲れたように話し出す。


「ナルディアナのことがあるから私に対し強気ででれると勘違いしたのか。」


そう言う皇帝陛下に対しヴァンディミオン殿下は


「陛下、多分それもありますが、その退職金を支払う予定の女官が気になります。後宮を調査してもよろしいでしょうか?」


許可を求める。

いくら父親といえども皇帝陛下の後宮を無断で調査するのは不敬になる。


「なるべく穏便に済ませたい。ナルディアナとの関係の修復を私はしたいと思っている。あの大臣とカロリーヌのことを知ったナルディアナが何を考えるかわからん。」


そう。皇后陛下との関係の修復を望む皇帝陛下にとって、大臣とその娘を追い落とす絶好の機会を皇后陛下が見過ごすはずはないと考え、もう何もさせたくないのだろう。


「できるだけ穏やかに済ませたいと思います。」


ヴァンディミオン殿下が答えると皇帝陛下が立ち上がり


「苦労をかける。」


そう言い退出していった。



そして私たちもヴァンディミオン殿下の執務室に移動し二人で大臣の様子を話し合う。


(なぜまた私は膝の上にいるのかしら・・・・?)


ルシフェルトは調査しているのだろう、ここにはいない。メルディナも噂話を聞きに皇太子宮にいない。

ドアの外に護衛はいるが、部屋には二人きりだ。


「セシリア、今回もありがとう。」


ヴァンディミオン殿下の顔が近い・・・!


(その位置で微笑まないで!)


そう内心焦っているとヴァンディミオン殿下が真顔になる。


「大臣は皇帝陛下に直接話しをすればどうにかなると考えて、深く嘆願書をだす意味を考えていなかったようだが、そこまでして女官に多額の退職金を払いたいのはなぜだと思う?」


そう質問してきた。

大臣は嘆願書を出す重要さを改めて考え焦っていたようだが、それ以上に


「やはり多額の退職金を女官に払う必要があるのでしょう。ただ自分ではどうにもならず、皇帝陛下に何とかおすがりしようと考えたようですが・・・。一番考えられるのはその女官がとても大臣と側室にとって大事なことを知りお金を要求したのではないでしょうか?」


嘆願書の重要性よりも金策を優先しなければならなかったのだろう。

一番考えられるのは、その側室が皇后陛下に何らかの害を与えようとしたのが女官に知られたのか。そう思いヴァンディミオン殿下に


「何か皇后陛下に害を与えようとしたのではないでしょうか?」


親子で皇后陛下に恨まれるようなことをし、子供もいないため皇后陛下がその側室に対し随分とひどいことをしたと聞く。


「ただ、なぜ大臣の財政が悪いこの時期なのかがわからないな・・・。」


大臣の羽振りのいい頃なら手駒になる人間もいただろう。

その頃は、周囲が大臣とその娘を盛りたてようとしていたはずなのに・・・。


「ルシフェルトとメルディナ待ちですね。」


私がそう答えると、ヴァンディミオン殿下は


「そうだな。」


これ以上情報の無い中考えても仕方がない。


「セシリア、それなら二人きりだから少し親密になろうか?」


とんでもない提案をしてきた。

膝に座り腰を抱かれた私に逃げ場はない。


「えっと・・・。あの・・・。」


何も言えない私の腰を抱き寄せ、ヴァンディミオン殿下が私の髪を耳にかけ


「セシリア、可愛い。」


そう耳に口を近づけ囁く。

顔がかっと赤くなったのがわかった。

激しい動悸がする。


「セシリア、もっと私に色々な顔を見せて?」


そう言い、耳に口付けされる。


「っひゃん!」


変な声がでた。


ヴァンディミオン殿下は私の反応が面白いのか、額や頬のキスをしていく。

私に抵抗するすべはない・・・。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ