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悪役令嬢は賢妃を目指す  作者: りのみ
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悪役令嬢の観察。

皇帝陛下からのお返事はすぐにきて、皇后陛下に対して前向きに行動しようとしてくれているのだろう。その大臣をすぐに呼び出し、皇帝陛下同席のもと、ヴァンディミオン殿下と私で質す舞台を整えてくれた。


その日、謁見の間では皇帝陛下が玉座に座り、ヴァンディミオン殿下と私は一段下がった場所に立ち呼び出された大臣を待つ。

いくら皇帝陛下の側室の父親でもヴァンディミオン殿下の方が立場は上だと明確にするためだ。

そしてこの日のための準備は特にしていない。

あくまでも、なぜ高額な手当ての追加が必要になったか聞くためだし、ヴァンディミオン殿下が皇太子であり、皇帝陛下の公務を将来のために割り振られていると教えるだけだからだ。

聞いて正直に理由を述べるとは思っていない。

そんなことを思いながら待っていると、件の大臣が入室した。


体格は小柄で貧相だが狡猾そうな顔をしたその大臣は、ヴァンディミオン殿下と私をちらりとみてから臣下の礼をとる。


「ご苦労。」


そうヴァンディミオン殿下が声をかけると皇帝陛下をみつめる。

皇帝陛下は


「ヴァンディミオンは皇太子。将来皇帝になる立場なので徐々に公務の移行をしておる。今回私の名で呼び出したがヴァンディミオンの用事だ。そしてこちらは皇太子の婚約者だ。両名の質問に答えよ。」


とだけ言いあとは黙って傍観する姿勢だ。


「はじめまして。セシリア・エヴァンジェリスタです。」


私も挨拶だけする。


「大臣、聞きたいことはこの追加の手当ての嘆願書についてだ。他の側室に確認したが今までの手当てで十分賄えているそうだが、なぜ高額な追加が必要なのだろうか?一人だけ手当てを増やすことは混乱の元になることはわかりそうなものだが。そして女官に払う退職金としては随分破格だが何か問題でもあったのだろうか?」


そうヴァンディミオン殿下が言うとちらちらと皇帝陛下をみる。


「今回、皇帝陛下は同席しているだけだ。私の質問に答えてくれないだろうか。」


ヴァンディミオン殿下が言葉を重ねる。


「娘が女官に対し十分なことをしてやりたいと言うのですが、私にもどうにもできないので皇帝陛下にお願いしたいと思ったのですが・・・。娘は皇帝陛下のお傍に長くおりますが、子供ができず後宮では女官たちが慰めなのです。

その女官の一人が辞めるということで、多額な退職金を払ってやりたいと思うのはいけないことでしょうか?」


皇后陛下のことも非難しているのだろうか?皇帝陛下に対し情で訴える作戦なのか。


「後宮には子供のいない側室もいる。だが、皇帝陛下はその側室たちも蔑ろにしたようなことはないと思うが。女官は女性だから都合でやめる場合もあるだろう。その側室たちから退職金の嘆願がでたことはないが。その女官は特別な事情でもあるのだろうか?」


暗に何か知られて高額な退職金を払う必要があるのか聞いている。


「いえ。娘はただ今までの苦労に報いたいとのことなので・・・。」


自分の部屋に割り振られた予算内で済ますことが当たり前なのに、本当に理由がそれだけならただの我侭だし、今までそんなことのない側室なので、何か理由がありそうだ。


「では、特別な理由はないのだな。」


確認するヴァンディミオン殿下。


「はい。私も可愛い娘の無聊を慰めてもらった女官ですので力になってやりたいのですが、どうにかならないでしょうか?」


食い下がってくる。


「後宮に費やす予算は膨大なので側室たちに割り振られた手当て以上のことはできない。そして一人だけ特別扱いはできかねる。何か特別な理由があれば別だが・・・。」


ヴァンディミオン殿下も追及する。

ヴァンディミオン殿下の考案した <ビジュー・オブ・インペリアル> のせいで宝石商からの賄賂が少なくなったであろう大臣はどうしても追加の手当てを認めさせたいようだ。

その女官に何か弱みを握られたのだろうか?

ただの女官に対する退職金としては多いので水増しでもしているのかと思ったり、皇后陛下と仲が悪いとのことだったので悪口を聞かれたか、実害を与えようとしたのか理由を考えたがここまで食い下がられるとしっくりこない。

皇后陛下に対してそんなことをしたら重罪だが、十年以上も仲が悪いのが当たり前になっていたのに今更事を起こそうとする必要はないだろう。

手当て以外に実家からの援助で随分豪華な生活をしていたようだが、その援助が乏しくなり焦ったか・・・。

大臣をみながら理由を考え、否定してを繰り返していたが納得できる理由が思い浮かばないが、もやもやする。


「私からもよろしいでしょうか?」


ヴァンディミオン殿下の追及に答えず、それでも食い下がる大臣をみていたらいらいらしてきた。


「セシリア、何か?」


ヴァンディミオン殿下が私の方をみるが、私はどうしても大臣に聞きたかったことを聞いた。


「後宮は皇帝陛下のための花園。その花の父親だからと言って皇帝陛下に嘆願書をだすことの意味をあなたはお解りなのかしら?」


そう、後宮は政治的配慮により側室になった女性もいる。

側室が実家の指示で皇帝陛下に対して何らかの便宜を図って欲しいというのは皇帝陛下と側室の内々の話で済ますことができる。

だが、嘆願書となると皇帝陛下の配慮が悪いと公に批判していると思われても否定することは難しい。

そして側室本人の訴えならまだしも、大臣の親の名前での嘆願書・・・。

大臣なのにそんなこともわからなかったのか。それとも焦っていたのか。

そう思っての質問だったのに、当の大臣は意味がわからないという顔をしている。


「嘆願書を出したことを、他の側室方の実家が知ったらどうなるか考えての結果ですか?」


わかりやすく聞くと大臣の顔色は紙のように白くなった。


(・・・考えていたら出せないわよね。)


そう思い、ヴァンディミオン殿下には理由の追求を。私は大臣に対して嘆願書をだすことの意味を説明することにした。




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