悪役令嬢の事件発生?かもしれない。
メルディナを呼ぼうと思ったけれど、一人悶々と考えていた時間が思ったよりも長かったようで、朝起こしに来てくれた時に相談を持ちかけてみた。
「私、ヴァンディミオン殿下に対して自信がないの。」
「セシリア様。もう少し詳しく言っていただかないとお話の内容がわかりかねます。」
そう返されてしまった。
でも何て言ったらいいのか検討がつかない。
「ゆっくりと、整理しなくてもよろしいですから端的におっしゃらずにお気持ちをお話ください。」
そう言われたので、ぐちゃぐちゃな内心を吐露してみる。
「ヴァンディミオン殿下のことが好きなの。」
「わかっております。喜ばしいことです。」
そう冷静に返してくれると話しやすい。
「でも、ヴァンディミオン殿下のことを考えると恥ずかしくて。公務に私情を持ち込まない自信はあるけれど、後からきっと恥ずかしいわ。ヴァンディミオン殿下が私にしてくださることは嫌ではないのに、私は失神したり、きちんと対応ができないの。どうしたらいいかしら?」
思ったことを言ってみる。
「セシリア様・・・。初恋とはそういうものです。セシリア様はヴァンディミオン殿下のことが、自分でもどうしたらいいのかわからないくらいお好きなんですね。それは人として間違えた感情ではございません。セシリア様は、今まで経験したことのない感情に戸惑っているだけでございます。」
「私のこの考えをヴァンディミオン殿下は嫌がらないものかしら?」
「セシリア様の公務に対しての姿勢はヴァンディミオン殿下もお認めでしょう。セシリア様のお気持ちはヴァンディミオン殿下に正直におっしゃってみたらいかがでしょうか?決して嫌がられはいたしません。むしろ好ましいと思われるかと・・・。」
そうメルディナが言ってくれた。
本当にそうかしら?
失神しても、言動が怪しくなってもヴァンディミオン殿下は私を嫌がらないかしら?
今日一日悩んでいたいけれど、皇帝陛下の公務も少しずつこちらに回してもらうのでヴァンディミオン殿下の執務室にそろそろ行かなくてはならない。
昼食は一緒にするお約束だから、その時に聞いてみようかしら。
そう思いながらメルディナに手伝ってもらい身支度をする。
書類仕事が主なので、動きやすいドレスに装飾品はヴァンディミオン殿下にいただいたネックレスだけにしよう。
髪の毛も邪魔にならないように、上の方を編み込みまとめる。
いい加減な姿勢でヴァンディミオン殿下で失望されることのないよう、気持ちを切り替えて執務室に向かう。
「ヴァンディミオン殿下。お手伝いに参りました。」
「ありがとう、セシリア。」
声をかけて入室すると大量の書類が机においてある。
執務室には私の机も置いてもらい、私にできることは私が。ヴァンディミオン殿下と協議する必要のあるものは区別しておき、後からまとめて処理することにする。
「セシリア、すまない。こちらの方を先にしてもらってかまわないだろうか?」
「かまいません。ところでヴァンディミオン殿下、使者を立てる必要の案件がございます。こちらはいかがいたしましょう?」
「ルシフェルトにまわしてもらえるか?ルシフェルト、使者の選定をしてくれ。」
「こちらの嘆願書は過去に遡って報告書がみたいです。」
「それはこちらにある。」
そのように協力して何とか昼食の時間をとることができた。
「セシリア、私一人でするよりもとても早く仕事が進むよ。」
「ありがとうございます。あと本日残っているのは協議する必要のあるものですわ。それと、不審な追加の手当ての嘆願書がありましたの。」
そう言い書類を手渡す。
ある一人の側室付きの女官が辞めることになり、退職金を出すことが慣例なので本来なら側室に割り当てられている手当ての中から出すのだが、その金額が大きく手当ての追加を欲しいという嘆願の書類だ。
十分な予算が後宮の側室の手当てには割り振られているので緊急な事態以外、追加は認められない。
それなのに、その側室に対する追加の手当てについては一人の大臣から書類が回ってきている。
ヴァンディミオン殿下はその書類に書いてある大臣の名前と側室の名前をみてため息をつく。
「セシリア、この嘆願書をだした大臣は側室の父親だ。」
側室が父親である大臣に頼んで、手当ての追加の嘆願書をだしてもらったのかしら?
でもこの金額は明らかに大きすぎる。
「何か問題があったのでしょうか?」
「多分・・・。側室に対しての手当ては人件費も含まれているから、女官が辞める時に払う退職金は付いている側室が払いたい金額を決める。ある程度の年数を考慮され、また側室の対面もあるから大体皆同じような金額になるのだが・・・。おかしい。それにこの側室は大臣の娘だということで皇帝が考慮していたはずだが・・・。」
おねだりには極力答えていたということだろう。
「この側室は、皇后と特に仲が悪くてね。」
皇帝陛下に婚約者が決まる前、随分と自分の娘を勧めたようだが同じ年頃の皇后陛下が婚約者に決まってしまったので、ならば側室にと熱心に勧めたという話だとヴァンディミオン殿下は言う。
「大臣の家柄は、このランスロット帝国でも古い方で人脈もあるので皇帝もあまり蔑ろにはできなかったらしい。」
年頃で言えば皇后陛下の方が皇帝陛下に近かったためにそのようになったらしい。
それにその大臣は年がいってからできたその娘を随分と可愛がっているとか。
「何かありますわね。」
そのような話をしながら時間が過ぎてしまい、自分の気持ちを話そうとしていたと気づいたのは自室に帰った時だった。




