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悪役令嬢は賢妃を目指す  作者: りのみ
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皇后陛下と皇帝陛下。

豪華な部屋の中、豪奢な女性が周囲の女官たちに宥められても気持ちがおさまらないのか、豪華な調度品を床や壁に投げつける。


「皇后陛下、お静まりだくさい!」


そう懇願する女官の手を振り払い、なおも床に散らばった陶器の破片を踏み付ける。


「私の可愛いジュリウスがっ!あんなに小さい時から大事に、大事にしてきたジュリウスが私の言うことを聞かなくなるだなんて!」


そう叫び、一人の女官の手を掴み、顔を近づけて問う。


「私は何か間違えたのか?」


つかまった女官は怯え、顔を青ざめさせその問いに答える。


「申し訳ございません!私ごときにはわかりかねる質問でございます!」


そう言い顔を伏せる女官を一瞥し、イライラと部屋の中を歩き回る。


「あのこや婚約者に今まで会う機会などなかっただろうに・・・。私に逆らってまでどうしてあのこといたがるのだろう?黒い髪に蒼い瞳のあのこの事なんてどうでもいいだろうに・・・。」


ぶつぶつと言い、苛立ちを抑えられないのか女官の伸ばす手を振り払う。


(気に入らない、気に入らない、気に入らない。あのこのことなんてどうでもいいだろうに。皇帝陛下そっくりのジュリウスを私は今まで可愛がってきた。あの子を産んで顔をみた時どんなに嬉しかったことか。あのことは似ても似つかない金の髪に碧眼の皇帝陛下と私の子。最初にジュリウスが生まれていたら私があんな状況に陥ることはなかった。あの頃を思い出すだけで虫唾が走る。またあのこは私に辛酸を舐めさせるつもりなのか。)


周囲にいる女官たちの言葉が聞こえていないのか、自分の考えに没頭しているようで割り散らかした陶器の破片を踏んだことにも気づいていない。

そんな中ドアが叩かれ部屋の中にいた女官が返事をする。


「皇后陛下、皇帝陛下がお越しです。」


その言葉に我に返ったのか、女性は立ち止まる。


「陛下が・・・?どうして・・・?」


呆然とした表情で返事とも言えない言葉が唇からこぼれる。

少ししてその女性の表情が、穏やかな優しさを浮かべた微笑みに変わる。


「少し支度をするので、お待ちいただくように言いなさい。」


そう言うと周囲の女官に合図をして、髪をブラシで梳かさせドレスを整わせる。


少しすると、女性の周りには割れた陶器が転がっているが、豪華な部屋にふさわしい美しい微笑をたたえた豪奢に整えられた女性が立っていた。


「部屋の掃除をしておくように。」


女官たちに一言を残し、部屋を出て行く。

その女性の出て行った後、一瞬、安堵したような空気が流れたがすばやく部屋がかたずけられる。



皇帝は、皇后の間にあるソファーに座り女官の煎れた紅茶を飲んでいた。


「陛下、お待たせして申し訳ありません。」


微笑みながら、皇帝のそばに来た皇后は頭を下げる。


「よい、ナルディアナ。急に訪れて悪かった。」


「いえ、皇帝陛下の後宮でございます。私に何か御用でしょうか?」


そう言いながら促されてソファーに腰掛ける。


「ナルディアナと二人きりにせよ。」


皇帝の言葉で部屋にいた者たちは退出していく。

皇后は少し怪訝そうな顔をしたが、特に何も言わずに座っている。


「ナルディアナ。二人きりで話しがしたいと思ってな。」


「改まって何の御用でしょう?」


少し考えた皇后は、何かに気づいたのか。皇帝に対して座ったまま頭を下げる。


「陛下。晩餐会では申し訳ありませんでした。お見苦しいところをお見せいたしました。ジュリウスにも私からよく言い聞かせますので、なにとぞお許しを・・・。」


そう言う皇后に対して皇帝は、決意した表情で話し出す。


「ナルディアナ。ジュリウスのことは今はおいておこう。」


「陛下?今はというのは・・・?」


顔を上げた皇后の顔が不思議そうな表情になる。


「ナルディアナ。私はお前に謝らなくてはならないのかもしれない。」


そう言って皇帝は皇后の顔を正面から見つめる。


「ヴァンディミオンが生まれた時、私がお前のことを信じているから気にすることはないと思い、公務を優先させてしまった。ナルディアナがヴァンディミオンのことを構わなくても、少ししたらナルディアナも落ち着くだろうと考えてしまった。そしてジュリウスが生まれた時、喜んだナルディアナをみてヴァンディミオンのことも気にかけるようになるのではないかと期待した。そしてヴァンヂミオンに危害を与えようとしたナルディアナを制止するよりも、ヴァンディミオンを留学させてしまった。」


言葉を聞いていた皇后の顔色から血の気が引いていく。


「なぁ、ナルディアナ。私が正面から止めていたらお前は変わっていたか?」


その言葉に皇后は俯き何も話さない。


「私は、事が表ざたになりお前を失うのが怖くて何もすることができなかった。」


その一言に皇后は、はっとしたかのように顔をあげる。 


「私は、最初を間違えてしまったのだろう。ナルディアナ、申し訳なかった。」


そう言い頭を下げる皇帝を皇后は、いつも顔に浮かべている微笑みを消した無表情で見つめる。


「皇帝陛下。それは皇太子のための謝罪ですか?」


そう皇帝にたずねる皇后の表情には何も浮かんでいない。


「いや。私が今まできちんと向き合わなかったことの罪深さを晩餐会で思い知ったのだ。」


皇帝は苦い顔をして言うが、重要なことを言い出す。


「ヴァンディミオンが皇太子となり、セシリア嬢が手助けするということで、私の仕事を少しずつヴァンディミオンに任せて時間を作ることにしたのだ。」


その一言に皇后の眉が一瞬上がり、すぐに戻る。


「新しい側室をおあげになりますか?」


平坦な声で皇后が質問する。


「いや。少しでもナルディアナとジュリウスとの時間を作ろうと思ったのだが。どうだろうか?」


皇后は驚いたのだろうか。言葉を発しない。

そんな皇后に対して皇帝は


「ヴァンディミオンに任すことのできる公務は皇太子宮に任せるつもりだ。ある程度落ち着くまで時間が必要だが、ナルディアナ、ジュリウスと三人の時間を過ごそう。」


そう言って退出していった。



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