悪役令嬢の真剣な語らい。
晩餐会が無事に(?)終わりヴァンディミオン殿下の執務室に移動した。
そこで二人でゆっくり今後のことを話すためにお茶を飲みながら情報の共有をすることにした。
ヴァンディミオン殿下は機嫌がいいようで、嬉しそうな顔をしている。
(きっと皇后陛下の対処を皇帝陛下が前向きに考えてくださったのが嬉しいのね。ただそのためには国を治めるという重圧の一部を背負うことになるわ。私がお支えしなければ・・・。)
そんなことを考えていると
「セシリア、皇帝陛下の仕事を少しでも任されるということは君にとって大変な気苦労をさせることになると思うけれど本当によかったのだろうか?」
少し不安そうな顔で聞いてきた。
「ヴァンディミン殿下・・・。ヴァンディミオン殿下は皇太子、いずれ皇帝陛下になられるお方です。そして私は皇太子妃になるのです。少し早いだけですわ。それに公務を殿下が少しでも任され、その時間で皇后陛下を皇帝陛下が癒してくださるのならば、とても良い方法だと思います。」
(命の危険が少なくなり、皇帝陛下の了承を得て仕事をすることができるなんて素敵だわ。)
ヴァンディミオン殿下や私にとって望ましい形でしょう。
そう考えていると、ヴァンディミオン殿下が私の片手を両手で握り締め
「もう一度セシリア、君に誓うよ。私は側室はとらない。君に自制や私の伴侶にふさわしい行いを望み、イストール国のように側室がいることでそれぞれの役割をこなせばいいということはできない分全て君に重圧をかけると思う。けれどセシリアだけを私は愛する。」
そう言ってまた私の指先にキスを落とす。
(はぅ!またヴァンディミオン殿下が・・・)
動悸が激しくなり、身体が熱くなり、顔から火が噴出しそう・・・。
そんな私を気にせず
「君だけが私の伴侶だ。私は私の持ちうる全てをもって君の事を守ろう。」
そんなことを言い募る。
私のことを考えてください。
「ヴァンディミオン殿下、あの、お気持ちは嬉しいのですが・・・。少し、その・・・。」
何を言っていいのかわからなくなり脳みそが沸騰してうまくしゃべれない。
「君が異性に慣れていないことはよくわかっているが、私は私の気持ちに嘘がつけない。そして私は私の気持ちを君に伝えたい。」
そう言って私の手を包み込んだまま、じっと見つめてくる。
「ヴァンディミオン殿下。本当に申し訳ないのですが、私がもちません・・・。」
やっと言葉がだせた。
「セシリア、君に無体なことをする気はない。君が私に慣れるのを待つ気でいるが、今日だけは許して欲しい。」
そう言って私の手を引いてソファーに座って私を膝に乗せる。
私を抱きしめるヴァンディミオン殿下の腕が長い。
私の心臓が激しく脈打っているのがヴァンディミオン殿下に聞こえてしまいそうなほど身体が密着する。
「黒い髪に蒼い瞳で生まれたことをどれだけ恨んだかわからない。」
そうぽつりとこぼされたことで少し気持ちがおさまった。
「この髪と瞳により、母である皇后に疎まれてランスロット帝国にいることができなかった。諸国を転々と留学している時に何度もなぜ私だけ。という思いがあった。」
少し俯いていた顔をあげる。
「でも、そのおかげでセシリア、君に出会うことができた。」
そう言って笑顔で私のことをみる。
「私はこの外見のために命の危機にあったが、それが君に出会うためだと思うと全てが報われる。」
そう言って私の額にキスをする。
もう私は固まるしかできない。何とか意識を手放すことのないように全力で気力を引き絞る。
「私はこの帝国の皇太子だ。逃げていた頃と違い私には責任がある。セシリア私のことを支えてくれ。」
そう言って少し頭を下げる。
私は今の自分の状況を忘れて
「ヴァンディミオン殿下。私はヴァンディミオン殿下とともに生きるためにこの帝国に来たのです。二人で力を合わせましょう。」
気持ちを伝えた。
私はランスロット帝国に行くと決めた時の気持ちを思い出す。
「私はヴァンディミオン殿下を支えるために精一杯努力するつもりです。幸い皇帝陛下も私たちの気持ちをわかって下さったでしょう。二人で頑張りましょう。」
そう言うとヴァンディミオン殿下は私の胸に顔を突っ伏させ
「ありがとう、セシリア。君の気持ちが嬉しい。」
そう言って少し二人でそのままの体制でいたが、少ししてヴァンディミオン殿下が顔を上げ
「これからは、皇后に対して父が少しでも会う時間を増やすというのはいいとして、ジュリウスが問題だな。」
と言い出した。
「私はこのランスロット帝国に帰るまで会ったことがなかったのに、なぜあんなに私に会いたがるのか・・・?」
「皇后陛下がジュリウス王子を溺愛しているというのは本当なんですね?」
「そうだ。私がこの帝国にいない間も情報収集はしてきた。皇后は他の側室の子供とジュリウスを決して交流させず、同席しても他の子供たちはジュリウスに対して一線を引いているようだったという情報もあった。」
「他の側室方のお子様たちは仲がよろしいのでしょうか?」
「ある程度の対立は母親同士であっても、子供たちは同じ後宮内にいるのでそれぞれ交流はあるらしい。」
「でしたら、ジュリウス王子は皇后陛下によって孤独にさせられていたのではないですか?」
「どういうことだ?」
「皇后陛下は、お優しくそれとなくジュリウス王子の行動を制限していたのではないでしょうか?」
「あぁ、そうらしい。」
「ジュリウス王子が、他のお子様たちと仲良くしたいと望んでも皇后陛下によってできなかった。だから、同じ母を持つヴァンディミオン殿下に期待していたとは考えられませんか?」
「やはり、そう思うか?」
「ええ。きっと寂しい思いをしている時にヴァンディミオン殿下ならばと思っていたことが膨れ上がってしまい、今回のことにつながったと考えられます。」
「だが、皇后は私とジュリウスが接触することは許せないだろう。」
「そうですね。ただ皇后陛下がどのようにジュリウス王子をおさえるのか。それによって私たちの行動も考えなくてはなりません。」
私は今の自分がヴァンディミオン殿下の膝の上にいるという状況を忘れて、ヴァンディミオン殿下と真剣に話し合った。




