表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役令嬢は賢妃を目指す  作者: りのみ
71/94

悪役令嬢の考察。

ヴァンディミオン殿下も緊張しているのか、今日は私の心臓に悪いことをする気はないようで完璧なエスコートをされ晩餐会に臨んだ。

皇帝陛下一人が上座に着き、皇后陛下とジュリウス王子が皇帝陛下の左手側に、ヴァンディミオン殿下と私が右手側に座る。

私の正面に座るジュリウス王子はとても楽しそうな顔をしているが、ヴァンディミオン殿下の正面に座る皇后陛下は、穏やかに微笑んでいるが目が笑っていなくて能面の笑顔である。


「ヴァンディミオン、セシリア嬢のしているネックレスが今回お前の言っていたものか?」


皇帝陛下が話しかけてきた。


「はい。エメラルドの特徴を考えて中央に大きなものを配置しました。エメラルドは貴重な宝石なので周囲の宝石は少し価値的には劣りますが、カットを工夫して見劣りしない出来映えになっていると思います。」


そうヴァンディミオン殿下が説明する。

女官に合図をして、蓋のないビロードのケースを持ってこさせ、ヴァンディミオン殿下が私の後ろに回りネックレスを外す。


私の首に一瞬触れた指先に激しく動揺がしたが誰にも悟られていないだろう。


ネックレスが目の前に置かれた皇帝陛下は手に取り、角度を変えたりして観察している。


「傷を内包しているエメラルドは衝撃に弱いから大きさが大事だが、その周囲の宝石のこともよく考えたものよ。」


「セシリアと考えたのです。」


皇帝陛下の視線が私の方を向き


「セシリア嬢、さっそくヴァンディミオンの役に立ってくれているようだな。礼を言おう。ヴァンディミオンの書類にあったが、イストール国でしていたことをこのランスロット帝国でもしてみたいということだったが、何か必要なことがあったらヴァンディミオンに言うがいい。」


そう私に言葉をくれた。


「ありがとうございます、皇帝陛下。ヴァンディミオン殿下とよく相談して、私もこのランスロット帝国に尽力したいと思っています。


そう返すと


「ナルディアナもネックレスをよくみるといい。」


と言って女官にネックレスを運ばせる。

皇后陛下は目の前に置かれたネックレスをみて


「立派な細工ですね・・・。」


そう言ったが、続きをジュリウス王子が待ちきれないといったように遮った。


「ヴァンディミオン兄上、僕も兄上のお手伝いがしたいです。」


いきなりのことに、皇后陛下も一瞬驚いたようだが


「ジュリウス、皇太子はお忙しいのですよ。」


気を取り直したのか、優しく微笑んで嗜める。


「だから僕もお手伝いするって言っています!」


ジュリウス王子は子供が駄々をこねるように言い募る。


(皇帝陛下のいる前でこの態度とは・・・。幼いと思っていたけれどこれほどとは思わなかった・・・。)


表情にださずに呆れる。

これは、本格的にジュリウス王子とは関わらないほうがいいかもしれない。


「ジュリウス、あなたにはまだお仕事は早いです。」


そう言う皇后陛下の言葉も耳にはいらない様子で


「だって僕もやりたい!」


そう言って皇后陛下の話を聞きもしない。


「ならばジュリウス、宝石の特徴を知っているか?」


静かに皇帝陛下がジュリウス王子に問いかける。


「父上・・・。知りません。でも・・・」


「ジュリウス、ヴァンディミオンは自分で覚えた知識を元に考えて、このネックレスを作ったのだ。知識もなく手伝うと言っても何ができる?」


そう静かだが厳しく言葉を重ねる。

ジュリウス王子は黙ったが、納得した様子はない。


「知識がないのならば、これから学べばよい。ジュリウスは今までの勉強に加えて、宝石についてナルディアナが教えてやればいいだろう。」


そう言いジュリウス王子から視線を皇后陛下に向ける。

皇后陛下は皇帝陛下の言葉に微笑みながら


「ジュリウス、宝石は特徴を知らないと扱いが難しいのです。皇帝陛下も言ったように知らないことは手伝うことはできないでしょう。母上が教えられることは教えますから・・・。」


そうジュリウス王子に言い聞かせる。


「だって母上が、ヴァンディミオン兄上はお忙しいから皇太子宮に行ってはいけないと言うから・・・。僕だってヴァンディミオン兄上とお話したりしたい。」


そう先ほどよりも勢いをなくした言葉だが、一生懸命ヴァンディミオン殿下と話がしたいと言う。


(皇后陛下の笑顔が怖い!目が先ほどと比べて冷たい!後ろに般若がいるっ!)


背筋がぞくぞくするが、皇后陛下の隣に座るジュリウス王子は気が付かないのか、まだぐずっている。

皇帝陛下は何を考えているかわからない眼差しで、ヴァンディミオン殿下は無表情に二人をみている。

ここで私が口を出すこともできず、黙って座っているしかない。


「ジュリウス、皇太子はお忙しいのですよ。」


「でも母上・・・。僕が知識不足なのはわかったけれど、もっとヴァンディミオン兄上や義姉上とお話したりしたい。」


私のことも言い出したジュリウス王子。


(絶対皇后陛下の不興を買った!逆恨みだと思うけど!)


そう思っても、皇后陛下とジュリウス王子の会話には入れない。


(優しいふりして制限をかけるのはいいけれど、我侭を言い出したらその場合強く止められないのよねー。)


会話には入れないし、誰も止めないし、皇后陛下にロックオンされた気配があるので現実逃避を試みる。


宝石の特徴って他に何かあったかしら?


水分がないと割れるものもあったような気がするから後で調べなくちゃ。


ヴァンディミオン殿下の交友関係で何かあるかしら?


チェーンの代わりに真珠をビーズのようにしてもいいわねぇ。


そう言えば、孤児院も先ほどの皇帝陛下の言葉で許可されたと考えていいのかしら?

それなら、協力してくれる貴族を募る必要があるから、皇后陛下側の人間を避けるためにヴァンディミオン殿下と相談しなくては。


そんなことを考えていたが、


「ジュリウス。皇太子と婚約者はしなければいけないことがたくさんあるのです。聞き分けのないことを言って母上を困らせないで。」


少しきつく皇后陛下がジュリウス王子に言うと、ジュリウス王子の顔が泣きそうに歪んでしまった。


(あの顔は納得してないわ。きっとまた後宮を抜け出してくるわね。)


そう思ってついヴァンディミオン殿下の方をみると、殿下もこちらをみたので目が合った。

ヴァンディミオン殿下は何ともいえない顔をしている。

そして、二人で皇帝陛下の方に目を向けると何か考えている様子だったが、ヴァンディミオン殿下の方をみて苦笑した。


ジュリウス王子が泣きそうな顔になったため慌てて何か言っている皇后陛下に、これから先私も狙われるのかと思うと怖いけれど、その都度対処するしかないかと決めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ