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悪役令嬢は賢妃を目指す  作者: りのみ
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皇后の内心。

皇帝陛下があのこの帰還を知らせてきた。

帰ってこなければよかったものを。

黒い髪に蒼い瞳の誰にも似ないこなんて私は知らない。

私の可愛いジュリウスが皇太子にはふさわしいと思っても、このランスロット帝国の決まりであのこがいる限り、決してジュリュリウスは皇太子になれない。本当に私の邪魔にしかならないこ・・・。

しかも、イストール国の“次期賢妃”と名高かった王太子妃だった女をを連れて帰ってきた。


その女が男児を産んだら私の可愛いジュリウスはどうなる?

不当に受けてきた仕打ちのために今まであのこを消そうとしてきた私に、あのこは将来きっと牙を剥く。

可愛いジュリウスをあのこはきっと狙ってくる。

生まれたことで私を苦しめたのだから、私が苦しむことなんて見通しているだろう。


そう苦々しく思いながらも、謁見の間の皇帝陛下の隣に座り到着を待つ。


(たかだかイストールの小娘が皇太子妃だなんて生意気な。)


と思いながら皇帝陛下の手前穏やかに微笑んで待っていたら謁見の間にあのこが堂々と入ってきた。


何も言わないでいたら、皇帝陛下が話をしていく。メルディナがこの宮殿に皇太子妃付きとして戻ってきたと?

やはりあのこは私の気に障ることをする。

しかも皇太子妃としての教育は私がしなくていいと?!元女官のくせに!

でも皇帝陛下が決めてしまったことだから私は何も言えない。

あのこと一緒にしか皇太子宮からでないのだったら消すことができないではないか。


あのこをみたくない。声も聞きたくない、聞かせたくない。

だからあのこを視界にいれないようにしているのに、黒い髪が目にはいる。

忌々しい、腹立たしい、気分が悪い。

あのこをみると自分が不当に扱われていた時のことを思い出す。


挨拶が済み後宮にある自室に戻ろうとすると、ジュリウスに途中で会った。


「母上!」


こんな感情の時にこの子をみると心が安らぐ。

皇帝陛下にそっくりな私と陛下と同じ髪の色と瞳の子。

少し皇帝陛下よりも瞳の色が薄いのは私に似ている。

あんなこよりも、この子の方が皇太子に相応しいというのに、ランスロット帝国の決まりが邪魔をする。

この子が皇帝に即位したらどんなに私の心が安らぐだろう。

そう考えるとあのこの存在が忌々しい。

ジュリウスを見つめていると


「どうかなさったのですか?」


首を傾げて聞いてくる。


「何もないですよ。ジュリウスこそこちらに何か用があったのですか?」


「ヴァンディミオン兄上が婚約者を連れて帰還したと聞いたので、お会いできるかと思って来てしまいました!」


「そうなのですか・・・。皇太子やお相手の女性はきっと長旅で疲れていることでしょう。お会いするのはまた今度にしたらどうでしょう?皇帝陛下がお会いする機会を作ってくれますよ。」


「でも・・・。」


「ジュリウス。これから皇太子妃となる、セシリア・エヴァンジェリスタ嬢はとても多忙になるのです。ランスロット帝国に来たばかりなのですから、こちらが気遣いをしなくてはなりませんよ。」


「わかりました。義姉上になる方はセシリア嬢というんですね!」


「銀色の髪のとても聡明そうなご令嬢でした。皇太子宮に住み共にこちらの国のことを覚えるとのことことだったのでお会いする機会はありますよ。」


「そうですね。私に気遣いが足りませんでした。母上は本当にお優しいですね。」


「ジュリウスこそ。優しい子ですね。」


そう会話しながら、後宮に戻ると女官がジュリウスを探していた。


「ジュリウス、女官が探していますよ。どうしたのですか?」


「えっと・・・。ヴァンディミオン兄上たちに会いたくて抜け出してきてしまいました。」


「女官を困らせてはいけません。まだ今日の勉強が残っているのでしょう。教師を待たせてはいけません。」


「はい。では失礼します。」


パタパタと小走りに駆けていく様子に愛らしさを感じる。


あんなに愛らしい私の子があのこがいるというだけで皇太子になれないというのが本当に腹立たしい。

今日視界に入った顔を思い出し、怒りがふつふつと沸いてくる。

無機質に私をみる蒼い瞳・・・!

自室に戻り女官に紅茶を煎れさせる。

腹立たしい!

そう思った瞬間カップを壁に向かって投げつけていた。

壁に当たったカップが割れて散らばる。

こんなものでは私の気が納まらない。


なぜあのこは私の邪魔をする?

他国に留学している時、帰ってこなければ良いと何度も思った。

転々としていたため、いる場所が後からわかるという状態だった。

ランスロット帝国に何年もいなかった王子が皇太子になるよりも、私の可愛いジュリウスがなった方がいいのではないかと何度も思った。

ジュリウスは若き日の皇帝陛下そっくりに育っている。

皇帝陛下にそれとなく言ってもあのこが皇太子になる決まりだと取り合ってもらえなかった。


それにイストールの小娘、夫だった王太子の地位を剥奪された王子の後を追いかければよかったではないか。

婚姻が無効になったからといってこのランスロット帝国に皇太子妃になるために来るとは。

絶対に男児を産むなんて許してなるものか。


そしてメルディナ。

あの女もきっと私の邪魔にしかならない。

実家の都合で辞めた聞いて安心していたのに。

ただ、今はもう皇帝陛下の手がつくことはないだろうが、私のことをきっと恨んでいるだろう。

謁見の間にて直答を許されるなんてこれも私の気を苛立たせる。


あのことその周囲は皆、私のことを苛立たせる。

そして、きっと可愛い私のジュリウスに何かよからぬことをするに決まっている。

何か良い方法はないものだろうか?


カップを割ったところで私の気持ちはおさまらないが、それよりもこれから先のことを考えなくては。

私はソファーにゆっくり腰を下ろし考えに耽る。



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