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悪役令嬢は賢妃を目指す  作者: りのみ
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(勘違い)ヒロイックサーガ

鐘の音でそこに住まう人間達が動く神殿。

ある日、山奥にあるその神殿で事件が起こった。

神官長が倒れたのだ。

古参の神官は神殿にいる神官を集め神官長の症状を話し、誰か山を降りて一番近い村に医者を呼びに行かなくてはならないと話した。

季節は寒く、雪は降っていないが村まで山道を歩いて行かなくてはならない。

集まった神官がざわざわとしていると、一人の若い女性が前に出てきた。

周囲と同じ神官服を纏い、金色の髪にピンクベージュの瞳の可愛らしい女性だ。


「私が村まで降りて医者を呼んできます。」


真剣な顔でそう言いきった。

周囲はその女性をみて、古参の神官も難しい顔をしている。


「道は一応通っているし、明るい間にここを出れば夜までには村に辿りつけます。そして村人に事情を話し荷馬車があるでしょうからそれをお借りしてお医者様を連れてきます。」


その女性はそう言い切った。

古参の神官は難しい顔をしているが、他に村まで行けそうな神官はいない。仕方なくその女性に支度をしてすぐに村まで行くように指示をだす。


「ではエリス、すぐに支度をして村に向かってください。道は一本ですから迷うことはないでしょう。私のローブを貸しますので入り口で待っていてください。」


そう言って下がってローブをとりに行った。

エリスと呼ばれた女性は、台所で水筒と少しの食べ物の入った小さな袋を腰に下げ、外に向かい鍬を持って玄関に向かった。

ローブを持った神官が待っていて 


「・・・その鍬は何のために持っていくのですか?」


不思議そうに聞いてきたが、エリスは


「何かあった時のためです!」


そう言い切った。諦めた顔の古参の女性神官は


「くれぐれも気をつけていくように。無理だと思ったら引き返してきなさい。」


そう言って見送った。

エリスは頷くと開けられた門をくぐり外にでて道をまっすぐに前を向いて歩いて行った。

その後を神官達が心配そうにみていたが、門は閉じられた。


(これってきっとイベントよね?神殿にいるはずの『ヒロイン』が神官長が倒れたために外の世界に助けを求めに行く!途中アクシデントに見舞われた『ヒロイン』をイケメンが助けてくれる!きっとそうにちがいないわっ!)


スキップするかのようにエリスは道を歩いて行く。神官服の上にローブだけという軽装だが気にはならない。まだ見ぬイケメンに出会うために舗装もされていない道を村まで歩く。

喉が渇いたら水筒から水を飲み、少し食べ物を含み黙々と歩く。


(おかしいわね?誰にも会わないわ・・・。)


そう思い道を歩いていると大きな黒いものが前を阻む。


(きたわっ!イベントよ!)


大きな熊だった。馬より大きく冬眠前で気が立っているのだろうか?エリスのことを睨み付けているような気がする。


「キャー!!誰か助けてー!!」


そう叫びきょろきょろと周囲を見回すエリス。

・・・誰も来ない。熊はその声に興奮したのかエリスに向かって突進してくる。

間一髪横に倒れこんだエリスだが、顔から倒れてしまい、すりむいたらしく頬がひりひりとしている。


(何で誰も助けにこないのよ?イベントじゃないの?『ヒロイン』が襲われているのよ?!)


そう思って起き上がると熊がまだこちらをみて身構えている。


(何で私が熊なんかに襲われなきゃいけないのよ!私を襲って良いのはイケメンだけよ!はっ!これはきっと何かのバグじゃないかしら?イケメンがここに辿りつけていないのよ!)


エリスは覚悟を決めたかのように鍬を握りしめる。


(これもセシリアのせいよ。あの女ちゃっかりヴァンディミオンの皇太子妃になんて納まって、私はここで熊に襲われている・・・。ふざけんなっ!)


ふつふつと怒りが湧き起こり身体に力がみなぎってくる。


(ここで熊なんかに負けてられないのよ!『ヒロイン』であるこの私はぁ!!)


熊が立ち上がりその大きな手を振り上げる!


「悪役令嬢のくせにふざけるなー!!」


そう言ってエリスは鍬を熊に対して振り回す。


「ガゥ・・・(何だこの人間のメスは?)」


熊の動きが一瞬止まり、エリスの持つ鍬が鼻を叩く。


「ガフッ!(関わったらヤバイ!)」


「私はエリス・ユリエールよ!この物語の『ヒロイン』なのよ!どうしてこんな所で熊に襲われているのに誰も助けに来ないのよ!おかしいでしょー!!」


そう叫びがむしゃらに鍬を振り回し熊に向かって行く。


「(この人間のメスは何か危険だっ・・・!)」


熊はエリスを観察するようにみて、じりじりと後退していく。

そんな熊に構うことなくエリスは鍬を振り回し叫ぶ。


「やっぱりセシリアのせいよ!私をこんな目にあわせてっ!絶対許さないんだからー!!」


熊はエリスから距離をとり横の草が生えている方に飛込み逃げて行く。

エリスは肩で息をして熊の逃げて行った方を見つめる。


「『ヒロイン』なんだからここで熊なんかでてくるのがおかしいのよ。でもイベントならここでイケメンが助けに来てくれるはずなのに・・・。これもセシリアの存在によるシナリオの改変かしら?」


少しその場に立ち尽くしていたが、やっと考えがまとまったのかまた歩き出した。


(きっと村にはイケメンがいるはずよ。危険をおかして神官長を救うために村まで歩いてきた『ヒロイン』を村人は聖女のごとく称えるの。そして・・・うふふふふ。)


にやにやとして、道を歩くエリス。足取りは軽い。


(ヴァンディミオンがイストールに留学していたくらいだもん。村には実は身分を隠した王子様が滞在していたりして。お忍びで村に来ている王子様、聖女のような『ヒロイン』!二人は出会ってしまうの。そして王子様は自分の国に『ヒロイン』を連れて帰ろうとするのよ。神殿も危険を冒して村まで神官長を救うために行った『ヒロイン』の勇気を称えてイストールの王家に口添えするはずよ。そして『ヒロイン』は王子様に幸せにしてもらうのよ!)


道の悪いことを気にせずにエリスは村に向かって歩いて行く・・・。



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