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悪役令嬢は賢妃を目指す  作者: りのみ
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ヒロインによるヒロインの現状。

私はカインが旅立ったと聞いた時とてもショックだった。


どうして私を助けてくれないの?!


ユーリとランガと三人で逃げたと思った。

そう思っていたら、とても綺麗な杯を出され中身を飲むように言われた。

私の行いを反省し、神の側に行くようにと教皇が言って国王と騎士団長がみていた。


冗談じゃないわ!私は『ヒロイン』のエリス・ユリエールなのよ?!幸せになる権利があるの!


そう主張しても椅子に固定されているために、自分で飲む気がないのなら・・・と鼻をつままれ口に流し込まれた。


苦い、苦しい、身体が燃えるように熱い・・・。そう思っても意識を失うことができなかった。

数時間その状態で放置されたが、私は死ななかった。

国王たちは驚きこちらを化け物でもみるような目をしていたが、何度か同じ事をしても私が死なないのがわかると、今度は神殿に行かせると言われた。


『愛の貴公子達。~下克上の恋をしよう~』の悪役令嬢のセシリア・エヴァンジェリスタは卒業パーティーでカイン王子に今まで『ヒロイン』であるエリス・ユリエールにしてきたことを断罪され、婚約破棄されて神殿に送られてその一生を神に祈りを捧げて生きていくの。

そこは山奥にある女性だけが住む場所で、そこにはいったら出られないってあった。


そんな所に『ヒロイン』である私がなぜ行かないといけないの?!


そう訴えても誰も聞いてくれなかった。


私は粗末な馬車に乗せられて、数人の騎士に取り囲まれ神殿に向かった。

途中止まってくれたのは夜寝るのに宿に泊まる時とお手洗いだけ。食事は馬車の中で硬いパンを食べた。宿がない場合は馬車で寝ろと言われた。

騎士団長がほとんど横から離れずに見張っているので逃げることすらできない。


そうして神殿に着いてから、入り口の広間で騎士団長が偉そうなおばさんに何か言って私だけ残して帰って行った。その時に高い塀に囲まれた建物の唯一ある大きな門が閉ざされた。

その場で騎士団長を見送って門が閉められたのを確認したおばさんは私に向かって


「ここではあなたはただのエリスです。私は神官長のサラナと言います。ですが、これから私のことは神官長と呼ぶように。あなたはここで生活するにあたって覚えることがたくさんあります。それを教えるためにこのアリアを付けましょう。いいですか。侍女ではありません。あなたにここでの生活を教える者です。勘違いしないように。それから手紙を出すことはできません。また面会も外出もできません。ここでは自分のことは自分でやってください。あとはアリアに聞いてください。」


そう言って神殿の奥に行ってしまった。


アリアと呼ばれた神官の服装なのだろう。質素な紺色の長い裾の長袖の地味なワンピースのような物を着た化粧もまったくしていない髪の毛を一本の三つ編みにした私より少し年上くらいの子が


「アリアと言います。あなたの部屋に案内しながらここでの生活を説明します。ついて来てください。」


と言って奥に進んで行った。


説明をされながら後ろを歩いて行ったが、私はどうすればここから出られるかばかり考えていたら部屋についた。

粗末な小さなベッドと机とタンスがあるだけの狭い部屋だった。

私は今着ている服装を着替えるよう言われて、着ていた服はアリアが持っていってしまった。

仕方なくベッドに転がっていると、鐘の音が聞こえてきた。

しばらくしてアリアがドアを開けて


「食事の時間です。食堂に案内します。」


と言ってきた。食堂は少し薄暗く寒い広間に長いテーブルがありそこに椅子があるだけだった。

食事は硬いパンと少し野菜の浮いたスープだけ。飲み物は水。食器も縁が欠けている・・・。

学園の食堂の方が普通だった。

黙々と皆食事をしている中私は今までの生活を振り返っていた。


食事が終わりアリアについて行くと外に出た。

そこには井戸がありここで洗面をするらしい。

顔を洗いまた部屋に戻される。


「明日の朝迎えに来ます。朝のお祈りとあなたの仕事を教えます。」


とりあえずおとなしくしておこうと思っていたけど我慢ができずに、


「食後のお茶は?!」


「そんなものありません。」


「ベッドが乱れているんだけど?!」


「自分でやってください。私はあなたの侍女ではありません。ただあなたのここでの生活を教える者です。」


信じられない!唖然としているとさっさと部屋から出て行ってしまった。

ここに来るまでに疲れたし朝になったら神官長に訴えようと思い眠ることにした。


まだ薄暗い中、鐘が鳴りアリアが部屋に来た。


「礼拝の時間です。身支度をしてください。」


「まだ、眠いのだけど?」


「規則ですから。」


いい加減腹が立ったので


「私を誰だと思っているのよ?!エリス・ユリエールよ!」


「あなたはここではただのエリスです。」


「どうして私がこんなことになってるのよ!ここにはセシリアが来るはずだったのに!あんたなんかに教えてもらうことなんてないわよ!」


ベッドから怒鳴り散らしてもアリアは涼しい顔をして聞いてきた。


「では、義務を果たす気はないのですか?」


「そんな義務私にはないわよ!」


「わかりました。では。」


部屋をとっとと出て行った。

せいせいしたと思いまた寝ることにする。

次に目が覚めた時にお腹がすいたので昨日案内された食堂に行った。

誰もいない。


うろうろと建物の中を歩いていると、他の神官の服を着た女を見つけた。


「お腹がすいたのだけど?」


声をかけたらちらりと顔をみられて


「義務を果たさない者には何の権利もありません。」


と言われ立ち去られてしまった。

誰に話しかけても同じ言葉だけ。

外で畑仕事をしている集団に声をかけても同じ。


「アリアはどこにいるのよ!私の世話役でしょ。?!」


叫んでも答えは返ってこない。そのうち昨日の神官長がきたので


「私はエリス・ユリエールよ。こんな所にいるはずじゃないわ。それにどうして誰も何もしてくれないの?」


一生懸命訴えたら


「ここではあなたはただのエリスだと言いました。義務を果たさない者に権利はありません。特別な扱いの者などいないのです。」


そう言われ


「なら出て行くわ!!」


叫んだら


「どうぞ。お好きに。ただこの建物は山奥にありますので近くの村まで歩けるのなら。それにこの山には野生動物がいますよ。」


どうしてそんな冷たい態度がとれるの!


「もういいわよ!」


部屋に戻ってベッドで泣いていても誰も様子をみにきてくれない。

鐘が鳴ったので食事だと思い、食堂に行ってもドアが閉められていてはいれない。

立ち尽くしていると、ドアが開いたけれど誰も私をみない。

アリアが出てきたので


「どうして私の面倒をみないの?!」


詰ったら


「義務を果たさない者に権利はありません。」


冷たく返されたのでつかみ掛かったら  


「やめてください。」


と周囲にいた神官に寄ってたかって止められた。その間にアリアは行ってしまい、周囲にいた神官もいなくなってしまった。


「お腹がすいているのよ!どうして誰も私の話をきかないの!何で助けてくれないのよ!」


叫んでも誰もこない。

部屋に戻っても何もない。

仕方なくお腹がすいてベッドにはいる。寒い。

廊下にでても真っ暗で何も見えない。


朝になっても昨日と同じ。食堂のドアが閉まっていて、出てきた神官に話しかけても無視される。誰かにつかみ掛かっても引き剥がされる。


どうしてこんな扱いをされなきゃいけないの?エリス・ユリエールは『ヒロイン』なのに・・・。

おかしい。おかしい。おかしい。

絶対に間違っている。

こんなの私がしたかった生活じゃない。

手紙が書きたくても何もない。誰も助けを呼べない。誰も助けてくれない。

お腹がすいても誰も何もしてくれない。

私はゲームの通りの行動をしただけ。あるべき運命になるように行動しただけ。

廊下にへたりこみ誰か助けてくれないか、私は悪くない。

お腹がすいて叫ぶ元気もなく私はそこにずっといた・・・。

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