カイン王子の目標。
モアレに旅立つ日、セシリアも見送りにきてくれた。
エリスの本音を聞いてから、セシリアをいかに私が蔑ろにしていたか思い知った。
政略結婚とはいえ、公衆の面前で冤罪をかけた私と結婚し王太子妃として尽くしてくれていたセシリア。
セシリアと婚約破棄をしていたら私は王太子になれなかっただろう。
エリスを側室にし、セシリアを正妃にするというのもセシリアが望んだからといっても絶対にしてはいけないことだった。
あの頃の私はエリスが側室教育を頑張って受けていると思い込んでいたが、本音ではランスロット帝国の皇太子妃になるための準備だった。私に人をみる目がなかった。
セシリアを落としいれようとした人間を側室にしようとしたあの頃の自分が情けない。
セシリアは私に愛情はなかったと思うが、自分のためだったと言っていたが私の王太子妃として随分公務では助けてくれた。
これからはセシリアはいない。
モアレでは、ユーリとランガの三人でやり直そうと話し合った。
本当はセシリアも来てくれたらと思っていたが、それも父と母に叱られるまで思い上がりだと気づけなかった。
私は今まで庇護してくれていた存在がなくなり、本当に恵まれていた立場を思い知った。
住居は王家が遣わした人間が視察に来た時に使っていた場所が整えられ、住民を雇われていた。
私はモアレの地に着き数日間は視察と、今までのこの地についての詳細な報告書を読んでいた。
セシリアはモアレに行ったらこの地のことをよく知るように、この地に住んでいる人々の話をよく聞くように私に言っていた。そしてこのモアレに住む人々のことを理解し、自分の考えだけで突き進まないようにと注意してくれた。
私とユーリで書類仕事をしているとランガが入室してきた。
「国王様から知らせが届いた。」
そう言い王家の封蝋のされた封筒を渡してきた。
その中には、母からの私のことを思いやってくれている言葉を書いた手紙と、父からのエリスが『神殿預かり』になったと知らせる手紙が入っていた。
私は、エリスは私がモアレに着いたらすぐにでも処刑されると思っていた。
父たちの私に対する慈悲から、エリスは私がいる間はレオンの父である教皇様が立場を教え諭すが、いなくなったらどうなるのかと正直怖かった。
私を勘違いさせヴァンディミオン殿下に <ジュエル・オブ・インペリアル> を欲しがったのはエリスだが、セシリアの忠告を聞かずに私自身も詳しく調べずにイストール国をランスロット帝国に攻め込ませる口実を作ってしまったのは事実だ。
ヴァンディミオン殿下がなかったことにしてくれたからと言ってこの過ちを消すことはできない。
エリスに騙されたという言い訳がつくことではなかったし、私だけ生きて同罪のエリスが処刑されると考えると気が重かった。
エリスに騙されていたと言いきり自分の罪をなかったことにできるほど私の心は強くなかった。
詳しい事情は書いていなかったが、この先エリスは神殿で自分のしたことをよく考え、神に祈る生活をするとのことだった。
神殿の場所もわからないが、私もエリスと同罪なのだから神に祈る生活の代わりにこのモアレの地を頑張って繁栄させ、父や母そして私の代わりに王太子になるであろう弟への贖罪の気持ちで生きて行こうと思った。
最初に会ったセシリアは、人形のように銀の髪と光の加減で紫のようにみえる瞳が綺麗でおとなしい女の子だと思った。教育を熱心に学び結果をだすその姿に劣等感を感じていた。だがこれからはセシリアを見習い私もこの地を豊かにすることが自分のためになると思い努力しよう。
セシリアはきっとランスロット帝国の皇太子妃となり、いずれ賢妃と呼ばれるようになるだろう。
その時に私も恥ずかしくないように、いつかセシリアを助けることができるように。
それが今の私の目標だ・・・。




