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悪役令嬢は賢妃を目指す  作者: りのみ
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悪役令嬢の盗み聞き。

メルディナはランスロット帝国の歴史や王宮での暮らし方を教えてくれている。


ランスロット帝国の王宮は、皇帝が政務や外国使節の謁見、国家的な儀式などを行う貴族の出入りが自由な宮殿と、皇帝の家族の住む私が後宮がある。他にもヴァンディミオン殿下の住んでいる皇太子宮があり、私がもし嫁いだら皇太子宮に住むことになると教わった。


ランスロット帝国の歴史は恐ろしかった。

戦争をして勝った時に敗戦国の姫が輿入れしたという話がごろごろあり、皇帝の寵愛を得るために側室の暗殺合戦がひどく、死亡者が多発している時代があった。

側室が皇后の座を狙って処刑されたり、自分の子を皇帝にしたさに皇后の子供の暗殺を企てて露見したりとヴァンディミオン殿下が側室はいらないと言っているのが理解できるような気がした。


ある日カイン殿下が離宮にやってきた。

エリスと話をしたらしい。


「私はとても考えが甘かった・・・。」


と、椅子に座り出した紅茶に手もつけずに頭を抱え込んでいた。

最後にエリスの考えを聞きたかったらしいが自分の甘さを突きつけられただけらしい。

相変わらず自分の主張しかせずに、カイン殿下や他の方々のことも考えず反省の色もなく喚かれただけだったようだ。カイン殿下を一人の人間としてみていないエリスを一度でも信じ、裏切られてもどこかで何か期待があったと言っていた。


私はカイン殿下の話を聞き、教皇様と話しているエリスが今もなぜそんなに自分の幸せを信じられるのか不思議に思い聞いてみることにした。


私が直接出向くとエリスは多分話にならないだろうから、教皇様とのお話中のドアを少し開けておいてもらいそのそばで聞いていた。


「エリス・ユリエール、卒業パーティーでのセシリア侯爵令嬢に対し冤罪をかけようとしたこと。それについて今も自分が悪くないと思っているのかね?」


「イベントなんだから仕方ないじゃない。」


「そのイベントとやらのためにセシリア侯爵令嬢に偽りの罪をかけようとしたことに対し反省はないのかね?」


「何度も同じことを言わせないで。悪役令嬢はヒロインを苛めて最後に断罪される必要があったから私はそのイベントを起こしただけよ。」


「だがセシリア侯爵令嬢は何もしていなかったのではないのかね?」


「だってイベントを起こさないと婚約破棄にならないじゃない。」


「婚約破棄になった後のセシリア侯爵令嬢については何も考えなかったのかね?」


「修道院に行くんでしょう。」


「何の罪もない侯爵令嬢が修道院に送られるという意味がわかっているのかね?」


「そういう運命なんだもの。」


「では、カイン殿下の王太子の地位の剥奪についてはどう考えているのかね?」


「それはちょっとは私が悪かったかもしれないわ。でもここでは王太子妃になれないし、ヴァンディミオンに近づくためなんだから仕方のなかったことなの。」


「 <ジュエル・オブ・インペリアル> の価値を知っていてカイン殿下に勘違いの手紙を送らせたことについての考えは?」


「私の立場では直接ヴァンディミオンに手紙なんて出せないもの。それに <ジュエル・オブ・インペリアル> はヒロインがヴァンディミオンにもらうはずなんだから私は悪くないわ。」


「カイン殿下の立場でヴァンディミオン殿下に <ジュエル・オブ・インペリアル> を欲しがることで戦争になるということについては考えなかったのかね?」


「何度もそれについては説明されたけど、そこまでは考えなかったのよ。だってヒロインはもらっていたもの。」


「ではエリス・ユリエール、今日の会話で自分の思ったことを教えて欲しい。」


「私は悪くないわ。いえ、少し悪いことをしたと思ったけど、セシリアが転生者だったことでシナリオが変わって私だって大変だったわ。ヒロインが幸せになるためのゲームだから私だって頑張ったのに。セシリアが私のポジションを盗ったのよ・・・。カインの王太子妃になったと思ったら今度はヴァンディミオンの皇太子妃ですって?」


「自分の非は認めないのかね?」


「どうしてランスロット帝国の皇太子妃にセシリアがなるの?私はどうなるの?」


「エリス・ユリエール。罪を犯した者はその罪にあった罰を受けなければならない。自分の犯した罪には向き合わなければならないのだよ。」


「私は悪くない。ヒロインがして悪いことなんてないわ。ヒロインは幸せに暮らすの。私がしたことはセシリアが悪役令嬢の自分の役目をしなかったのがいけないんだし、カインだって私を幸せにしてくれなかったのが悪いの。自分が幸せにできないならヴァンディミオンに私のことをお願いくらいしてもいいと思うの。戦争になるなんて私は知らなかった。だから私は悪くない。カインをわざと勘違いさせたのはちょっと悪いと思ってるけど仕方のないことだったの。」


教皇様が穏やかに聞いているからか、エリスも喚かずに一応会話は成り立っている。


「それより、セシリアがカインとの婚姻を無効にしてヴァンディミオンに求婚されているのは本当?」


「・・・カイン殿下との婚姻は無効となるが、ヴァンディミオン殿下に関しては当人たちの気持ち次第だ。」


「どうしてセシリアは私の邪魔をするの?どうして私がヒロインなのに幸せになれないの?おかしいでしょ!どうしてカインの王太子妃という立場でヴァンディミオンに求婚されるの?!どうして誰も何も言わないの?!カインに対して立派な裏切り行為じゃない!ヒロインがランスロット帝国の皇太子妃になるはずなのに、どうして悪役令嬢のセシリアがランスロット帝国の皇太子に求婚されるの?!おかしいじゃない?!」


喚きだした。椅子に固定されているから椅子をがたがたと揺らし、教皇様に対して歯をむき出しにして真っ赤になって吼えている。私が顔を出さなくて良かった。きっと最初から会話が成り立たなかっただろう。

自分が悪いことをしたとは思ってもそれはシナリオ上仕方がないと言い切る。自分を幸せにしてくれない周囲が悪いと思い込んでしまっている。カイン殿下の王太子妃になれなかったから、ヴァンディミオン殿下の皇太子妃と地位に納まれると思っていたが私が邪魔をしたと考えてしまっている。


多少カイン殿下が気にするだろうから、エリスが改心すればいいと思っていたがここまで『ヒロイン』を信じてしまっていては無理だろう。

カイン殿下には心残りを少なくしてモアレに行っていただきたかったが。


私は少し残念な気持ちでその場を立ち去った。

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