悪役令嬢はこれからを考える。
大きな物音に驚きエリスの方向をみると椅子ごと立ち上がり喚いていた。騎士団長が止めようとしているが椅子が邪魔でうかつに近寄れない。
王妃様方は距離をとり驚いた顔でエリスをみている。
私はあのまんま突進してきたらどうしよう?と思いみていたら宰相に国王様とともに促されて部屋の隅に避難させられた。
騎士団長が奮闘しこちらに来ようとするエリスを押し返している。
エリスは立ち上がり暴れるが、椅子を振り切ろうしても縛り付けられているためにできず反対に椅子に振り回されている。
そのうちに誰かが呼んだのか、応援の騎士が来て椅子ごとエリスを押さえつける。
無理やり数人がかりで椅子に座らされてそれでもエリスは髪を振り乱し、私に食ってかかってきた。
「あんたが何か言ったんでしょ?!じゃなきゃどうして私が拒否されるの?!ヒロインなのに?!邪魔ばっかりして!性悪っ!あんたが私の居場所を奪ったんじゃない!絶対許さないんだから!」
あれだけ言われても『私はこのゲームのヒロインだ!』という思考から抜け出せず、悪いのは私だと思っている。
カイン殿下を廃嫡に追い込み、国を攻め込まれるようなことをしたのも彼女にとっては自分の幸せのために仕方のないことだったと言い切るのだろう。
もしかすると自分を幸せにしてくれないカイン殿下が悪いと言い出すかもしれない。
もう何も言う気にはなれない。
国王様も諦めた顔をして宰相に教皇様を呼ぶように言っている。
王妃様は蒼白な顔色で能面のような表情をし、側室方は呆れ返った顔をしている。
エリスはそのまま縛り付けられた状態で椅子ごと放置され、私たち全員で部屋をでた。手も縛り付けられているのでドアは開けられず部屋からは出られないだろう。そもそも普通の状態であの体制から立ち上がることすら難しいと思う。
離宮に戻り少し休みこれからのことを考える。
カイン殿下は毒杯は免れたが廃嫡。命は助かったのだから良いとしよう。
そして私はどうしよう。
仕事がしたくて賢妃を目指してきた。愛人がいても側室がいても必要とされていれば仕事をして生きていけると思って努力してきたのに。
カイン殿下が廃嫡となった後は、第二王子が成長してから王太子になるだろう。その間に私は婚約者の教育に携わらせてもらおうかと思ったが、私の能力は側室方には到底及ばない。実家に戻されるのだろうか?まさか修道院に送られてしまうだろうか?
理想はこのまま離宮に住まわせてもらい孤児院や貧民街の管理、教会の視察を任せてくれるといいのだけど、離宮は後宮の敷地内だから無理だろう。どこかに屋敷を買って住まわせてくれるよう国王様にお願いしてみようか?
色々考えているうちに夜会の準備の時間になってしまった。
今夜の夜会の準備も侍女任せにしてしまった。欠席したいが無理だろう。
王妃様方はもっと大変な思いをしても夜会に出るだろうから、私も頑張らなければ。
カイン殿下にエスコートされて会場にはいる。少し顔色が悪いが何かを吹っ切った顔をしている。
そういえばカイン殿下ともお話をしなければと思い夜会の後お時間をいただけるか聞いてみる。
「カイン殿下。お話をしたいのですが、夜会の後お時間をいただけますか?」
少し目を見張ってから
「大丈夫だが、離宮に行ってもいいのだろうか?」
頷き、その後はダンスをして社交をして過ごした。
離宮に戻り、これからのこと。カイン殿下に私も謝らなければいけないこと。エリスのことを含めて説明もしなくてはいけないと考えていた。
カイン殿下の訪れを知らされ向き合って私から説明させてもらった。
転生者であること。
幼少の時に覚醒したことで、カイン王子がゲームの通りになってしまったらどうしようと思い自身でも気づかないうちにないがしろにして教育の方に専念してしまい劣等感を抱かせてしまったこと。
ゲームをしていたのでエリスの行動によって自分が修道院送りになるのでそれを阻止するために動いたこと。
全てを話し謝った。
「カイン殿下には信じてもらえないと思い説明しませんでした。申し訳ありません。」
カイン殿下は少し驚いていたが
「いや。多分説明されていたとしても変わらなかったと思う。エリスが嘘をついていたのを知っても側室にしたいと望んだのは自分自身だし、学園ではセシリアに注意されてもわずらわしいとしか思えなかった。ネックレスも相談したら良いと言われたのに、エリスの言うがままにしてしまった。どこかで説明されていたら今度はセシリアの言うことをそのまま聞いて自分で考えることはしなくなっていたと思う。」
少し自嘲気味に話された。
「王太子の地位は剥奪は決定事項だと言われている。弟が跡を継げるまで父と母と側室たちで何とかやっていってくれるだろう。ヴァンディミオン殿下は地位の剥奪だけでいいと言ってくれたから、多分私は病によって王太子の地位を剥奪したことにでもしてどこかの領地に行かされるかと思う。このまま城には住めないだろうからね。」
そう言い私をみつめてきた。
「セシリアはどうする?」
「まだ何も国王様に言われていません。」
と正直に答えると
「どこかの領地に行くことになったら一緒に来てくれるか?」
と言われた。
一緒に領地を運営しようということだろうか?
カイン殿下が地位を剥奪されたら、使える人材も少ないだろう。
今のカイン殿下なら私の意思を尊重してくれそうだし、元々が優秀な方だったからその領地の運営を二人でしたら最初は難しくても将来的にとても繁栄させることができそうだ。
でも、国王様に何も言われていないのに私が勝手にこれからを決めることはできない。
「国王様伺ってみましょう。」
そう答えておいた。




