悪役令嬢は城にて達観する。
玉座の間にはもう要職の方々が待っていた。 国王様、王妃様、宰相様、騎士団長様、教皇様。それぞれエリス・ユリエールの取り巻きの方々の父親達が苦々しい顔もしてこちらを見ている。
私は淑女の礼をとり皆様方に挨拶をした。
「お忙しい中大変申し訳ありません。卒業パーティーの場をこれ以上混乱させることのないよう配慮した結果皆様をお呼びすることになってしまいました。」
国王様は頷き宰相様に話しを促す。
「今回、セシリア嬢が婚約破棄される理由としてエリス・ユリエール男爵令嬢に対する行動が王子妃に相応しくないとのことですが、どのような行動か明確に伺いたい。また公衆の面前で侯爵令嬢に対して集団で攻め立てたのだから納得のいく証拠を提出するように。」
宰相様が王子達に言うと、口々にエリス・ユリエールのされていたことを訴えるが全てエリスが言っていたというだけで証拠を出せと言われても誰も何も出せない。
「エリス・ユリエール男爵令嬢が言っていたというだけで証拠は何もないのですね。こちらでは、あなた方の行動は監視していました。婚約者のいる男性が一人の女性を取り巻き相手をないがしろにしているとのことだったので、他の令嬢方のお話も聞いています。お茶会で身分が低いことを笑われたとのことですが、誰のお茶会でしたか?誰もエリス嬢を誘った方はいません。夜会でワインをかけられたとのことですが、そのような場合大騒ぎになります。そもそも誰のエスコートで行ったのですか?セシリア嬢に持ち物を壊されたとのことですが、常にセシリア嬢はあなた方の婚約者達と行動してはやまった行動をしないよう諌めていた立場です。しかも誰も目撃者はいないようですが。」
エリスは宰相様の監視していたとの言葉に真っ青になりその場にへたりこみ、ぶつぶつとおかしい。なぜ。と呟いている。
騎士団長様もご子息ランガ様を睨みながら、
「息子がエリス嬢に剣を捧げるというに対して文句を言われたというが当たり前だ。この国の騎士が剣を捧げるのは国王陛下のみ。」
教皇様もご子息レオン様を静かにみながら、
「神の祝福をエリス嬢にといったことに対して神の祝福は個人に次期教皇として与えるなどいかがなものか?といったセシリア嬢は何か間違っているのかね?まだ次期教皇などきまってはいない。」
最後に宰相様がユーリ様に対して冷ややかに、
「被害者とされるエリス嬢の言い分だけを信じ何も自分で確認もしない。あなたは何を持って侯爵令嬢に対して断罪できるのですか?」
ご子息達が自分に言われたことに対して青くなる。跡継ぎに相応しくないといわれたも同然だからだろうか。
国王様がため息をつき、
「公衆の面前での婚約破棄。どう責任をとるつもりだ、カイン?冤罪で侯爵令嬢を断罪しようとしていたそなた達もどのようにこれから先を生きていくつもりだ?」
いつも穏やかな顔をしている王妃様共々カイン王子達を見回す。
王妃様はエリスに対して能面のような顔で、
「王子妃としての身分が欲しかったのですか?残念ですが男爵令嬢としての身分で王子妃にはなれません。セシリアが十年以上かけて学んだこと以上のものをあなたは持っているのですか?みたところ、男性に囲まれるしかできないようですが。私が次期王子妃にと教育したセシリア以上のものがあなたにあるとはおもえませんが。」
王妃様には本当に可愛がってもらった。国王様にも誉めていただいたこともある。幼い頃はカイン王子と並んでお話させてもらったこともある。カイン王子も改心してくれると思っていたが、
「セシリアについては誤解があったのは認めます。ですがエリスと結婚したい気持ちは変わりません。」
青ざめた顔できっぱりカイン王子は言い切った。そのとたんエリスが笑顔でカイン王子に抱きつく。
「カイン王子、私を選んでくれるんですね。」
「もちろんだ。エリス。」
空気が凍るとはこういうことを言うんだろうな・・・。と私は一人達観した。