悪役令嬢の疲れるヒロインとの会話。
国王様は訳がわからないながら私が何らかの事情を知っていると思ったのか私に任せてくれるらしい。
「っていうか、あんた転生者でしょ!?」
エリスが詰問してきた。
「前世があるのは否定しませんが、この世界のことはよく知りませんよ?」
「はぁ?じゃあ何で学園でのイベントが起きなかったのよ?!」
「イベントとは?」
「あんたに嫌がらせされてヒロインがキャラに慰められて、あんたが卒業パーティーで断罪されるはずだったのよ!ゲームを知らないなら何で何もしてこなかったのよ?!」
「普通の常識ある人間なら、他者に対して嫌がらせなどしませんが・・・。」
「カインの婚約者だったでしょ?!何とも思わなかったわけ?!」
「身分的に王太子妃になることができないあなたに私の地位は脅かされることはありませんから別に。そもそもこの国の貴族の女性は高位であればあるほど夫に側室ができる可能性があることを教育されていますから・・・。」
この国の常識をまったく知らなかったらしい。前世の常識に当てはめていたというべきか・・・。
ここまでで随分とエリスの非常識さがわかった。彼女が側室教育を前向きに受けてきたのも嘘だったんだろう。
王妃様方が信じられないものをみる目でエリスをみている。
カイン殿下の顔は絶望に染まり、エリスをみつめている。
国王様と宰相はそろって頭を抱えてしまっている。
彼女は目的があって側室教育を受けてきた。カイン殿下にお願いを聞いてもらうために従順になったふりをしてきたのだろう。予想はついたが一応聞いてみる。
「では、改めて聞きます。なぜ今回カイン殿下にヴァンディミオン殿下のネックレスを欲しいとお願いしたのですか?」
「あんたが王太子妃な以上私はこの国で幸せになれないじゃない!だから幸せにしてくれなかったちょうどよく手紙を送りあってるカインに責任とってもらおうと思っただけよ!」
どうも彼女の知っているゲームではヒロインがジュエル・オブ・インペリアルをもらえるらしい。ただ、知り合う機会がなかったからカイン殿下が交友していることを知り勘違いさせて手紙を書かせたようだ。彼女は皆が自分の幸せのために動くのが当然と思っている。
国王様に
「聞いての通り彼女はカイン殿下をヴァンディミオン殿下との接点を作るために利用したようです。状況を報告するべきでしょう。謝罪は当然ですがあちらから何か要求があるかもしれません。その時はまた話し合う必要がありますが、今回の状況の報告が先かと思います。」
と、提案をすると私から報告するように言われた。王太子妃として話を聞きたいと言ってしまったから仕方ない。
まだ喚いているエリスは自室に監禁状態とすることにして、騎士が拘束して連れて行った。
それぞれが部屋に戻ることとしたが、足のおぼつかないカイン殿下は騎士団長が、王妃様は他の側室方が支えながら連れて行った。
対応を間違えれば攻め込まれるということを念頭にどうにかそれは回避したい。
部屋に戻り手紙をしたため朝になったら届けるよう侍女に頼んでおく。
返ってきた手紙には驚くことにエリスに会いたいという言葉が書かれていた。




