悪役令嬢は質問する。
ヴァンディミオン殿下が退出した後急いで数人の側室方を呼び出し後宮の広間に集合した。基本的に男子禁制だが緊急事態だから仕方がない。
まずカイン殿下に詳しい話を聞いた。 <后妃のネックレス> の存在は知っていても正式名称であるジュエル・オブ・インペリアルという名前であるとは知らなかったこと。これはある意味仕方がないかもしれない。外交は主に王妃様方が分担しているし、内政について学んだ後他の国について詳しく学ぶ時期にエリスと出会ってしまっていた。
でも秘宝なので正式名称は教えられていなかったというのは今回は言い訳にもならない。
手紙についても、友人として交友を深めるためとのことだったので誰もそんなことをするとは思っていなかった。
どうもエリスがうまく言いくるめたという感じがするが、カイン殿下が王太子である以上国としても責任をとらなければならない。
騎士団長はすぐに数人の部下に国境付近の探索を命じて確認をさせているが多分はったりではないだろう。ランスロット帝国とこちらの国の軍事力の違いから攻め込まれたらなすすべもない。
国王様は
「事情はだいたいわかった。カインの王太子としての地位の剥奪も考慮しよう。攻め込まれないためにこちらの誠意をみせなければなるまい・・・。まずは状況の説明を明日ヴァンディミオン殿下に伝えよう。いかようにもしてくれとも言えないがカイン、お前はどんなことがあってもいいように覚悟は決めておけ。}
この国のためにカイン殿下を切り捨てる決断をなさった。皆沈黙しているが私も何も言えない。
「あの女をつれてこい。」
騎士団長に一言指示をだし、カイン殿下の顔色が真っ青になっているのを何も言わずみつめている。
エリスがなぜか嬉しそうに入室してきた。
国王様が
「カインに聞いたが、ヴァンディミオン殿下のネックレスを欲しがったそうだな?」
静かに問いただす。
「はい。カイン殿下にお願いしました。あの・・・ヴァンディミオン殿下はどこにいらっしゃるんですか?」
心底不思議そうに首をかしげる。
それをみていた王妃様がおもわず、
「あのネックレスの価値を知っていたのですか?!あなたのせいでカインは破滅です!この国も今後の対応策によってはどうなるかわかりません!私はあなたを許しません!修道院だなんて生ぬるい!」
ヒステリックにエリスに叫んでしまう。
叫ばれたエリスは最初ポカンとしていたがどんどん顔色が変わってきて
「どうして!?何でヒロインの私が責められるの!この世界は私のためにある世界なんだから、セシリアがこの国の私の居場所を盗ったんだから私が自分のいるべき場所に行こうとしてどこが悪いのよ!?」
訳のわからないことを叫びだした。この世界は私のための世界なんだから私が幸せになれて当然なのにセシリアがいるせいで王太子妃になれないから帝国の皇太子妃になろうとしたこと。そのためにカイン殿下にわざと勘違いをさせたこと。自分がヴァンディミオン殿下に会えば絶対にジュエル・オブ・インペリアルをもらえること。意味不明な言葉もあったが部屋にいる皆がエリスの考えを理解した。
このゲームを知っている私は、きっとゲーム通りにいくとエリスが考えていただけで今回の事の重大性がわかっていないのだろう思い聞いてみた。
「ヴァンディミオン殿下とお知り合いだったのですか?」
「ヒロインなんだから知ってるわよ!」
「いえ、そうではなく留学中にお互いを認識することがあったのですか?」
一方的に知っているだけじゃないのか確認した。
「帝国の秘宝を、他国の王太子が欲しがったのです。そのことの重大性を理解していますか?」
「そんなこと知らないわよ!ゲームでは攻略すればもらえたもの!」
本当にこの世界を現実としてみていないエリスに私はどのように話をするべきか考える。
国王様や王妃様方にはこの会話は理解できないし、そもそも王妃様は倒れそうになりながら側室の方たちに囲まれている。
私が話すのが一番早いだろうと思い国王様に目線で許可を求める。




