悪役令嬢の思考ループ。
ダリア様にうかがったところ、ランストット帝国では今は皇太子となっているヴァンディミオン様が以前から見聞をひろげるという理由で諸国に短期留学し、人脈を築いて輸出入がとても多くなったとのことだった。
「カイン殿下の言っているのは、ビジュー・オブ・インペリアルという輝石と半輝石を組み合わせて最近売り出している装飾品のことでしょう。宝石の組み合わせで値段の幅がとても広いんですよ。例えばルビーの周囲をぐるりと囲む形でピンクトルマリンを配置して花の形にしたり、サファイヤとトパーズを組み合わせたり。そうすると価格が抑えられるでしょう?注文されるだけでなく、完成しているものをいくつか家に呼ばれると持っていくという売り方もなさっているとか。もちろん高位の貴族によってはダイヤモンドを惜しげもなく使い注文もしているようですが、今帝国の流行だそうですよ。」
なるほど。予算に合わせられるということか。ドレスや髪や瞳の色で宝飾品をあわせる場合とてもお金がかかるが流行だったら、少し価格を抑えても対面が傷つかない。
ヴァンディミオン様とは留学してきていた頃に図書室で数回お話をしたことがあった。学園の図書室にはその国の貴重な資料があるとおっしゃって、授業以外はよく本を読んでいた。
私もエリスが学園に通うようになってから、周囲がわずらわしく一人の時間があれば司書の方もいるし図書室に通っている時に偶然出会ってお話したがとても探究心の深い方だった。
帝国は長い歴史があり、誰が皇太子か決まっていないが自分の立場がどうなっても自分のしたいことを最大限に生かしたいと言っていた。
今それを実行しているのだろう。
私は、適材適所といっても側室方が優秀すぎてほとんどの比重が偏っている気がする。孤児院、貧民街が改善されているのは嬉しいし、国民には <次代も安泰だ。> <次の賢妃様だ。> といわれているらしいが私一人の力ではない。
私は仕事をするために王妃になろうと思い、ゲームのエンディングでいわれていた賢妃を目指してきたが本当に私のしたかったことなのだろうか?
最近教会が病院のようになっている。孤児院の子供が弟子入りしている数人の医者に患者の家に行くだけでなくどこか建物を建てたら常駐してくれるかと聞いたところ、教皇様が聞きつけて教会の部屋を開放し、シスターや奉仕活動をなさっている方が協力してくれている。
(私は提案しているだけではないのか。)
ヴァンディミオン様との会話が思い出され、自分の在り方を考えてしまう。
カイン殿下の謝罪も思い出し、私はどこかでゲームにとらわれ過ぎカイン殿下自身をみていなかったのではないかなど思考のループにはまってしまっていた。




