悪役令嬢の後悔。
ある日私は側室のカサンドラ様のお部屋にお邪魔していた。
カサンドラ様は藍色の髪と瞳をした、たおやかな女性である。第二王子の母でありながら偉ぶることなく後宮で暮らしている。と言うのも彼女は権威や権勢に興味がない。元は子爵令嬢でありお父様は芸術品が好きすぎて博物館の館長になってしまうような方でカサンドラ様自体も幼い時から芸術に触れていたからか芸術家気質な方である。作品は多岐に渡り熱狂的なファンもいる。王妃様が彼女の素晴らしい才能に触れて後宮に誘った方である。
私はそんな彼女にあるお願いをしにきていた。
そう装飾品のデザインである。
カサンドラ様もお茶会で素晴らしいと誉めていらっしゃったので、もしかしたら興味をもってくれるかもしれないと思い、この国の鉱山でとれる宝石の質があまり良くなく放置されている物をいくつか持ち拙いながら作りたい物の絵を描き持ってきてみた。
加工は専門の方に頼むようになるがカサンドラ様にも助言していただこうと考えたのである。
カサンドラ様に説明をし、この国でとれる宝石のリストをみせると
「少し考えさせていただいていいかしら?」
とおっしゃい部屋に篭もってしまわれた。
後日部屋に呼ばれ行ってみると、いくつか作品ができていた。
私の渡した宝石以外にも、他の側室の方の実家のツテで宝石を入手し、実家の職人に頼んで加工しやすいようにビーズ状にし髪飾り、ブローチ、耳飾りを作ってくださっていた。
「セシリア様の言った庶民にも手の届く小物で、簡単に加工しやすいよう穴を開けて組み合わせるというのを私なりにやってみたのですがいかがですか?」
ビーズ状にしてもらい、柔らかい細い針金で組み合わせればある程度の形の自由がきくので素人にも作りやすいと思ったためだ。
「素晴らしいです。私の描いたものでこんなに素晴らしい装飾品ができるなんて。」
うっとりとしながら私が言うと
「穴を開けるのは実家の職人に頼みましたが、私が気を遣ったのは色や宝石の組み合わせ方だけです。随分簡単な作業でした。何か考えがおありですか?」
カサンドラ様に問われたので私は思わず、まだぼんやりとしただけの計画を語ってしまった。
この国は決まった職業をもって生活している人が多数だが、残念ながら貧民街もあり、そこに住んでいる人達は仕事をしてもたいした金額にならず食べるか食べないかの生活をしている。まったく仕事のない人もいる。私はそんな人達に前世での内職のようなことをしてもらったらどうかと思ったのだ。作業所を作り、集団で作業するようになるだろうがまだ流通の確保も何もできていない。
作品に目を奪われていた私は自分の夢の計画をカサンドラ様に支離滅裂に話してしまった。
「私の作品のいくつかを、私の作品を欲しがっている方々に差し上げましょう。夜会等人の集まる所につけて行ってもらい評判をみて、アイラ様達に相談したらいかがでしょう?私は作品を作ることしかできませんが、彼女たちならセシリア様のしたいことに協力してくれると思いますよ。」
《適材適所!!》
私はその四文字熟語が頭に浮かんだ。
私一人でできることなどたかがしれているのだから、側室のその道に詳しい方々に相談してみよう。わからないことを相談するのではなく最初から相談してしまえばよかった。
彼女達は前世でいうところのプロなのだから私が計画を練るより、彼女達に相談しながらのほうが夢の実現には早かった・・・。と後悔した。




