悪役令嬢は考える
王立イストール学園。ゲームの舞台である学園のカフェテラスで私はため息をつく。最高学年になりゲームが開始されてからどんどん攻略者たちがヒロインであるエリス・ユリエール男爵令嬢の逆ハーレムと化しているのだ。
この国の要職についている方々の子息、そして私の婚約者であるカイン王子。
カイン王子が攻略されてすぐに私は両親に報告をした。もう国王夫妻にも話がいっている。
私はゲーム通りの行動はしていないので、悪役令嬢にはならない。立場としてエリスに注意を何度かしただけだ。でも油断はできない。幼少期から過ごす時間の多かったカインの目が最近冷たくなってきている。定期的に通っていた城に行っても王妃様としかお話していない。孤児院の視察も最近は一人で行くようになった。
攻略対象者の婚約者達とお茶会を開き、皆の愚痴を聞き言動を諌めるしか私にはできない。政略結婚と言っても自分の婚約者が一人の女を取り巻いているのは面白くないのだろう。ただはやまった行動をされると、私が断罪される可能性がある。攻略対象者が身分が高いのでその婚約者達の身分も高い。私がリーダー格のようなものなので、女生徒の中のトップの私が一番しっかりしなければならない。私の資質が問われてしまう。
婚約者達とお茶会をしながら、数日後に控えた卒業パーティーについて私は考える・・・。
カイン王子が攻略されてしまった今、私が断罪される可能性は高い。エリスを良く思っている生徒はいない。彼女は高位の男性に囲まれる自分を周囲に見せびらかし、注意をされればいじめられたと泣いて攻略者達に縋る。また攻略者達もそれを信じ慰める。皆がもう傍観している状態だ。ただ彼女はまるで知っていたかのように彼らを攻略していった。もしかしたら彼女も同じ転生者なのかもしれない。ならばゲーム通りにイベントを起こすかもしれない。私はその時のために自分がどう動くか考えなければならない。
貴族の娘が身分を無くし修道院にも入らず何ができるだろう。できることなど何もない。王子に婚約破棄されたということで雇ってくれる所もないだろう。私は自分の身の上を決めなければならない・・・。




