悪役令嬢は一歩進む。
資料作成が終わり、王妃様と直接お話ができ教育の大事さを理解していただけた。
孤児院で世話ができるのは子供の間だけ。大人になったら自分で生きてかなければならないし、孤児院にいた子供が貧しさから子供を捨てる事実や望まぬ妊娠により子供を捨てる事実があること。そのようなことをなくすため下地を作り、能力のある子供にはそれ以上の教育を、それ以外の子供達にも自分に合った仕事を見つけて欲しいことを私は王妃様に熱く語った。
身分の差はどうしようもない。でも能力のある人間を伸ばさないのはとてももったいない。
王妃様はわかってくださり、私に孤児院のことは任せてくださると許可もいただけた。ただ報告をすることと、奨学金のような制度を作ることに関しては経済について私にも王子妃教育をしてくださった側室のアイラ様と相談したらどうか提案し話を通してくださる約束をした。
アイラ様はあまり派手な方ではないが、茶色の髪に瞳の知的美人であり経済的なことにはとても詳しい。もともとは経済について今の国王様に教えていた教師の娘であり、ご本人は結婚する気がなく勉学に励んでいたのを父親に薦められ国王様からもその知識で自分を支えて欲しいと乞われて側室になった方だ。
アイラ様自身は経済に詳しいが、市井を知らなければ経済は滞る!とおっしゃい、たまに王都にてお忍びで見学しどのような職業があるか、どこの国から何を輸入しているか、貴族の領地の特産品・噂話をとてもよく知っている。少し変わった方だが側室としてとても優秀な方だと思う。
後日私はアイラ様に呼ばれ各孤児院の資料全てを持ち部屋へ向かった。
「アイラ様、このたびは私の我侭にお付き合いをさせてしまって申し訳ありません。」
ご挨拶をするとアイラ様は
「セシリア様のすること、私とても興味あります。王妃様からお話を伺って私にお手伝いできることだと思いお受けすることにしました。ぜひ資料を見せてくださいな。」
テーブルに各孤児院ごとに置いた子供達の特徴を書いた書類、寄付の額や収支の書類、教師役の方々の書類を黙々と読んでいく。先に資料だけ渡しておいたほうが良かっただろうか。お茶を飲みながら様子をみていた。
少ししてアイラ様が顔を上げ、
「より優秀な子供を学園に入学させるにあたって、後見人はお考えですか?」
「引き受けてくださる方を探そうと思っています。」
私が答えるとまた資料に目を落とし
「教育をしている方に数人推薦させ、全員で会議するのはどうかしら?」
「職人に弟子入りする子供も親代わりとして誰か一緒に挨拶に行った方がいいですね。どうしても孤児は立場が弱いですから。」
「女の子達には刺繍の上手な子がいるんですね。何かできることはあるかしら?」
「男の子は計算の得意な子は、大きなお店の手伝いからかしら?」
一人で考え込んでしまった。私はアイラ様の侍女に退室することを告げ部屋に戻ることにした。
アイラ様が興味を持ってくださった以上、何らかの良い提案はいただけるだろう。私だけでなく側室のアイラ様のお名前があれば、後見人にも困らない。寄付金の使い道も適切に考えてくれるだろう。
部屋に戻った私はアイラ様が協力してくれることを教育してくださっている方々に教えるため、王家の紋章のついた便箋にお手紙を書いた。