悪役令嬢の離宮にて。
立太式のパーティーでは、私とカイン殿下に対して少し探るような視線を向ける者達がいたが、特に問題はないだろう。
離宮にてくつろいでいる私に侍女がカイン殿下の訪れを知らせてきた。
私はサロンにてお待ちいただくよう指示を出し、鏡の前で一度自分を見直した。
何のお話だろう?
少しお疲れなのだろうか?遠い目をしているカイン殿下に声をかける。
「お待たせいたしました、カイン殿下。本日はおめでとうございます。私に御用とはいったい何でしょう?」
テーブルの対面に座り窺うと少し下を向かれた。
思い切ったように私を見つめるが、なかなか用件を言おうとしない。
首を傾げながら私が何かしたのか考えてみるが、特に思い出す用件はない。
黙って座っているとカイン殿下が
「私は間違えていたのだと思う。」
と言い出した。何のことかわからず目を合わせると
「私はセシリアが自分より優れているのを認めたくなかったのだと思う。だからエリスの言うことだけを信じたかった。セシリアにも非はあると思い込みたかった。自分が努力をしてもそれ以上の結果をだすセシリアに対して不満だった。私に対して甘い言葉だけをかけてくれるエリスが私に相応しいと思ってしまった。
私は愚かだった。セシリアのことを信じず、婚約破棄を言い出して悪かった。一度謝りたかったんだ。」
思いつめた表情で言われた。
「その言葉を嬉しく思います。カイン殿下、わかってくださればいいのです。でもいったいなぜそう思われたのですか?」
冤罪が晴れてもエリスと結婚すると言っていたカイン殿下だったのにいったい何があったのか聞いてみた。
王妃様からひどいとは聞いていたが、それ以上にエリスはひどかった・・・。