カイン王子の考え。
私は正妃の子として生まれ、恵まれた環境で育ってきたと思う。
幼少の時から父の国王と母の王妃の姿をみて育ち、いつのころからか自分も父のような臣下に慕われ立派に国を治める国王となり、母のような美しく聡明で優しい正妃を娶るのだと思っていた。
父は側室が数人いて、母を頂点とする後宮で小さな諍いはあっても皆仲が良かったと思う。
だから私の婚約者のセシリアにエリスが嫌がらせをされていると訴えられた時、とても嫌悪した。自分の隣に立つ資格はないと思った。
初めて会った日から少し大人びているセシリアが少し苦手だった。
自分よりよっぽど国のことを考えていて、私が遊びたいと思っていても勉強をしている姿をみると落ち込んだ。
自分より難しい本を読み、母とお茶をしている時にその本の感想を話しているのが負けた気がした。
そんな私の負の感情がいつの間にか積もっていたのだと思う。だから嫌がらせをしているセシリアは自分より劣っていると思え少し嬉しかった。
でも全然違った。
それでもあの日、城でエリスの嘘がわかってもエリスなら自分を癒してくれる。少しの誤解だったんだと必死に思い込もうとした。頼ってくるエリスが可愛かった。嬉しかった。
エリスを正妃にできなくても、エリスなら私を支えてくれると思っていた。
でもエリスは会いに行っても、
「王妃様や側室方に嫌味ばかり言われる。」 「カイン王子は私を選んでくれたんではないのですか?」 「何で王子妃になれないの?」 「こんなはずじゃなかった。」 「教育がつらい」
泣き言ばかり私に言う。
セシリアならこんなこと言わないと思ったら、なぜかセシリアに話を聞いてほしくなった。
立太式でセシリアと並んでいたら、セシリアの動作が自然に自分の隣に相応しいと思って話を聞いてもらいたいと思い離宮へ行ってもいいか聞いてみた。