悪役令嬢は思い出す。
立太式でのカイン王子はとても立派だった。
さすがゲームのキャラだけあって金髪碧眼の美男子が王冠を被りマントを翻す姿は絵になる。
かくいう私も銀髪に近い金髪で光の加減により紫に見えるグレーの瞳のきつめの美人である。さすが悪役令嬢。
二人並んで国内外の貴族や王族の方々に挨拶をしていたが、時間が経つにつれカイン殿下が少しため息をつくようになってきた。
「お疲れですか?」
さりげなく私より背の高いカイン殿下の顔を窺い聞いてみる。
「セシリア・・・。後で二人きりで話をしたいのだが、離宮に行ってもかまわないだろうか?」
王妃様方が離宮に来る際に使うサロンがあるからかまわないのだが、今まで一度も訪ねて来た事もなく、執務室や公なお茶会や夜会でしか話ことのなかったカイン殿下の言葉にびっくりしている私に
「話をしたいだけなのだが、駄目だろうか?」
少し眉毛を下げて問うてくる。この顔は小さい時から困ったときにする顔だった。
エリスが現れる以前は、この人と支えあって生きていこうと思ったぐらいの人なので少し躊躇してしまう。
「侍女を一人控えさせていただいてかまわないでしょうか?」
夜に二人きりというのはマズい。少し悩んだようだが、
「わかった。では夜に。」
今更私に何の話かと思ったが、(今は仕事中!)と気持ちを切り替えた。